ラウンド2:「リスクとの向き合い方」
ラウンド開始・最大の危機体験
あすか:(クロノスを操作し、背景に嵐の海、砂漠、雲の中を飛ぶ飛行機、雪に覆われた山道の映像を流す)「それでは第2ラウンドです。今度のテーマは『リスクとの向き合い方』」
あすか:(少し表情を引き締めて)「冒険にはつきものの『危険』。皆さんも命に関わるような危機を何度も経験されたことでしょう」
あすか:「まずお聞きしたいのは、皆さんが最も恐怖を感じた瞬間、そしてそれをどう乗り越えたかです」(各人を見回しながら)「鄭和さん、2万8000人という大艦隊を率いていらした中で、最も危険だった経験を教えてください」
鄭和:(深く息を吸い、少し遠い目をして)「第3回航海での出来事です」(重々しく)「永楽9年、インド洋のコロマンデル沖で、我々は史上最悪の嵐に遭遇しました」
鄭和:(手を握りしめて)「波の高さは船のマストを超え、風は帆を引き裂き、雷は絶え間なく光っていました」(声が震える)「旗艦『宝船』でさえ、まるで木の葉のように波に翻弄された」
アメリア・イアハート:(身を乗り出して)「それは...想像を絶する規模ね」
鄭和:「最も恐ろしかったのは、旗艦の船底に亀裂が入り、浸水が始まったことです」(拳を握りしめて)「2万8000人の部下を前に、私は...正直、死を覚悟しました」
マルコ・ポーロ:(真剣な表情で)「その時、どうされたんですか?」
鄭和:(長い沈黙の後)「皇帝陛下から預かった使命を思い出したのです」(声に力を込めて)「『ここで諦めれば、陛下の威光に泥を塗ることになる。2万の命を預かる者として、最後まで責任を果たさねば』と」
鄭和:「私は甲板に立ち、全艦隊に号令をかけました」(立ち上がり、当時の様子を再現するように)「『我々は天子の軍である!嵐ごときに屈するな!』と」
伊能忠敬:(感嘆して)「素晴らしい...。その後はいかが?」
鄭和:「不思議なことに、私がそう叫んだ瞬間、部下たちの顔つきが変わりました」(座り直しながら)「絶望的だった表情に、再び闘志が宿った。全員で浸水箇所の修理にあたり、3日3晩かけて嵐を抜けました」
あすか:「責任感が恐怖に勝ったということですね」
鄭和:「いえ、恐怖はありました」(正直に)「しかし、それ以上に『多くの命を預かる者としての責任』が大きかった。個人の恐怖より、使命の重さが勝ったのです」
商人の現実的危機管理
あすか:「マルコさんはいかがですか?24年間の長い旅路で、最も危険だった体験は?」
マルコ・ポーロ:(苦笑いしながら)「鄭和さんの話を聞いた後では、随分とスケールが小さく感じるが...」(少し考えて)「一番危険だったのは、帰路のゴビ砂漠で道に迷った時かな」
アメリア・イアハート:「砂漠で道に迷うって、それはかなり危険じゃない?」
マルコ・ポーロ:「ああ、実際に死ぬかと思った」(表情が真剣になって)「水は底をつき、食料もわずか。しかも砂嵐で方角が全く分からなくなった」
マルコ・ポーロ:「3日目の夜、ついに父も叔父も『もうダメかもしれない』と弱音を吐いた」(遠い目をして)「その時、私は自分が24年間集めてきた全ての商品、胡椒も絹も香辛料も、全部砂の上にぶちまけたんだ」
鄭和:「なぜそのようなことを?」
マルコ・ポーロ:「遊牧民を呼び寄せるためさ」(にやりと笑って)「砂漠で香辛料の匂いがすれば、必ず誰かが興味を持って来る。案の定、半日後にモンゴルの遊牧民がやってきた」
マルコ・ポーロ:「私は残りの商品を全て彼らに渡して、オアシスまでの道案内を頼んだ」(胸を張って)「商品は失ったが、命があれば取り返せる。これが商人の鉄則だ」
アメリア・イアハート:「すごい判断力ね」(感心して)「でも、24年分の商品を失うなんて...悔しくなかった?」
マルコ・ポーロ:「もちろん悔しかったさ」(肩をすくめて)「でも考えてみろ。死んでしまえば商品も知識も全て無駄になる。生きていれば、また商売を始められるし、体験談という新しい『商品』も手に入る」
マルコ・ポーロ:(目を輝かせて)「実際、『東方見聞録』は失った商品の何倍もの価値を生んだ。結果的には最高の投資になったよ」
伊能忠敬:「マルコさんの現実的な判断力、見習いたいものです」
