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59-1 マッドはビッグバン煽り師です

(水沫視点)


 辞表を出して来たにも関わらず、前職場の上司(其の2)に脅された俺。

 何故か、シモンと隣同士の席にされていた。


「「チッ……!」」


 どちらとも無く、鏡合わせのような舌打ち。


「なぁ……」

「あ?」

「……やっぱお前にゃ用は無ェわ」

「ガチで喧嘩所望かテメェ……?」


 集中しなくちゃなんねぇ時に、何で無駄なイラつきイベントを発生させにゃならんのだボケナスが。

 脳内で椅子を振り回して暴れていると、横から軽薄な声を耳が拾う。


「そういう作戦か?」

「お互い苛つかせて点数下げようって低俗だなぁ〜、そういう奴って両方━━」


「「うるせェよ落ちろ」」


 シモンは元から、俺は初雷領で鍛えられた殺気を乗せて、試験日における禁句を言い放った。

 息が合ってしまったのがマジ腹立つ。


「……何だよウッザ」

「これくらい受け流せよ」


 横の奴らは通り過ぎて行き、俺達よりずっと後方の席に座った。


 試験自体は簡単だった。見直しも5回はしたが、時間が後10分余るくらいに。

 最後の論文が怠かったが、二次にいけない物は書いてない。


 試験管の禿げ頭がずっと宙を見てぼーっとしているように見えるけど、あのジジイ、多分俺がこっち来た時受けた入試の試験官と一緒のキメラだな。

 カンニングしてる奴いたら瞬時に背後に回って丸呑みにするんだよ。超怖い。


 ウィーン


 ……へ? と、目が点になったのは多分俺だけじゃ無いだろう。

 隣で俺のように時間を余らせたシモンも「は?」って漏らしてるから。


 誤作動か? 試験中に前の黒板が動いてスクリーンになるなんて普通はあり得無ェよな?


 頬杖を突いて呑気に構えていた俺は、その直後、スクリーンに映ったモノを見て、固まった。


『如何も大天才の私とは月と鼈、雲泥の差というのも烏滸がましい有象無象の塵芥諸君』


 何故だろう……挨拶でいきなり喧嘩を売られた。

 いや、そんなのは別に良い。

 問題は、スクリーンに映る黒髪の(ガワだけ)儚げな男が、呼吸するように厄災を振り撒くマッドサイエンティストだという事だ!


 知らない連中は「何だ何だ?」と、好奇心に満ちた初々しい反応をしているが、アレの正体を知る俺達は絶望する。


『私の名はアルジエル・ネレイド。【大賢者】等と、ダニの如き小っぽけ脳の諸君が呼ぶ者だ』


 マグロが泳ぎ続けなきゃ死ぬように、アイツは一々他人を見下さなきゃ死ぬんか?


 今年、終わったわ……。

 何考えてんだ錬金術師協会!? 頭にウジでも湧いてんのか畜生が!! アレだけは死んでも試験に関わらせちゃ駄目だろ!!


 俺の脳裏を過ぎったのは、留学生時代の臨海学校。

 レクリエーションだと言って、奴はまず男子全員の水着を服だけ溶かす謎の薬で剥いだ。

 絶対許サナイ。と、その場にいた全員の心はその時一つだった。

 そして返して欲しくば海に出る増えすぎた常世生物を絶滅させて来いとか行った。

 馬鹿ナノ?? と、その場にいた全員で壮絶な顔をした。

 どんな生物かというと、蟹だった訳だが、……急所を隠さず普通の蟹より凶悪な鋏を持つアレと戦えと? 奴カラ殺スベキデハ? が、その時の全員の心の声だ。

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