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episode44 海底に眠るもの

 


 ――翌日。


 一夜明けて、既に昼ご飯を済ませた俺のもとに、マシューさんから現状の報告が上がってきた。


 それは――



「かなり硬い部分に差し掛かりました。このままではビットが保つかどうか……」


「……」



 ……うむ、それはモニターの数値からそうかな? とは思っていたけど目を逸らしていたんだ。


 でもそっか……そっかぁ……


 落胆していると横にいるエリオットと目が合った。



「ほれみろ」


「ぐっ……」



 フラグ回収しちまった!! くそっ!!



「でもなエリオット、この数字から見て取れることもある。これ、ただの岩盤じゃないぞ」



 でも、収穫もある。


 その問題となっている硬い岩盤だが、どうも岩盤ではなさそうというところだ。



「なに? どういうことだ?」


「これ多分、魔石だわ」



 LWDから送られてくる数字の魔力値が異常なほど高く、電圧も高い。


 恐らく魔石の層があると見ている。


 海底下640m……そこに魔石が分厚く眠っているということだ。



「厚さが何mあるかはわからないけどな。だけど魔石も削れるはずのビットでこれは……」


「はい。明らかに一般的な魔石とは比べ物にならない程に硬いです」



 マシューさんもそこに首を傾げている。


 が、これではっきりしたことがある。


 ここには特別な何かがあるってことだ。



「これだけ硬いんです。きっと何かが眠っているはず……本当に宝探しみたいになってきたな」


「楽しんでいる場合か? ビット交換の引き上げをするとなると第二掘削は諦めざるを得んぞ?」



 アルカイムの航海日程は決まっている。


 それに合わせて食料なり魔力なりを積んでいるのだからそれを伸ばすとなるとまた費用がかさむ。


 想定外のビット交換をすると時間がその分失われる。


 だがしかしだ。



「荒天待機もあったから時間がないって思ってんだろうけど想定内だ。マシューさん、ビット交換お願いします」


「なっ!? この状況を想定していたというのか!?」


「想定以上に硬い岩盤に当たった場合に備えて時間のリソースは確保してるんだよ。まさか魔石が硬いなんて思ってもみなかったけどな」



 航海日程が決まっているからこそ、ありとあらゆる可能性を鑑みて計画を立てるのが海上掘削の鉄則だ。


 臨機応変にスケジュールを変更して、必要とあらば予定を切り捨てる。



「今回のスケジュールは二個穴を開ける予定じゃなく、()()の予定だったんだよ」


「なっ!? そうだったのか!?」


「まぁ、三個目は出来たらってことだったからメインスケジュールに書いてなかったんだけどな」



 三つ目の坑は途中に魔力を生み出す何かがあった場合、魔力量センサーを埋めて観測と監視をしようとしていた。


 が、これは第一……今掘っている坑の結果次第だった為、皆には伝えていなかった。


 知っているのはマシューさん達ドリラーズと船長のポールさんくらいだ。



「というわけで魔力発生源を突き止めたとしても、第三を切り捨てる。そうすれば時間は確保できるよ」


「全く……そういうことなら先に伝えておいてくれ」


「だって君ぃ、ただの研究補佐だろぉ?」


「言ったなぁ?」



 などとふざけ合いつつ、マシューさんにあとは任せて俺達はラボ・ストリート・デッキに向かった。










 ◆










 ということでビット交換を行い掘削すること大体二十五時間。


 おおかた一日かかって掘削した結果、無事、魔石層を貫通した。


 貫通が早朝だったから大声を上げずにガッツポーズだけして俺は一人ラボで喜んでいた。


 で、カメラ構成を再投入(リエントリー)する為にまた更に二十時間ほどかけて、今日、とうとう海底の中を見る時が来た。


 今はモニタールームに皆が詰め寄り、映像が来るのを待っている状況だ。



「……あなたっていつ寝てるのよ?」


「君らが寝た後から君らが起きるまでの間」


「数時間だけじゃない!? しっかり寝なさいよ!」



 シャーリーからそう言われるが俺としてはアルカイムにいる間は結構睡眠時間を確保できている。


 皆より寝ている時間が短いのは体質なのだから許して欲しい。



「しっかり寝てこれなんだよ」


「嘘いいなさいよ」


「嘘じゃないって!」



 本当なんだ信じてくれ!!



「しかし、我々が起床し作業を手伝おうとする頃には既に現場に出ていることが多いではないか。その睡眠時間でよく動けるな」


「君らが寝過ぎな気もするけどな」



 エリオットにも不思議に思われたが、俺だって不思議に思っている。


 この身体と年齢なら十時間くらい寝れるはずなんだけどなぁ。


 寝れないんだよなぁ。


 さて、それはとりあえず置いといて。



「まぁ、それはいいじゃん。これから海底を見るんだぞ」


「よくはないけど、それもそうね。ティアも見なさいよ」


「えっ!?」



 俺たちの後ろにいるユースティアナさんにシャーリーが声をかける。



「こ、ここからでも見えるから……」


「創世神ソルの遺構があるかもしれないのよ? ローレルリングなんだから近くで見ないと」


「で、でも……」



 チラリと俺の方を見るユースティアナさん。


 なるほど……俺に気を使っているのか。



「かまいませんよ。どうぞ正面へ」


「よ、よろしいのですか?」


「ええ。どうぞ」


「……では、お言葉に甘えて」



 俺はユースティアナさんにモニター正面の席を空け渡す。


 そして彼女の右隣に座ろうとするとシャーリーが肩を叩いた。



「そこは私の席。あなたは私の右隣りよ」


「……なんで?」



 モニターから遠くなるじゃないの。


 俺、主席研究員……



「ティアはローレルリングなの。気を使いなさいよ」


「なんかそういう規律があるのか……知らなかった」



 男性を横に座らせてはいけない的な?