マルコ・ポーロ:「商人は常に『損切り』を考えなければならない」(指を立てて)「大きな損失を避けるために小さな損失を受け入れる。これができない商人は長生きできない」
空の女王の信念
あすか:「アメリアさんの場合はいかがですか?空の上での危険な体験を聞かせてください」
アメリア・イアハート:(少し表情を曇らせて)「1932年の大西洋横断単独飛行の時のことよ」(手を組んで)「ニューファンドランドを出発して5時間後、高度計が故障したの」
アメリア・イアハート:「しかもその時、濃い霧に包まれて地上も海も見えない状況」(不安そうに)「高度が分からないまま飛び続けるなんて、自殺行為よ」
鄭和:「それは確かに危険ですね。どう対処されたのですか?」
アメリア・イアハート:「最初はパニックになりそうだった」(正直に)「でも、その時私の頭に浮かんだのは『諦めるな』って声だったの」
マルコ・ポーロ:「誰の声ですか?」
アメリア・イアハート:「私自身の声よ」(強く)「『アメリア・イアハート、あなたはここで諦めるの?女性パイロットの先駆者として、こんなところで挫折するの?』って」
アメリア・イアハート:(立ち上がって)「私は機体の振動や音で高度を判断することにした。エンジン音が変われば空気密度が変わったということ。機体の挙動で風の流れを読む」
伊能忠敬:「素晴らしい判断力です」
アメリア・イアハート:「でも一番大きかったのは『絶対に着陸してみせる』って信じることだった」(拳を握って)「技術的な問題は何とかなる。でも心が折れたら、その時点で終わりよ」
アメリア・イアハート:「結局、14時間56分でアイルランドに着陸した時」(目を輝かせて)「地上の人々が『女性が一人で大西洋を渡った!』って驚いている声を聞いた瞬間、『やったー!』って叫んじゃった」
マルコ・ポーロ:「でも君、それって結構危険な賭けだったんじゃないか?」(心配そうに)「計器に頼らず感覚だけで飛ぶなんて...」
アメリア・イアハート:「危険よ、当然」(きっぱりと)「でも安全ばかり考えてたら、誰も大西洋を渡れない。『危険だからやめておこう』って言ってたら、女性はいつまでも地上に縛り付けられたまま」
鄭和:「しかし、無謀と勇気は違います」(慎重に)「適切な準備なしに危険に飛び込むのは...」
アメリア・イアハート:「準備はしたわよ!」(少しムッとして)「何ヶ月もかけて機体を点検し、航路を研究し、天候を調べた。でも最後は『やる』って決断するしかないの」
学者の地道な危機克服
あすか:「伊能先生の場合はいかがですか?測量という比較的安全そうな冒険でも、危険はあったのでしょうか?」
伊能忠敬:(謙遜しながら)「皆さまに比べれば些細なことですが...」(少し考えて)「71歳の時、北海道の厳冬期に測量した体験が最も厳しいものでした」
マルコ・ポーロ:「71歳で北海道の冬?それはすごい」
伊能忠敬:「文化4年の冬のことです」(ゆっくりと話し始める)「正確な測量には冬至の太陽位置が必要でした。しかし、その時期の北海道は記録的な寒波に見舞われていました」
伊能忠敬:「気温は氷点下30度、雪は腰まで積もり、しかも連日吹雪」(手をさすりながら)「3日目の朝、起きてみると足の感覚が全くありませんでした」
アメリア・イアハート:「それは凍傷の危険が...」
伊能忠敬:「はい。同行していた弟子たちは『もう測量は諦めましょう』と言いました」(苦笑いして)「71歳の老人には無理だと」
鄭和:「その時、どうお考えになったのですか?」
伊能忠敬:「不思議なことに、その時頭に浮かんだのは『ここで正確な測定をしなければ』という使命感でした」(目を閉じて)「江戸で私を送り出してくれた師匠の高橋先生の顔、全国の測量を待っている人々の顔が浮かんだのです」
伊能忠敬:「『間違った地図を残すわけにはいかない』」(静かに、しかし強く)「その思いで、足をさすりながら測量器具を担いで歩き続けました」
マルコ・ポーロ:「71歳でその精神力...脱帽だ」
伊能忠敬:「結局、5日かけて必要な測定を終えることができました」(ほっとした表情で)「足の感覚が戻った時の安堵感は忘れられません」
アメリア・イアハート:「先生の場合、恐怖よりも責任感が勝ったのね」
