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2 呪われた一空

 バイトを終え、駅前のスーパーで買い物をしてから家に帰ろうとしたところ、店の前にチャラ弁の車が横付けされた。

「紗紀ちゃん今帰り? 送って行くよ。乗って乗って!」

 車で送るもなにも、買い物に行きたいし、家は店から歩いてすぐなので丁重にお断りをする。

 それに、こんな町中で目立ちすぎる高級車で送ってもらうなど、近所の人に見られたら何て思われるか。


「けっこうです。歩いて帰れる距離ですから」

 そこへ通りかかった中学生がわっ、とこちらを注目して駆け寄ってくる。

「すっげー、あの車!」

「かっけー!」

 中学生たちは、持ち主は誰かと運転席を見て納得し、それから助手席側に立つ紗紀に視線をやり、何ともいえない表情を浮かべ去っていく。


「おい、見たか? 連れの女」

「見た見た」

「並の下だったな」

「ああ、たいしたことなかった。小ぶりだったし。どこがいいんだ?」


 あんたたち聞こえているわよ!

 並の下ってどういう意味よ。つまり最低ってこと? それに小ぶりって何!


 さらに、向こうからも学校帰りの中学生が歩いてくるのが見えた。

「すっごい、かっこいー!」

 彼らは目敏くチャラ弁の車を見つけ、駆け寄って来ようとする。

「ほら、乗ってよ」

 ニコニコ顔のチャラ弁を睨みつけ、半ばやけくそ気味に紗紀は車に乗る。

 こんな町中の狭い道路を走らされる高級車が気の毒だ。

 それはともかく、その時、チャラ弁は気になることを言ったのだ。


「いっくうが言ってたんだ。初めて紗紀ちゃんを見た時から気になっていたって」

「私のことを気になっていた?」


 それって?


「うん。紗紀ちゃんはね、いっくうにとって、必要で特別な存在なんだ」

「そ、そうかな?」

 思わず頬が赤くなる。


 一空さんが私を必要だなんて。

 そんなこと一言も言わないし、態度にも出さないのに。


「まさに、運命の相手だって」


 運命って、それはいくらなんでも大袈裟すぎるわよ。と、心の中で言いつつも、紗紀の顔はまんざらではない。


「僕もそうだと思ってる。そう、いっくうにかけられた呪いを解くのは、きっと紗紀ちゃんだと」

 紗紀の目が点になる。

「はい? 呪い?」


 ええと、話がまったく見えないのですが。


「実はさあ、いっくうは、長く生きられない体質なんだ。昔から短命で」

 昔から短命、という言葉に引っかかったが、それはきっとチャラ弁が言い間違いをしたのだろうと聞き流すことにした。

 それにしても、突然そんな重すぎる話を振られ、どう反応していいのか戸惑う。


「長く生きられないって、何か重い病気ですか? が、癌。それも末期とか」

「あはは!」


 え、そこ笑うところ!


「余命なんとかの霊能者だね」

 だが、短命だと聞かされても、本人、あまり具合悪そうには見えないし、苦しんでいる姿も見たことがない。

 それどころか、すこぶる元気そうだ。


 バイトで一日中、一空と一緒に店にいることもあるが、特に薬を飲んでいるところを見たこともない。

 いったい、どこが悪いのだろう。


「うん、まあ病気なら治療すれば治る可能性はあるかもしれないけれど、そうじゃない。科学では証明することのできない不可思議なもので」


 難病なのかな。

 いや、さっき呪いがどうのって言っていなかった。


「そう、さっきも言ったけど、いっくうは呪われている」

「の……」

 頭の中が真っ白になる。

 いろいろな意味で、言葉が出なかった。

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