58-2 大賢者です
水沫君が試験を受けている間、私は暇を持て余している。
本当は乃杏せんせに、錬金術の事でも聞こうかなって思ってたんだけどね。
乃杏せんせと同じ賢者級だという錬金術師が、何故か乃杏せんせに喧嘩を売り、今試験会場横にある小さなアリーナでバチバチやり合っているのである。
大技っぽいのがくる時派手に光るので、目が潰れないようにと貸してもらったサングラスを掛け、上の観覧席で買ってもらったジュースを飲んで見ていたんだけど……正直、つまんない。
私、自分が体動かす訳じゃ無いならこう言うの見ても面白く無い。学ぶ事があるかとも思ったけど……あの人達霊力も武器も使わないのだ。
錬金術と爆薬とステゴロ。
ステゴロはともかく、錬金術は「れ」の字も知らないし、爆薬使うなら普通に神通力使う。
これが身内の戦いなら「がんばれー!」って応援するけど、乃杏せんせは身内っていうにはちょっと…………胡散臭いところがあって、まだそう認定出来ない。
下の当人達は何か喋りあってる。
楽しそうで何よりだよ。
……水沫君まだかな〜。
試験て1時間じゃないの? 90分? えー……まだ半分も時間残ってる。
……どうしよ?
さっきから悪意は感じないけど、ジロジロ見てる子がいる事だし……捕まえに行っちゃう?
「やれやれ……、騒がしいと思えば」
不意に聞こえた声に振り向いた。
視線とは別の方向からだ。
え……え!
見覚えのあるシルエットだった為、思わずサングラスをずらす。
やっぱりだ。
歳は20代半〜後半くらい。
目に少しだけかかる程度の前髪に対して、緩やかに腰あたりまで波打つ黒の後ろ髪。
銀河の渦のような光が浮かぶ、鉛色の瞳。
極め付けには、白銀にも見える綺麗な翼の腕。翼に合わせたアオザイみたいな衣装。
雌しか生まれないはずの種族の中、雄として生まれた希少種中の希少種キャラにして、読者にとっての原作の良心。
【大賢者】アルジエル・ネレイド━━通称、アル博士だ!
儚げ激かわショタに続いて……、
超儚げ美人キタ━━(゜∀゜)━━!!!!
「『2番目の脅威』に『聖職者の遺児』か。珍しい組み合わせだな」
自然に、一人分開けて私の横に座るアル博士。
独り言かな? 一切目を合わせないから、気付かれて無いっぽいよね、これ?
「それで、マドモワゼルは此処でお留守番かな?」
鋭く乃杏せんせ達を見ていた表情とは打って変わった。ふわりと、破茶滅茶に優し気な笑みを向けられたのだ。ていうか……ま……まどもわぜる……だと?
私の事だよね? 初めて言われたよ。
こんな儚げ美人の微笑み受けながらそんなこと言われたら鼻血出……ないな。あれ? なんで?
……嗚呼分かった。兄ちゃんだわ。博士の本性を知ってるからキャラ被りはしてないって知ってるけど、兄ちゃんのふんわりセクシーキャラも見方によっては儚気、否もうちょっと威力強いから免疫出来てたみたい。
有難う兄ちゃん。
「ん! おるすばん。そろそろ飽きてきたとこよ」
「そうか、素直だね……飴は好きかな?」
「おいしい?」
「勿論美味し……」
ジー
「もち……ろん……」
ジー
「も……参りました」
カンカンカーン!! と、私の中で勝利の鐘が鳴った。
幼女のくりくりな純粋お目目って、こういう時に便利。
そう、この男……誰かに渡す飲食物には、必ず何か盛ってるか練ってるかしてるヤベェ奴だ。
でもそんなのは正直まだ序の口。だって知ってれば回避出来るからね。
「なんてマドモワゼルだ。まさか唾液に触れると爆発するスパイス入りの飴だと気付いていたとは」
いや、何入ってるかまでは知りませんでした。
本当に原作知識有って良かった。
幼児に何渡そうとしてんだ。
「勘の良いマドモワゼル、一つ頼みが有るんだが良いだろうか?」
「アメをなめなかっただけで、名前もしらないヨージョにたのみごととは??」
宇宙猫がニャーンと頭上で鳴く声を聞きながら冷静に突っ込むと、博士が「これは失敬」と頭を下げる。
「私はアルジエル・ネレイド。以後お見知り置きを」
「よろしくおねがいします。七です」
この男に本名をそのまま言った場合、きっと特殊個体の天狗だとバレるので、呼ばれ慣れてる渾名を口にした。
「ではマドモワゼル、知り合いになったところで本題に入ろうじゃ無いか」
どんな頼み事をされるのかは不明だが、この絶対に断らせないと言わんばかりの圧と台詞は何なんだろう?
「魔法少女を製造するマスコットプレイに興味は無いかね?」
ご……ごくりんこ ←固唾飲んだ
何だそのパワーワードは!?