伊能忠敬:「恐怖はありました」(正直に)「でも、それ以上に『正確な仕事をしたい』という職人としての誇りがありました。『適当』な測量など、私には考えられませんでした」
リスク管理論の激突
あすか:「皆さんの体験談、それぞれ壮絶ですが、危機の乗り越え方が興味深いほど違いますね」(クロノスに整理して表示)「鄭和さんは『責任感』、マルコさんは『現実的判断』、アメリアさんは『信念』、伊能先生は『使命感』」
あすか:「では次の質問です。リスクに対してどのような準備をすべきだと思いますか?」
マルコ・ポーロ:「準備で一番大事なのは『逃げ道』を常に確保しておくことだ」(指を立てて)「リスクは計算できる。でも計算だけじゃダメ。いざという時の選択肢を複数用意しておく」
アメリア・イアハート:「逃げ道?」(眉をひそめて)「それって本当の冒険なの?最初から逃げることを考えてたら、思い切って挑戦できなくなるんじゃない?」
マルコ・ポーロ:「君みたいな考えだから、太平洋で...」(言いかけて止まる)
アメリア・イアハート:「何よ、それ!」(立ち上がって)「私が最後の飛行で行方不明になったことを言いたいの?」
マルコ・ポーロ:(慌てて)「いや、そういう意味じゃ...」
鄭和:(強い口調で立ち上がる)「マルコ殿!」(威厳ある声で)「亡くなった方を軽々しく論じるものではありません。イアハート殿の勇気は我々全員が尊敬すべきものです」
アメリア・イアハート:(鄭和に向かって)「ありがとう、将軍」(マルコに向き直って)「私だって無謀じゃないわよ。ちゃんと準備はしてた」
マルコ・ポーロ:(深く頭を下げて)「申し訳ない。君を批判するつもりはなかった」(顔を上げて)「ただ、心配になっただけなんだ」
アメリア・イアハート:「心配?」
マルコ・ポーロ:「君の情熱は素晴らしい。でも、その情熱があまりに純粋すぎて、時として危険を軽視してしまうんじゃないかと」(優しく)「商人の立場から言わせてもらえば、『保険』は必要だよ」
アメリア・イアハート:(少し表情を和らげて)「保険...確かにそれも大事かもしれないけど」(座り直しながら)「でも私は思うの。『安全』ばかり考えてたら、新しいことは何もできない」
鄭和:(仲裁するように)「お二人の考えは、どちらも正しい面があります」(座りながら)「私の経験では、準備は徹底的にすべきです。しかし、最後は運を天に任せる覚悟も必要」
伊能忠敬:「鄭和さまのおっしゃる通りです」(うなずいて)「私の場合、測量では『準備』が全てでした。器具の点検、天候の確認、ルートの下調べ...これを怠れば正確な測定はできません」
伊能忠敬:「しかし」(少し笑みを浮かべて)「どんなに準備しても、予想外のことは起きるものです。その時は臨機応変に対処するしかない」
保守vs挑戦の価値観対立
あすか:「面白い議論になってきました」(身を乗り出して)「では、もう少し根本的な質問を。『安全な冒険』と『危険な冒険』、どちらがより価値があると思いますか?」
マルコ・ポーロ:「それは間違った質問だ」(首を振って)「冒険に『安全』も『危険』もない。あるのは『計算されたリスク』と『無謀なリスク』だけ」
アメリア・イアハート:「でも計算ばかりしてたら、誰も新しいことはできないわよ」(反論して)「私が初めて飛行機を見た時代、女性が空を飛ぶなんて『無謀』以外の何物でもなかった」
マルコ・ポーロ:「それは分かる。でも君は準備をしただろう?操縦を学び、機体を理解し、気象を勉強した」
アメリア・イアハート:「それはそうだけど...」
マルコ・ポーロ:「つまり『計算されたリスク』を取ったんだ。無謀ではない」(優しく)「君の勇気は素晴らしいが、それを支えたのは確実な技術と知識だった」
鄭和:「私は思うのですが」(慎重に)「冒険の価値は、その規模や危険度ではなく、その結果が社会に与える影響で測るべきではないでしょうか」
伊能忠敬:「鄭和さまのご意見に賛成です」(うなずいて)「私の測量は確かに地味で、命に関わるような危険は少なかった。しかし、正確な地図は多くの人の役に立った」
アメリア・イアハート:「でも...」(少し困惑して)「確実に成功することだけやってたら、人類は進歩しないんじゃない?」
