全方向ビリンダ
困っちゃうー。
今日は音楽の授業で、めずらしく起信子校長が
教壇に立ちます。そこにみんなが集められます。
「本日は特別に校長である私が授業を指揮します。
みなさん、お手元のVRゴーグルをご確認ください。
これを身に付けて、ライブを体験してもらいます。」
もちろん秘密子先生と理趣子先生は巻き込まれます。
トリオのバンド演奏を披露するミッションなのです。
「みなさん、準備はいいですか?今日は古き良き
伝説のオルタナバンドを体験してもらいますから。
私たち三人の教師がマイブラというバンドにいた
天使なギタリスト、ビリンダ・ブッチャー役です。
全員ビリンダ。名づけてビリンダ・ブッチャーズ!
新たな神話の始まりの予感。さあ、お聴きなさい!」
ここで理趣子先生が話にインタラプトしてきます。
「ちょっと説明を補足するね。私たちは三人で
ギターを持ってぽこじゃか演奏していくからね。
みんなはバーチャル財務省前に集合してもらって、
そこでのフリーライブっていう設定でいくからね。
別に政治的な意図はなんにもないよ。単に世間の
流行りに便乗してみただけ。それだけの茶番だよ。」
さらに秘密子先生も話にインタラプトしてきます。
「私たちはそうね、三人で三角の形で演奏するから。
シューゲイザーだから観客の方向は全く見ないけど。
みんなはそうね、体育座りから背中で左右に転がる。
コロコロした動きで見守ってくれたらそれでいいよ。」
陽明子「ちこうごういつ…!?」
生徒たちは、なるほどさっぱりわからん!という顔です。
無理もありません。秘密子にも理趣子にも謎でしたから。
「これがビリチャ待望のデビューシングル、『全方向ビリンダ』!
さあ、いきますわよ!私たちの演奏についてきてごらんなさい!」
起信子はノリノリで号令をかけました。リズム隊がいないので
まっしろしゅわしゅわノイズで、ライブ空間は満たされました。
やってみると秘密子も理趣子もけっこう楽しくなってきました。
生徒たちもコロコロ転がって、なんだか健康になっていきます。
「はい。今日はとってもいい時間でしたね。次回もお楽しみに!」
満足した校長はさっそうと立ち去っていきました。やれやれだぜ。
イメージソング。
ダズビー「全方向美少女」。
https://youtu.be/D0HHqfZSdVs?si=mV_aUblw8AglXmlg
前回のお話。
「暗黙知の巨人」。
https://ncode.syosetu.com/n7826kk/
次回のお話。
「プラグマティック・マキシマム」。
https://ncode.syosetu.com/n1870kl/