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スタート。題名は結構適当。変わるかも.(24.12.13)。
「おいおい、どうするよこれ。」
「あんたがやりすぎたんでしょッ!少しは申し訳なさそうにしてよ!!」
「仲良くじゃれるのは勝手だけど、まずは逃げないと。ほら手伝って。」
「みんなうるさい。けんかしないで。」
平原に一人の少女が座っている。光沢のある美しい黒い長い髪を持ち、凛と澄ました表情で佇む姿はなんと可憐であろうか。背丈は小柄で、幼くも愛らしくも見える少女だ。こんな何もない平原に少女が一人でいることがそもそも不自然だが、それ以上の異質なものが少女の周りにはあった。
何かしらの魔物と思わしき肉片が散乱し、太く長い金属の柱が等間隔に地面にささろ刺さり、直立している。
「こんなの見つかったらまた祭り上げられちゃうわよ。どこかの馬鹿がやらかしたせいでこの町ともおさらばね。」
「はいはい悪かったって。でもあいつらがクフカを狙ってたのが悪くないか?クフカも怖かったよなー?」
「へいき。みんないるからこわくない」
「クフカ~、嬉しいこと言ってくれるじゃな~い。それはそれとして、狙うも何も目視した瞬間だったでしょ!まだそんなに危険でもないときだったら対処の仕様なんていくらでもあったしょうがッッ!」
「感情の起伏忙しそうだな。更年期か?」
「黙れバカ爺。殺してやろうか?」
「わっこわ~。」
「クウト、デリカシー。」
「いいから君たち逃げるよって。早く次の町でも村でも今日泊まれそうなところに行かなくちゃ。クウト馬車出して。」
「へいへい。............おらよっと。クフカ、乗っていいぞ!」
突如、どこにもなかったはずの馬車が虚空から出現した。木でできた御者台に客車がついたいたって普通の馬車が現れたのだ。
少女はその現れた馬車に驚くこともなく慣れた手つきで客車に乗る。成人した人間を乗せる用の馬車に少女が一人で乗る、とても異様な光景だ。
「のった。いいよ。」
少女が馬車の客車に乗りそう呟くと、馬車はひとりでに動き出す。御者台には誰の姿もないのに動き出す。誰がどう見ても異様な光景だ。
「ひとまずは西に進んで街道に出よう。道なりに行けばそのうち、どこかしらの人が住む地域には行けるだろう。」
「街道につく前に誰か御者台出ろよー。俺は昨日乗ったから今日はどっちかだろ。」
「ツラ、今日は君だね。この前の賭け僕の一人勝ちで君たちがやることになっていただろう。」
「わかってるわよ。...はぁ。あれマジで疲れるから嫌なのよねぇ。」
「ツラがんばれー。」
「うぉん...クフカのためなら超がんばっちゃう!」
「俺もだけど、あいつも大概バカだよな。親バカ。」
「似た者同士だよ君たち。同じようなものだ。」
「ルサナ、こんなノンデリ大馬鹿野郎と一緒にしないでくれる?加齢臭が移っちゃう。」
「俺はまだピッチピチだから加齢臭なんて出てませーん。クフカ、俺臭くないよなー?」
「なんにもにおわない。」
「ほら~!!俺臭くないって~!!」
「その状態の君の匂いが純粋にわからないだけなんじゃないかな。無臭ってことだよ。」
「そう。」
少女の乗った馬車が平原を走る。誰もの乗って載なかった御者台にはいつの間にか銀髪の長髪にスラっと伸びた四肢、非常に目は大きく小顔といった非常に整った顔立ちで、その姿からは上品さが見て取れる程の壮麗な女がおり、馬の手綱を握っていた。少女はこれについても特に反応することなく、ぽつりぽついと言葉を呟くのみであった。
馬車は西へ西へと進み何もない平原から街から街を繋ぐ街道に侵入し、進路を変え街道に沿って走る。
街道といっても丁寧に整備された道ではなく、人々が通りできたけもの道だが、先ほどまでの平原よりも馬車の通りやすい道で、少女は心地の良い揺れにうつらうつらと転寝をしている。小鳥も客車の上で留まり休んでいるようだ。
「この先に小さいが村があるようだ。今日はここで一泊するとしよう。」
「はーい。クフカ~、着いたら起こしてあげるから横になってたら?前に来る?」
「...いく。」
女が問うと少女は短く答え、客車と御者台の間にある窓から身を乗り出し、御者台へと移った。そして、女の膝に頭を乗せ眠りについた。
それほど広くない御者台だが、少女は落ちることなく寝息を立てている。
「見て~クフカかわいい~。この寝顔、いつまでも見てられるわ。」
「わかるー。かわいいよなー。でもツラ、お前ぜったいに落とすなよ?傍から見たら相当危険だからな?」
「あったり前よ。私を誰だと思ってるわけ?たとえ天変地異が起ころうともクフカがこの席からおちることはないわよ。」
「まぁそれもそうか。」
「まぁ、この馬車よりも安全な場所はないだろうね。もし、脅かせる者がいるなら今は亡き魔王くらいじゃないかな。」
「魔王も今はこんなんだしな。」
「こんなんとか言うな。言い方が悪いわよノンデリ大馬鹿クウト。」
馬車は一人の少女と一人の女を乗せ街道を走る。近辺に大きな町がないせいかすれ違う者は誰一人としていない。
ほどほどのスピードで駆け抜ける馬車はこの先にある小さな村を目指しているようだ。御者台に座る女は自身の膝で眠る少女を優しく撫で微笑む。
日も傾きはじめもうじき橙色へ変わっていくであろう日差しを受けながら馬車は進んでいくのであった。
書き始めました。更新は不定期。思いつたら投稿します。
気になる方は是非見ていってください。