マルコ・ポーロ:「進歩のためには確かにリスクが必要だ」(同意して)「でも、そのリスクは『合理的』でなければならない。失敗の確率と成功の価値を天秤にかけて判断する」
アメリア・イアハート:「合理的、合理的って」(少しイライラして)「世の中の素晴らしいことって、みんな最初は『非合理的』だったのよ。コロンブスがアメリカ大陸を発見したのだって、理論的には間違いだった」
鄭和:「確かにイアハート殿の言うことも一理あります」(考え込んで)「我々の大航海も、当時としては前例のない規模でした。『非合理的』と言われても仕方がない面があった」
伊能忠敬:「皆さま、この問題は難しいですね」(ゆっくりと)「私が思うに、『合理的なリスク』と『直感的なリスク』、どちらも必要なのではないでしょうか」
失敗の価値についての深い議論
あすか:「伊能先生の発言で、新しい視点が出てきました」(興味深そうに)「では、ここで根本的な質問を。『失敗した冒険』に価値はあると思いますか?」
アメリア・イアハート:(即座に)「もちろんよ!」(力強く)「私の最後の飛行だって、目標は達成できなかったけど、挑戦したこと自体に意味がある」
アメリア・イアハート:「それが次の世代の女性たちに『私たちだってできる』っていう勇気を与えるなら、失敗なんかじゃないわ」(目を輝かせて)
マルコ・ポーロ:「商売の世界では失敗は損失だ」(現実的に)「でも、その失敗から学んだ教訓で次の成功があれば、結果的には価値がある」
マルコ・ポーロ:「実際、私だって何度も商売で失敗している」(苦笑いして)「でも、そのたびに『なぜ失敗したか』を分析して、次に活かした。失敗は最高の教師だよ」
鄭和:「国家事業で失敗は許されません」(厳格に)「しかし、完全な成功を目指す過程で得られる知識や経験は、確実に国力の向上に繋がります」
鄭和:「第1回航海では多くの困難に直面しました」(振り返るように)「嵐、病気、政治的摩擦...しかし、それらの経験があったからこそ、後の航海がより成功したのです」
伊能忠敬:「私の測量では『失敗』という概念がありません」(穏やかに)「不正確な結果も、それを修正する過程で、より正確な答えに近づくための貴重なデータです」
伊能忠敬:「むしろ、一度も間違いを犯さない測量など信用できません」(微笑んで)「間違いを見つけ、修正し、確認する。この繰り返しこそが正確性への道なのです」
アメリア・イアハート:「そうよ!先生の言う通り」(嬉しそうに)「失敗を恐れて何もしないより、失敗から学んで前進する方がずっと価値がある」
マルコ・ポーロ:「ただし」(指を立てて)「同じ失敗を繰り返すのは愚かだ。失敗から学ばなければ、それは本当に『無駄な失敗』になってしまう」
リスクテイキングの年齢・性別論
あすか:「深い議論ですね」(感心して)「では、少し視点を変えて。リスクを取る能力に年齢や性別は関係あると思いますか?」
アメリア・イアハート:「絶対に関係ないわ!」(即座に立ち上がって)「私の時代、『女性には危険な冒険は無理』って散々言われた。でも私は証明したのよ、性別なんて関係ないって」
伊能忠敬:「私は50歳から冒険を始めました」(穏やかに)「むしろ年齢を重ねてからの方が、リスクを適切に評価できるようになったと思います」
マルコ・ポーロ:「面白い視点だ」(考え込んで)「私は17歳で旅に出たが、若さゆえの無謀さもあった。今思えば、もう少し慎重でも良かったかもしれない」
鄭和:「年齢については、経験の価値を認めます」(うなずいて)「しかし、性別については...」(少し言葉を選んで)「私の時代の常識では、女性の航海参加は考えられませんでした」
アメリア・イアハート:「それは偏見よ」(きっぱりと)「能力に性別は関係ない。必要なのは技術と勇気と判断力。それは男性も女性も同じ」
鄭和:「確かに、イアハート殿の功績を見れば、そのとおりかもしれません」(素直に認めて)「私の考えは狭かったようです」
伊能忠敬:「年齢についても、若さには若さの、年配には年配の利点があります」(バランス良く)「若い時は体力と情熱、年を取れば経験と慎重さ。どちらも冒険には必要です」
