表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/76

5-2 来客です

 御前試合から約1ヶ月経った。

 原作で嫌われ者ムーブかましてたけど、あの子、普通に大切にされとるやん! と思って、もう此処2週間ほど綺麗に忘れていたのだが、今日になっていきなりあの子の死ぬシーンが夢に出て来た。

 鬱になりそう。


「はぁ……」

「姫様、お勉強はもう宜しいのでは?」

「ふつー、もっとシュウチュウしなさい、って言うとこでは?」

「サボり気味の方には言いますが、朝の7時からご飯も食べず、ぶっ続けで自主勉強を始めてもう15時ですよ?」

「きょうは、そんな日」


 これでも一応良いとこのお嬢様だ。

 英才教育というものを受けている。

 家庭教師の先生が居ない日は課題をするのがルーティーン。しかし、外に出る元気が朝の夢で無くなった為、課題以外の問題集にも手を出していた。

 いや、『元気が無くなった』は少し語弊があるな。

 朝の夢を見て、不安になったが正しい。

 不安な時は絶対に外に出たくないけれど、何もしないともっと不安になる。

 よって私はそういう気分の時は勉強している。

 変な事考えずに済むから。


「では、このお菓子は私一人で頂きますね」

「んー、わかっ……まって、食べる!」


 麦穂の手には、盆に乗った綺麗な和菓子……では無く、某チョコ菓子が山盛りにされた大皿があった。

 ふぅー! キノコとタケノコが混在してるぅ! (しゅ)き! 麦穂ってば私の事よく分かってる!


「あら、雲が嫌な色になって来ましたね」


 もちゃもちゃお菓子を堪能していると、外を見た麦穂が呟いていた。

 確かに黒っぽい。今日はお出かけしなくて正解だったね。


「……姫様、お召し物を整えましょうか」

「え? なんで?」


 出かける気ゼロよ?


「こういう日は、招かれざる客が訪れると相場が決まっています」

「……なるほど?」


 パジャマは駄目? ……あ、はい着替えます。


 黄色いパジャマから、白のフード付きワンピースに着替えた。

 常世は全体的に景観が和風だし、我が家は寺と旅館と城が合体したの? というくらい大きな日本邸(※敷地内に山も川もある)だが、私の普段着は現世の都会に居ても浮かない物が多い。

 だって楽なんだもん。


 ま、外にはやっぱり出ないんだけどね。


「すっごい雨……あと風」


 薄いガラス窓がガタガタ揺れている。

 妖術使いの一流職人が、強化と風避けの術式を刻んでいるので割れる事も無いし、何なら窓を開けても雨が吹き込んで来ないチート設計なのだが、不安は拭えない。


 このガタガタ音が元からの仕様なのか、それとも術では完全に抑えきれない程酷い天候なのか、それを知る者はこの家に居ない。


「七や、梅ジュースでも飲むか?」

「のむ!」


 梅シロップの瓶を持って居間に向かうジィジに着いて行く。

 家は敷地内にたくさん梅の木があるので、毎年皆で梅シロップや梅干し、甘露煮を作って、専用の部屋に保存しているのだ。


 シュワシュワで割るか、水で割るか……今日はどっちにしよう?


 そんな風に、持ち手付きのガラス瓶の中で、時折跳ねるように動く梅を見つめて悩んでいた時だった。


「お館様! 姫様! 大変です!」


 うわぁ……、何か来た。


 使用人の一人に着いて行くと、玄関には一人の護衛の男性と、柊恩寺簪の姿があった。

 ずぶ濡れで、泥と血により、至るところが汚れた姿で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