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何をやってもダメだということを、私がこれから証明していく件について

作者: 雨村やよい

何も考えないということは恐ろしいことだ。鉛筆を手に取ってみても何も書けない。頭の中は真っ白だった。振り子のように動かすけど何も思い浮かばない。

両手が少しずつ冷えてきた。あれ?左手って切り落としていなかったっけ?じっと見つめてみたら考えが浮かび上がりそうだ。左手はちぎれた。やっぱりだめだ。

ふと窓の外が気になった。珍しく今日は晴れているな。え、珍しいんだっけ?昨日も晴れていなかったっけ?

そもそも私はなにをしていたんだっけ?私は本当はなにをしたかったんだっけ?


どれもこの紙にかけるレベルのものではない。もうダメなのだろうか。別に痒くはないけれど強く頭を掻きむしった。冷えていく感じがした。それでも何も浮かんでこなかった。次は机に打ち付けた。昨日あれだけ寝たんだからこれくらいしないと頭が冴えないんじゃないか。痛みは感じないけれど、今度は体が痒くなってきた。腕を背中を感覚がなくなるまで掻いた。顔まで爪を立てた時にようやく気分が落ち着いた。涙が溢れてきた。また頭が机にくっついた。


私が何かを書き上げるなんてことはもう無理なのだろうか。そもそも何を書こうとしていたのか思い出せない。昔はどうしていたんだっけ。どういう思いでこれに向き合っていたんだっけ。とりあえず涙が邪魔なので袖で拭っておいた。左手が特に冷える。手首を掴んで温めてみた。ちょうど親指に例の跡が当たる。まだ赤みの残る”そこ”から下が感覚がない。こういう時に限ってこうなる。これは”逃げ”だ。そうだ紙に向き合わなければ。真っ白な紙とは言えない状態になっていた。手汗で歪み、握ったことでシワが付き、少し血が滲んでいる。

紙を押さえてペンを滑らせた。自分が思いつくだけの文字を少しずつ書いていった。ただ読み返すと文字ですらなかった。涙が止まらない。


涙が枯れてきた。窓の外で揺れる葉をぼーっとした頭で見ていた。もうめんどくさくてベッドに倒れこんだ。真っ白な天井と蛍光灯。腕も頭も白いシーツのベッドに沈む。そのまま溶けてしまいたいと思った。


数回瞬きを繰り返していくと、安心感が溢れてくる。時計の秒針の音を聞くのが嫌でデジタル時計に変えたけど、頭の中で響いている。いつになったら消えてくれるんだろう。出口の見えない暗闇に放り出された気分だ。この苦しみがいつまで続くのかわからない。そもそも自分がどこにいたのかわからなくなってきた。どんどん深みにはまっていく。腕が上がらない。


家に帰って薬を飲んで寝てを繰り返しても、いまだにどこも成長していない。あたりを見渡せば周りだけが時間が進んでいく。進んでいく。私は焦る。焦るけど何もできない。何かをしているような気がするけど覚えていない。


私はまた紙を汚した。


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