マルコ・ポーロ:「なるほど。つまり、リスクテイキングに最適な年齢や性別はなく、その人の状況と目的に応じて決まるということか」
ラウンド2クライマックス
あすか:「素晴らしい議論が続いていますが、第2ラウンドの最後に、もう一つ重要な質問を」(クロノスを操作し、深い表情で)「皆さんは、冒険で命を失うリスクについてどう考えますか?」
(スタジオに重い沈黙が流れる)
アメリア・イアハート:(長い沈黙の後、静かに)「それは...私が一番向き合わなければならない質問ね」(深く息を吸って)
アメリア・イアハート:「私は自分の最後の飛行がどうなったか知らないけれど」(少し悲しそうに)「もし本当に命を失ったとしても、後悔はないわ」
マルコ・ポーロ:(優しく)「なぜそう言えるんですか?」
アメリア・イアハート:「だって、空を飛ばなかった人生なんて、私には考えられない」(目を輝かせて)「危険だからといって夢を諦めて、安全な地上で一生を終えるなんて...それこそ本当の死よ」
鄭和:「重い言葉です」(深く考え込んで)「しかし、一人の命だけでなく、多くの命を預かる立場では...」
伊能忠敬:「皆さま、命の重さについて軽々しく語るべきではありませんが」(慎重に)「私は思うのです。『どう死ぬか』より『どう生きるか』の方が大切だと」
伊能忠敬:「私が71歳で厳寒の北海道を歩いたのも、命を軽視していたからではありません。『正確な地図を残したい』という強い願いがあったからです」
マルコ・ポーロ:「確かに」(うなずいて)「商人として言わせてもらえば、命は何よりも貴重な『資本』だ。でも、その資本を有効に使わなければ意味がない」
マルコ・ポーロ:「安全な場所に隠しておくだけの金貨に価値はない。投資してこそ、初めて価値を生む」(真剣に)「命も同じだ。リスクを恐れて何もしなければ、生きている意味がない」
鄭和:「マルコ殿の言葉、重く受け止めます」(立ち上がって)「私も2万8000人の命を預かりながら、危険な航海を続けました。それは命を軽視していたからではなく、その命に意味を与えたかったからです」
鄭和:「皇帝陛下の威光を世界に示し、平和と繁栄をもたらす。その大義のためなら、命を賭ける価値がある」(力強く)
アメリア・イアハート:「そうよ!」(立ち上がって)「みんな分かってくれたのね。命を大切にするっていうのは、安全に隠しておくことじゃない。その命で何を成し遂げるかよ」
伊能忠敬:「皆さまの言葉に深く感動いたします」(静かに)「命をかけるに値する何かを見つけることができた人は、きっと幸せな人生を送れるのでしょうね」
リスク哲学の統合
あすか:「今の議論で、皆さんのリスクに対する考え方が見えてきました」(感動した様子で)「命をかけるというのは、命を軽視することではなく、命に最大の価値を与えることなんですね」
マルコ・ポーロ:「そういうことだ」(満足そうに)「ただし、無駄死にしてはいけない。リスクを取るなら、それに見合うリターンを確実に得る戦略が必要だ」
アメリア・イアハート:「戦略も大事だけど、最後は信念よ」(拳を握って)「『これは価値がある』って心から信じられるかどうか」
鄭和:「お二人とも正しい」(深くうなずいて)「戦略と信念、そして何より『大義』。この三つが揃って初めて、命をかける価値のある冒険になる」
伊能忠敬:「そして、その冒険が多くの人のためになること」(付け加えるように)「個人的な満足だけでなく、社会的な意義があってこそ、真の価値が生まれるのではないでしょうか」
あすか:「素晴らしい結論です」(クロノスに四人の言葉をまとめて表示)「戦略、信念、大義、社会的意義...これらが揃った時、リスクは『冒険』になるということですね」
リスク管理の実践論
あすか:「では、具体的な話に移りましょう」(少し表情を変えて)「若い人たちが冒険を始める時、どんなアドバイスをしますか?」
マルコ・ポーロ:「まずは小さく始めることだ」(指を立てて)「いきなり大きなリスクを取る必要はない。近所の市場で小さな商売から始めて、だんだんスケールを大きくしていく」
アメリア・イアハート:「でも小さすぎると、本当の冒険にならないわよ」(反論して)「ある程度のリスクがないと、心が躍らない」
