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続き。
(どうしてこうなったのやら...。)
「ねぇルサナ、どうするの?」
「どう...しようか。...一旦クフカは僕から離れないようにして。」
「わかった。」
クフカと呼ばれた少女はルサナと呼ばれた彼は眼鏡を掛けた優し気な白髪の青年で、高い身長と落ち着いた表情その立ち振る舞いから知性を感じさせる。また耳の先が尖っておりエルフであることが窺える。
クフカはそんなルサナににぴったりとくっつき、前方に広がった光景に目を向ける。
そこには足に光沢のある縄のようなものが巻き付き倒れている赤毛の女と、彼女を守るように前に立つスキンヘッドの男がいた。
男は焦りが見える表情で、しかししっかりと両手に斧を構え目の前に立つルサナとクフカを警戒している。
(おい!クウト、ツラ、どういうことだこれは!周囲の警戒はお前たちの担当だろ!がっつり侵入されてるじゃないか。黙ってないで何か言ったらどうだい?)
(いやいやルサナさぁん。ちゃんと罠で捕えてるじゃないですかー。)
(ソウダソウダー。)
「クウト、ツラ、目が泳いでる。」
(クフカ~?そんなことないぞ~?)
クフカはまるでなにもない空間にジト目を向けている。
そんな様子を不審に思ったのか、それともこの状態では何も進まないと思ったのか、スキンヘッドの男が警戒態勢を維持したままルサナに話しかける。
「俺はルエディってもんだ。ギルドの依頼でこの森での異音について調べに来た。すぐに攻撃してこないってことは敵対の意思はないんだろう?奥にあるのは君たちの家なのか?ここに住んでるのか?」
(これ一昨日のクウトのやつだよね。君のせいで大きな面倒事が生まれてるんだけど、どうしてくれるんだい?第一今すぐここを離れられないのに、ここまでの大ごとになるのはかなり問題だよ。)
「なぁ、聞こえてるんだろ?どうなんだ!」
ルサナからの返事がないことに不信感を募らせながら、ルエディは声を張りながらルサナにもう一度話しかける。
「すまない、こんな場所に人が来るとは思っていなくて困惑していてね。私はルサナ、この子はクフカという。君の言う通り敵意はないから武器は下ろしてもらって構わないよ。そこで倒れている彼女の縄も解こう。魔物用の罠が誤って作動したようだね。」
「本当か、ありがとう!」
(すぐに開放していいのか?情報引き出して脅してからのほうがいいんじゃないか?この場所のことを帰って報告されても困るだろ。何ならいっそここで殺してしまうか。)
(いや、彼らに危害を加えるのはまだ得策じゃない。彼らは依頼でここに来たと言っていた。殺しでもしたら不審に思ったギルドが増援をよこしてくるぞ。)
(なら、ここでどうにか誤魔化して帰ってもらうのが一番いいわね。何か仕掛けてきてもどうにかなるでしょうしね。)
ルサナが返答すると、ルエディは未だ警戒を解き構えていた斧を伏せた。仲間が助かると知ってか緊張で強張っていた顔に小さく笑みが浮かぶ。
その時、ルサナの後方、先程ルエディが家かと尋ねていた建物の付近で爆発音のような音が響く。
ルサナが警戒し、後方を確認するとそこには無精髭を生やした黒髪の男がゆっくりと手を挙げながら歩いてきた。
「申し訳ない!私はそこの二人の仲間だ。別の場所を調査していたらあの建物にたどり着いてね、私も罠か何かに引っかかってしまったようだ。」
「ヒデさん!」
ルエディがヒデと呼んだ男は、罠の影響か体から煙を出しながら苦笑いをしている。
ルサナは後方から現れたヒデを警戒しつつ、クフカを庇うように前に立ち声をかける。
「なるほど、彼らの仲間でしたか。この辺は魔物も多少いてね、罠が多いのは申し訳ない。」
(爆発物の罠なんて置いていたのか。というか、さすがに警戒を強めてくれないかい?前の2人だけでな
くもう1人いたなんて聞いてないよ。)
(......俺はそんなものは置いてないぞ。ツラか?)
