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7 イケメン店主の正体は

「きゃー、一空先生、素敵、かっこいー! イケメン!」

 叫びながら暎子は身体をくねくねさせ、テレビに映るイケメンに食いついている。

「う、嘘でしょう」

 紗紀も別の意味でテレビに食いつく。


 この人、この間の骨董店にいた、感じの悪い店主!


 きちっとスーツを着こなしていて、最初は別人かと思ったが、この整いすぎた顔は忘れない。

 いや、忘れようがないし、見間違えようもない。

「この人霊能者なの?」

 すると暎子は嬉しそうに説明をする。


「数々の難解な霊現象に挑む、名霊能者伊月一空先生よ。霊視もずば抜けていて、過去に行方不明だった人も霊視で探しあてたの。とにかく日本でも指折りの霊能者なんだから!」

「へえ……」

 昔、FBI超能力捜査官とか、似たような番組があったことを思い出す。


「時々こういう心霊特集番組に出演するんだけど、紗紀ってば知らないの?」

 まさか伊月一空を知らないなんておかしい、という目をする暎子に、紗紀はごくりと唾を飲み込んだ。

「知らないけど、知ってる」

 おかしなことを言うと、暎子は胡乱げに目を細める。


「なにそれ」

「だって、この人……」

 偶然立ち寄った骨董屋の性格の悪い店主、と言おうとしたが、やめた。

 面倒くさいことになりそうだと思ったから。

「この人が何?」

「え? うん……だってほら、霊能者っぽく見えないから。どちらかといえば、俳優みたいな顔をしてるかなって」

 性格は悪いが、顔はいいのは事実だ。

 すると、暎子はきゃーと悲鳴を上げ、自分の膝を何度も叩く。

「そのギャップがいいんじゃない。あたしも伊月先生にいろいろ視て欲しい~!」


 なにそれ。


 不意に、暎子はまるでいいことを思いついたかのように、スマホを手にする。


「そうだ。紗紀も伊月先生とまではいかないにしても、誰か霊能者に相談してみたらどう? やっぱ、悪霊を倒すにはその道のプロである霊能者に頼るほかないでしょ。目には目を悪霊には悪霊を。呪われたら呪い返せって」

「そうだね……」

 あまり乗り気ではない返事をし、紗紀はちびちびと缶ビールに口をつけながらテレビを観る。


 人気霊能者伊月一空が、若手お笑い芸人と、女性タレントとともに、真夜中にどこぞの山奥の廃村に行き、そこに巣くっている(らしい)怨霊を除霊するという内容であった。


 村に入った途端、お約束のごとくスタッフの一人が、浮遊霊に取り憑かれて突然具合が悪くなったり、若手芸人が突然奇声を発したり、撮影用のカメラが故障したりなど、数々のハプニングが起こり、その度に伊月一空は数珠を振りながら悪霊を祓うという盛りだくさんなシーンが映し出された。


 そしてラストは、線香に火をつけ、お経をあげながら悪霊たちを除霊するというものであった。

 暎子はスマホを手に調べ始めている。

「こういう人気のある人は絶対に予約がとれないけれど、それ以外の人だったらネットで探せばいくらでも見つけられるから。中には詐欺まがいの怪しい人もいるからそこは気をつけて。あ、この人なんてどう? 前世療法占い、

真利愛珠(ジュリアーナ)星綺(きらら)。よく当たるって」


 当たるって、占いじゃないんだから。

 暎子がスマホの写真を突き出してきた。

 そこに写されていた星綺という、ショータイムに出演しそうな派手な衣装にフェイスベールとジャラジャラしたアクセサリーを身につけた人物がいた。それこそ、とんでもなく怪しい人物ではないか。


「ありがとう。私も自分で探してみるよ」

 と、適当にかわして、紗紀は再びテレビの画面に向き直る。

 霊能者、伊月一空か。

 紗紀の目は、経をあげ続けている彼の姿から離れることはなかった。

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