マルコ・ポーロ:「そこが問題なんだ」(苦笑いして)「君みたいに『心が躍る』ことばかり追求すると、いつか大きな失敗をする」
アメリア・イアハート:「失敗を恐れてたら何もできないって、さっき言ったじゃない」
鄭和:「お二人とも」(仲裁して)「段階的にリスクを増やしていくのは賢明ですが、その過程で『志』を失ってはいけません」
伊能忠敬:「私もそう思います」(うなずいて)「小さな一歩から始めても、最終的な目標は大きく持つべきです。私も最初は近所の測量から始めましたが、いつも『日本全国の正確な地図を』という夢を持ち続けていました」
マルコ・ポーロ:「なるほど、それは良いバランスだ」(感心して)「目標は大きく、手段は段階的に」
アメリア・イアハート:「でも、チャンスが来た時は思い切って飛び込む勇気も必要よ」(譲らずに)「私だって最初から大西洋横断を目指したわけじゃないけど、機会が来た時は迷わず『やる』って決めた」
世代論・現代への応用
あすか:「現代の若い人たちと皆さんの時代では、リスクの性質も変わっていると思います。現代ならではのアドバイスはありますか?」
マルコ・ポーロ:「現代は情報があふれているから、むしろリスクの計算がしやすいはずだ」(考えながら)「問題は、情報が多すぎて判断に迷うことかもしれない」
アメリア・イアハート:「情報があるのは良いことだけど、それに頼りすぎちゃダメよ」(警告するように)「最後は自分の心と向き合って決断する。データだけじゃ分からないことがたくさんある」
鄭和:「現代の若者は個人主義的すぎるのではないでしょうか」(少し心配そうに)「大きな冒険には仲間が必要です。一人でできることには限界がある」
伊能忠敬:「しかし、個人の自由も大切です」(バランス良く)「私の時代は『お上』の許可がなければ何もできませんでした。現代の若者は自由に挑戦できる。これは素晴らしいことです」
伊能忠敬:「ただし、その自由には責任が伴います」(真剣に)「自分の選択の結果を受け入れる覚悟と、周囲への配慮を忘れてはいけません」
マルコ・ポーロ:「確かに」(うなずいて)「現代は失敗してもやり直しがきく時代だから、むしろ積極的にリスクを取るべきだ。昔なら一度の失敗で人生が終わりだったが、今は違う」
アメリア・イアハート:「そうそう!」(嬉しそうに)「失敗を恐れすぎる必要はないのよ。特に若いうちは、どんどん挑戦すべき」
ラウンド2総括
あすか:「第2ラウンドも白熱した議論でした」(満足そうに)「皆さんのリスクとの向き合い方から、多くのことが見えてきましたね」
あすか:(クロノスで要点を整理しながら)「まず、皆さんとも最大の危機を『責任感』『使命感』『信念』で乗り越えてこられた。そして、リスク管理については『計算』と『直感』のバランスが重要だということ」
あすか:「さらに、『失敗した冒険』にも価値があり、それは次への学びになる。そして最も印象的だったのは、『命をかける』ということの真の意味です」
マルコ・ポーロ:「命を大切にするというのは、安全に保管することじゃない」(力強く)「それを有効に活用することだ」
アメリア・イアハート:「そして、心から価値があると信じられることに使うこと」(情熱的に)
鄭和:「大義と仲間があれば、どんな困難も乗り越えられます」(威厳をもって)
伊能忠敬:「そして、その結果が多くの人の役に立つこと」(穏やかに)「これが真の冒険の条件ですね」
あすか:「まさに四人四様でありながら、根底では共通している」(感動して)「命の価値を最大化するために、計算された勇気で未知に挑む。これがリスクとの正しい向き合い方なのかもしれません」
あすか:「さて、第1ラウンドで『動機の複層性』、第2ラウンドで『リスクとの向き合い方』を議論してきました」(期待に満ちた表情で)「次の第3ラウンドでは『時代と冒険の関係』について語っていただきます」
あすか:「皆さんは異なる時代の人ですが、現代の冒険についてどう思われるでしょうか?」(興味深そうに)「技術の進歩は冒険の本質を変えてしまったのか?それとも...?」
全員:(それぞれ考え深げにうなずく)
あすか:「それでは、少し休憩を挟んで、第3ラウンドに参りましょう!」
(第2ラウンド終了)