(いや、私も知らないわ。というかあの男、突然後ろから現れなかった?一応あの男女が来たタイミングから警戒はしてたけど全く分からなかったわ。)
(確かに。俺も全く分からなかったな。......もしかしたらあいつは俺と同じかもしれない。)
(...了解した。彼のことを警戒しつつ、一旦家の中で話すことにしよう。)
「まずは、彼女の縄を解いて皆さんを家の中へ案内します。そこで話を伺いましょう。」
ルサナは警戒心を解くように微笑みつつそう言い、クフカと一緒にルエディと倒れている女に近づき縄を解く。
「おねえさん。なまえは?わたしはクフカ。」
ルサナが縄を解いている最中、クフカは女に話しかける。
「クフカちゃんね。あたしはケイ。見苦しいところ見せちゃってるようでごめんね。」
ケイと名乗った女はクフカを前に倒れている状況を恥じてか苦笑いをしている。
「よし、解けました。皆さんを家へ案内しましょう。」
ルサナがケイに絡んでいた縄を解きヒデ、ルエディ、ケイの三人を石造りの家へ案内し招き入れた。
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ルサナが客間のような椅子が並んだ部屋へ3人を通すと、お茶淹れてくると言い残しクフカと一緒に部屋を出ていった。
「おいルエディ、警戒を解くのが早すぎだ。相手が何を言おうと警戒はしたままにしておけ......この状況はどうにもならないが。」
「うっ、すんません。肝に銘じます。...でもヒデさんよく無事だったな。この家を見つけて先に調べに行ってくるって言ったからやばいと思ったけど。」
「それはこっちのセリフだ。俺が先に調べてくるから2人で待機しとけって言ったのに罠に掛かるなんて。...まぁ俺が1人で先行していったのもよくなかったかもな。悪かったな。」
「いや、あたしが人影を見つけてちょっと進んじゃったのがよくなかったよ。ごめん。」
ヒデが思いだすように空に目を向け反省していると、ケイがばつが悪そうに頭を下げた。
「まぁ、一旦皆無事だったしまずは良しとしよう。まだ問題は終わってないぞ。優しそうな人たちではあったが、明らかに異質だ。こんな森の中で家を建て暮らすなんて普通ではないぞ。あと、例の異音もこの家に関係があるかもしれない。」
ヒデはそういうと、苦虫をかみつぶしたような顔になり一言、
「この家の裏に地面が大きく抉れた場所があった。しかもかなり最近のものの様だ。」
これを聞いたケイとルエディの2人の緊張感は高まり、背筋に冷たい汗が流れた。
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客人に出すためのお茶を準備しながらルサナはクフカへと優しく問いかける。
「クフカ、体調は大丈夫かい?」
「だいじょうぶ。いまはげんき。ルサナもだいじょうぶ?」
「ならよかった。僕も問題ないよ。ただ、今からさっきの人たちと話すのが長くなりそうだから横になっててもいいよ。」
「...わかった。」
そういうとクフカは先ほどヒデ達を通した部屋とは別の部屋へと歩いて行った。
ルサナは微笑みながら見送り、クフカに問題がなかったことに安堵する。
(で、これからどうするのよ。彼らが言ってた異音ってクウトがクフカにやらせてた砲撃みたいなやつでしょ?)
(だろうね。効率は良かったけど、やっぱり音が大きすぎたようだね。それはそれとしてどう誤魔化すかだね。正直クフカとの相性の良いこの場所はまだ手放せない。原因が僕らにあると知られたら、向こうは少なくとも危険視するだろうね。)
(それについてなんだけど、あいつらの反応を見つつ本当のことを話すっていうのはどうだ?さすがに何か起きるたびに転々とするのもそろそろきつくなってきたし、何よりクフカにとってこの場所は良い。)
(......なるほど、確かにクウトの言い分も一理あるかな?彼らの考え次第ではあるけど、最悪上手くいかなくてもどうにもならないわけじゃない。)
(私はクフカの傍にいるからそっちは任せるわ。)
(まぁ対応するのは結局僕一人なんだけどね。)
ルサナは4人分のお茶の乗った盆を持ちヒデ達の待つ部屋へと入っていった。
読みずらさもあると思いますが、おそらく半分は意図したものです。ご容赦ください。
にしても思いつつくまま書いてたら登場人物が多くなってしまった。まだ3なんだけどな。