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episode47 超音速の世界へ

 


「コンピューター? それって計算手って意味だよね?」



 シャーリーが首を傾げる。


 確かに前世地球でもコンピューターの語源は商会などで会計をしていた計算手のことを指していたが、それは今世でも同じだった。


 シャーリーは商会でコンピューターさんと交流したことがあるから、真っ先にそれを思い浮かべたのだろう。



「そう。計算をする人のことをコンピューターというが、それを魔道具にしてもらおうってこと」



 俺がそう言うとエリオットが大きな音を立てて立ち上がった。



「そ、そんなことができるのか? 計算なぞ、人でないとできないだろう?」


「できるんだなぁ、これが」



 まぁ、原理を今教えることはできるけれども、そもそもだ。



「コンピューターを作る前に、まずはやらなきゃいけないことがある」


「真っ先にやること? なんだそれは」



 ロケットやコンピューターを開発する前にやること……それはズバリ!



「音速を越える有人機作らないとな」



 そう! 音速を超えてみないと!!










 ◆










 超音速。


 それは、音速を越えること。


 今世では人が高速で空を飛んだことはない。


 ヘリで飛んだことを高速と言うのならそれまでだが、固定翼機程の速度は出していない。


 まずは高速で飛ぶことを経験してみないと。


 今世じゃ魔法があり、身体強化魔法があるから超音速によるGにも耐えられそうに思うけど、身体強化魔法で強化されたと聞いたことがない部分がある。


 それは内臓だ。


 身体強化魔法で筋力を上げることができることはわかっている。


 けれども、内臓が強化されたなんて話は聞いたことがないのだ。


 超音速で飛べば、肺が圧迫されて呼吸が困難になり、意識を失う……所謂ブラックアウトが発生する。


 その為に特殊な呼吸法を前世の戦闘機乗りは習得するのだが、それが必要なのか否かがわからない。


 ということで――



「実際に飛んできます!」


「「「「「危なーい!!」」」」」



 ジェットエンジン搭載型固定翼機のコックピットに続くタラップに足をかけた俺に皆が叫ぶ。



「なんだよ。人がやる気出してる時に」


「あんたバカじゃないの!? 計画総責任者が真っ先に危険に飛び込むんじゃないわよ!!」


「そうですよ! その……ブラックアウト? が起きたらどうするんですか!?」



 シャーリーとユースティアナさんが詰め寄ってくる。


 そう言われても……



「他人乗せて万が一、命落としたら正直立ち直れそうにないし」


「「それは私たちも同じ(です!)!」」



 二人声を揃えて言った。


 まぁそうなんだろうけど……



「対処方法も熟知してる人間がいくべきだろ?」


「そ、それは……」


「そうかもしれないですけど……」



 納得できる反論を受けたからなのか、少し語気が弱くなった。


 するとやり取りを聞いていたエリオットが前に出てきた。



「しかし、シャーリー嬢達の言い分もわかる。アーサーをもし万が一失えば、世界からの依頼も達成できない」


「大丈夫だって。音速超えたマッハまで加速できるけど、頑丈に作ったからさ」


「……ちなみにこれはどれくらいの期間でできたのだ?」


「三ヶ月」


「突貫ではないか……」



 とは言ってもしっかりと作ってるから大丈夫……の……はず。



「……大丈夫だよ」


「なんだその間は」



 言い切れない部分もあるから濁してしまった。


 しかしだ。



「最初からアフターバーナー全開にはしないよ。それに万が一には飛行魔法で脱出と降下をするから、簡単に死ぬつもりはない」


「死を視野に入れている時点でおかしいのだが?」



 へぇ、これは異なことをいう。


 俺はエリオットに近づいてその肩を叩く。



「冒険ってのはそういうもんだろ?」



 初めてのことを成すのだ。「危険を冒す」のは当然だろう。


 ――


 ――



 冒険は危険を冒すと書く。


 今回のこのジェットエンジン搭載の固定翼機の飛行は、まさに冒険と言えるだろう。


 機体が空中で分解するかもしれない。


 エンジンが爆発するかもしれない。


 いろんな危険がまとわりつく。


 そんな状況で俺は――



「イィィィィィヤッホォォォォォイ!!」



 ――上空でテンションを爆上がりさせていた。


 いやぁ、ロケットも作れる人達が設計図通りに作ってくれたんだから飛ばないわけはないのよ。


 設計図が間違ってたら終わりだけれども。


 この固定翼機、毎度お馴染みフォスター造船所……改め「フォスターヘビーインダストリー」の人達が作ったんだよね。


 うん、名前変えたんだ。リチャードさん。


 理由は俺が色々作ってもらったことで船以外のものを作りすぎたからだってさ。


 いい名前になったと思う。カッコいいじゃん、ヘビーインダストリー(重工)って。


 まぁそんなことよりもだよ。



「これ超楽しい!! これ俺が設計したのか!!」


『自画自賛じゃん』


『心配してたシャーリーとユースティアナさんに謝んなよ。心配して損したよ』


「なんでだよ」



 オープンマイクで話してるから地上にいる皆には俺の声が全部聞こえている。


 俺のテンションの高さに呆れたカレンとエレナから小言を言われたが、まだテスト終わってねぇし油断できねぇんだけど?


