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9 霊感体質な私の悩みを理解してくれる人

 ようやく、自分のことを分かってくれる人が現れた。

 視たくないものを視てしまうあの恐怖。

 今まで誰に相談しても理解してもらえず、親でさえ、どうすることもできなかった。


「でも、なぜ私が霊感体質だと分かったんですか?」

「この間、君が手に取った指輪を覚えているか?」

「赤い石の指輪ですよね。素敵だから欲しいなあって」

 紗紀は指輪を見つけた辺りの棚に視線をやる。が、一空の次の言葉に顔を強ばらせる。


「あの指輪は持ち主に不幸を呼び寄せる呪いの指輪だ」

「呪いって、まさか……」

「声が聞こえただろう。恐ろしい映像も視えた筈だ。声は指輪に込められた、元々の持ち主の恨み。そして、静森さんが見た映像は、その後、指輪を所有した者たちが指輪の呪いによって悲惨な末路をたどった姿。指輪には、特に女性の強い念がこもりやすい。こういった場所ではあまり手にしないのが無難だ。手にした途端、この間のように指輪に込められた強く深い思念で身体の不調をきたすことがある」

「えっと……」


 そんな指輪に惹かれ、手に取ってしまったとは恐ろしい。

 いや、そもそもそんな物を普通に店に並べている方がどうかしている。それも、持ち主が呪い殺されると知って売るとは、もはやそれは犯罪ではないか。

「霊感の強い静森さんは、あの指輪を手にし、その思念に影響を受け倒れた。霊感体質ならではだ。それよりも、また話がずれてたな。静森さんが強引に押しつけていったこの簪。簪を手にするようになってから不可思議なことが起こるようになった。そのことについてだが」


「待ってください。私、簪については何も言っていないと思うんですけど。女の霊のことも、どうして分かったんですか」

「ワケありのものだと思ったから、手放したかった」

「そうだけど。確かにそうだけど……」

「だから、僕に押しつけた」


「……すみません。じゃあ、女の霊のことは?」

「そうだな。それは最後に説明しよう。まずは、話を聞こうか」

 紗紀は簪を手放すことになった経緯を、一空に語ることとなった。

「なるほど。その女の霊は、静森さんに何かを伝えようとしているというわけか」


「いいえ、何かを言っているような気はするんだけど、姿が視えるだけで何を言っているかまでは、私には聞き取れなくて」

 相手が何を望んでいるのか理解できれば、解決方法も見つけやすいのに。


「その女の霊は現れるたび、恨みのこもった目で私を睨み、それどころか、私を呪い殺そうと……」

「呪い殺す?」

「私、あの女性の霊に殺されるかも。だって、家族が……家族に次々と不幸が起こるようになって、最後は私の番」

 一空はため息をつく。


「この簪のせいで、身辺に不幸が起きるようになったというのだな。かわいそうに」

「はい……本当に辛くて」

 紗紀は目に涙を浮かべた。


 悩んだけれど、伊月さんに相談してよかった。

 暎子も理解してくれたし相談にのってくれたけれど、彼女はただ単に心霊好きなだけで、悩みを解決してくれることはできない。


 嫌味で苦手な人だと思ったけれど、やはりここに来たことは間違っていなかった。

 目の前にいる伊月一空は、超有名な霊能者。


 助けてもらえる。

 これで、普通の日常を取り戻せる。

 次のアパートを探さずにすむ。

 が、次に出た一空の言葉に、紗紀は目が点になった。


「かわいそうと言ったのは、静森さんのことではない。勘違いするな」

「は?」

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