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プロローグ

 二作目です。

 なんだか新しいものが書きたくなって書きました。設定や人物、世界観が適当なので矛盾している場所があるかもしれません。暖かい目で見守って下さると助かります。

 それでは楽しんで下さい。

 とある街の廃墟街。所々、壁が崩れ、建物の中が見えるようになってまだそこまで時間はたっていないように見える。瓦礫、硝子、ゴミ……それらが散乱している。人によって手入れがされていないのだろう。此処に住んでいたであろう人々は影すら見えない。

 そんな郊外の街を二人の男女が歩いている。一人は黒い外套を羽織っている少年である。少女の方も黒で統一されている。レースのかかった帽子とひらひらとしたドレスを着ていた。黒い帽子から伸びる白い髪はまるで雪のように日の光を反射してキラキラきらめいて、とても美しかった。

「すみません。此処からは一人で……。」

「わかった。誰もいないだろうが気をつけろ。抗争の影響で、建物が脆くなっている箇所があるかもしれない。」

「はい。わかっています。」

 少女は少年にペコリと頭を下げる。綺麗な白髪がさらりと零れる。少女はスッと頭を上げると郊外の奥に足を進める。そうして十分くらい歩いていると、少女はある建物の前で足を止めた。

「懐かしいな。ただいま。」

 少女は短くそういうと、開きっぱなしの玄関から中に入った。

 中は埃やカビの臭いが酷く、とても誰かが住んでいる様子はない。あちこちに酒瓶が転がっているのを見るに、此処の家主はかなり荒れていたのだろう。

 そんな家の惨状には目もくれず、少女は奥へ奥へと進んでいく。少女が奥まで進むと、地下へと続く階段が見えた。少女は肩に掛けていた大きな鞄の中からランタンを取り出し、つまみを回した。不思議なことに、ランタンの中に火種はない筈だが、火がふっと灯った。

 灯りを頼りに、一番下まで降りていくと表面がざらざらとした赤さびに覆われたドアがあった。少女はドアノブを捻ろうとするが、錆びついて回すことが出来なかった。少女は肩を落として帰ろうとする。

「どけ。」

 短く、呟かれたその声に、少女は振り返り、ポカンと口を開けた。声の主は「なんだよ。その間抜けな面は。」と呆れたように頭に手を当てていた。

「ついてきてくれたの?」

「暇だったから着いてきたんだ。それより早くどけ。ドアを開ける。」

 少女は体を右に寄せた。少年はドアの前でしゃがみ、腰のあたりに手をやる。外套が僅かにずれて、ベルトポーチが露わになった。留め具を外し、中から黒い箱のようなものを取り出した。側面に穴が空いていて、紐がちょこんと伸びている。糸で黒い箱をドアノブに括り付ける。

「それは、もしかして……」

「少し離れてろ。破片が飛んでくるかもしれない。」

 離れるように言うと、少女は階段を数段登った。

 少年はマッチを取り出し、火をつけた。それを紐に近づけ、火が燃え移る。流星のように火がちかちか弾ける。少年は少女の前に立ち、それと同時に紐は箱の中に引っ込む。突然、閃光と風船が割れる音よりも大きく、甲高い音が鼓膜を突き刺してきた。近くにいた少女は思わず手で耳を覆っている。

 少年はドアを軽く押すと、なんの抵抗もなく開いた。

「ほら、開いたぞ。行ってこい。」

「はい、ありがとうございます。」

 ドアの先は、吞み込まれてしまいそうなほど、深い闇に満ちていた。まるで得体の知れない何かが、こちらを凝視している様にも感じる。それと、わずかにカサカサと音が聞こえる。虫かネズミの類だろう。その音が恐怖を助長させる。

 しかし、少女は臆することなく闇の中へ足を踏み出した。少女の周りだけ、橙色の灯りが闇の中でその存在を主張する。地下室の中はそこまで広くない。六畳くらいの広さだろうか。

「ただいま。お母さん。」

 少女の視線の先にあったものは、人間の骨であった。元の人物は想像できないが、こんな何もない空間で、たった一人で、日の目を見ることなく朽ち果てたのだろうか。

 少女はランタンを地面に置いて、両手を合わせて目を瞑る。十数秒そうしていただろう。少女は鞄を地面に下ろし、中から白い円柱状の壺を取り出す。カコンと音を立て、壺の蓋を開けた。そして丁寧に、割れないようにそっと、蓋を地面に置き、少女は亡骸の前に座りなおした。そうして、ゆっくりと骨を壺の中に入れていく。慈しむように、涙をこらえるように、少女は一つ一つ、噛みしめながら入れていく。時折、水滴が地面を濡らすが、手は少女の意思とは反するように動き続けた。そうして、時間だけが無常に流れていった。

「……終わったか?」

「はい。待ってくれて、ありがとうございます。」

 少年が声をかけると、少女はすくっと立ち上がった。

「行きましょう。早くいかないと、追いつかれてしまう。」

 少女は急かされているかのように、さっさと階段を上ってしまった。

「まったく、悲しいなら素直に悲しんだら良いものを……。」

 少年の呟きは、誰に聞かれることも無く、空にきえていった。


 ここまで読んでくれてありがとうございます。

 今後も連載は続ける予定なので興味があったら是非読んでください。

 また、この作品はpixiv、ハーメルンにはまだ投稿してないので、よろしければそっちに投稿している作品のほうも読んでいって下さい。

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