 前世地球の航空機事故の大半は離陸時か着陸時。


 しかも着陸時の事故が一番多い。


 それ言うとまたなんか言われそうだからやめとくけど。



「とりあえず、高度10,000ftで速度940kmで航行中。でも身体強化するほどじゃないな」


『じゃあ、やっぱり高度40,000ftまで上昇する?』


「そうだな。じゃあ上がるぞ」



 今度はシャーリーの声が通信機から聞こえてきた。


 それに答えて、俺は操縦桿を引いた。


 今は大体3km上空を飛んでいるけれど、まだまだ大気が厚い。


 それが薄くなる高度10km以上まで行けば超音速もいけるだろう。


 まずはマッハ1……時速1,191kmまで加速させることを目指そう。



「高度40,000ftまで上昇。……テストを開始する」



 一度、深呼吸をしてテスト開始を宣言する。


 まずは身体強化魔法を発動させる。


 うん、ちゃんと発動できてる。


 最高峰の山を攻略した冒険者は身体強化魔法を使って山頂まで行ったという記録があったけど、高度12kmじゃあどうなるかわかんなかったからな。


 ……ん? 身体強化で最高峰の山を登った?


 世界最高峰って確かアルカイムではカシミドス山が9,026mだったはず。


 そこに身体強化で登った? デスゾーンである8,000m以上の山を酸素ボンベなしで?


 この世界には俺が開発するまで酸素ボンベはなかったから無酸素登頂したはず……ってことは身体強化って肺も強化されてた?


 いや、酸素そのものは薄いんだから肺を強化してても一緒か。


 うーん……高山病対策で順応させてから行ったら違うのかな?


 わからん。


 まぁとにかく、今から音速越えるからそれで確認できるだろう。


 身体強化魔法で内臓も強化されるのか!!



「アフターバーナー起動! 加速開始!!」



 スロットルを思い切り押し倒す。


 アフターバーナー……ジェットエンジンから排気される高熱のガスに再度燃料を吹き付けてさらに加速する装置。


 速度計は順調に加速していることを示している。


 身体強化魔法のお陰で腕が上がらないとか動かせないとかはなく、息苦しさも感じない。


 身体強化魔法は内臓も強化されるみたいだな。


 現在マッハ1……時速1,191kmまで加速している。


 しかし揺れは感じてはいるが、加速度による重力で身動き一つできないということはない。


 最高かよ。



「アフターバーナー停止。最高マッハ1.3まで加速したが今のところ体に支障はない。身体強化魔法は内臓にも効果が行き渡っているようだ」


『了解した。こちらの女性陣は皆一様に安堵のため息を吐いているぞ』


「心配かけたな。問題ないから今から帰るよ」


『……ホントよ。深海も危険があったけど、空は落ちられると助けられる自信がないわ』



 エリオットと会話していたら、シャーリーがマイクの前まで来たようだ。


 まぁ、言いたいことはわかる。


 海はまだ上に上がればいいが、空は落ちるとなんともならない。


 パラシュート代わりに飛行魔法があるとはいえど、飛行魔法は発動するのに結構集中力がいる。


 飛行魔法を無意識に発動できるほどまでにならないと航空機には乗れないな。


 ……深海も、生身で外に出たら水圧で身体に支障は出るからどっこいどっこいだと思うけど、感覚的に海はまだなんとかなりそうだが空はどうしようもないって感覚はわかる。



「無事だから安心しろ。これから飛行場に戻る」


『ええ、待ってるわ』



 心底安心したような声音でそう言われて、なんだか心があったかくなった。



 ――


 ――


 ――



 さてさて、無事着陸もできて今は皆のいた管制室……とは名ばかりのテントで休んでいた。



「にしても……すごいですね。アルトゥムもそうでしたが、自身が開発したものといえど、ここまで華麗に操縦できるものなんですか?」


「できたんだねぇ」



 レイにそう言われて、のんびりと返したが、確かに言いたいことはわかる。


 なんというか操縦桿やコントローラーを握るのしっくりくるんだよな。


 まぁ、二つともしっくりくる形にしたからなんだけど、そもそもなんでこんなにしっくりくるんだろう?


 前世じゃ俺はパイロットだったのか?


 そこまで前世の記憶を取り戻してないからわかんねぇな。



「とりあえず無事に帰ってきてくださって安心いたしました。これからはどうなさるのですか?」


「そうですね……」



 ユースティアナさんも安堵の表情を浮かべて近づいてきた。


 どうするか……か。


 空を見上げて考える。



「あの航空機は今後訓練用に使うことになると思います。宇宙船に乗る前に加速度には慣れないといけないと思いますから」


「なるほど……では、私もあの航空機に乗らないといけませんね」


「えっ!?」



 乗るの!? ユースティアナさんが!?



「はい。私も月に行けるように精進なさいと猊下から言われたので」


「そ、そうなんですね……」



 まぁ、月行きの船……宇宙飛行士はこのメンバーが中心になると思うけど、何人かは開発に従事して欲しいからなぁ。


 募集しないといけないけど、ユースティアナさんが宇宙飛行士として適正かどうかは見極めないとな。



「ですが宇宙に行くにはそれなりに訓練が必要です。それらで優秀な成績を収めないと行かせませんよ?」


「承知しております。ビシビシ鍛えてくださいませ!」



 むんっ! と気合いを入れるユースティアナさんだが、彼女を航空機に乗せるとかしていいのか?


 エリオットも乗せていいのか?


 重鎮多すぎだろこのパーティー。

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