 宗教の規律って厳しそうなイメージあったがこの世界でもそういうのあるのか。



「えっ? いえ、そんな規律はな――」


「ほら、わかったらズレる」


「わかった」



 シャーリーの言う通りにしてもう一つ席をズラす。


 そして俺の左隣にシャーリー、その左隣にユースティアナさん、その横にはマティルデさん、シンシアが座り、ユースティアナさんの後ろにはカレンとエレナが立ち見していた。


 シャーリーと俺の後ろにはエリオットとレイが立ち見している。


 ……ん?



「エリオットが立ち見とか良くなくない?」



 後ろを振り向き、エリオットにそう言うと、ニヤリと笑って答えた。



「私はただの研究補佐だからな」


「根に持ってらっしゃる?」



 思ったより粘着質だな。



「というのは冗談だ。そんな些細なことは気にするな、そもそも席を用意されてもここからでは見えんからな」


「そうか? お前がそういうならいいけど」



 コイツも冗談言うんだ……新たな一面を見た。


 ということでそれぞれモニターが見える位置に陣取り、画面に映像が来るのを待つ。


 そして数十分後、カメラが起動し、カレンの製作した保護カバーの開閉機構が起動。周りが見える状態になった。


 薄暗く、映像にはぼんやりと何かが映る……というはなかった。


 逆に、ライトの光が眩しすぎて白飛びし、何も見えない程だった。



「……何?」


「ねぇ……なんで海底下1000mの地下がこんなに明るいのよ?」


「……知らん」



 机にある無線機に手を伸ばし、カメラの魔力源を操作しているドリラーズハウスのマシューさんに連絡を取る。



「マシューさん、ライトを消してください」


『了解』



 ライトが消されて、眩しかったカメラの視界がはっきりと見えるようになった。


 そこにあったのは巨大な機械。


 発光源はその機械のパネルラインから発せられていた。


 その意匠は前世地球の最先端機械のデザインとかけ離れていた。


 古い……わけじゃなく、どちらかというとSF映画やアニメに登場しそうなデザインだ。


 見た目じゃ何をする機械なのか全くわからない。


 ここが創世神ソルが世界を浄化した場所だとか言われていなかったら、ナノマシン製造機という予想すらできなかったかもしれない。



「な……何これ……」


「こ、これが創世神が行った世界浄化の正体……なのですか?」



 シャーリーはその機械の姿に驚愕し、ユースティアナさんも驚きながらも俺に確認してくる。


 けれども――



「わかりません」



 もしこれがナノマシン製造機だとして、これが()()()()の機械なのかすらわからない。


 これだけ巨大なんだ。


 他の機能も付いている可能性も大いにある。


 だが、これだけは言える。



 ――創世神ソルは高度な文明を持つ知的生命体だということだ。


 それこそ、惑星をテラフォーミングできるほどの。



「正直、色々調べたいところだが、これが本当にナノマシン……魔力製造機なのか、それともそれ以外の目的のものか、或いは複数の機能を持つのか……本当に何もわからない」


「アーサー様ですらも……ですか!?」


「俺ですらもっていうのはわかりませんがそうです」



 だから皆、俺をなんだと思ってるんだ。



「このままビットを近づけて機能停止した場合、その際の影響範囲が予想できません。ですので、今回はこのカメラに映る映像を録画する程度に留めます」


「アルトゥムで触りに行けないのですか?」


「穴が小さいので……」


「あっ……そうでした……」



 今見ている映像がドリルビットサイズである約20cm位のカメラ映像だったことを思い出したのか、顔を赤らめて恥ずかしそうに縮こまった。


 アルトゥムが入れるほどの穴があればいいけど……ないな。


 今見れているのは機械の上部部分だけだけど、多分この機械の下部は掘削機構が付いていると思う。


 このカメラの画角なら縮尺的に大きさが海底で見たあの巨大な穴の直径と同じくらいだ。


 直角に掘れるシールドマシンみたいな感じかな?


 それとも巨大なドリルビットみたいな形なのか。


 知りたいことは山ほどあるが――



「悔しいけど……俺達が見れるのはここまでだ」



 まさかこんなに高度なものを見せられるとは……見たら大体わかるだろうなんていう驕りが、招いた結果だな。











 ◆










 気を取り直し、第二掘削。


 今度は第一で取れたデータを元に魔石層の魔石の採取を目的とした掘削が始まった。


 ってことでまた最初から。


 コンダクターパイプのジェッティングから開始である。


 とはいえ、一回やったことだからか少し手慣れて、結構早めにジェッティングが完了し、今はもうサンプルリターンの為の掘削構成の降下が始まっている。


 順調に進んでいる……んだけど――



「ハァ……」


「もう……悔しいのはわかるけど元気だしなさいよ」


「そ、そうですよ! 創世神ソルの遺構を映像や写真に残した時点で偉業ですよ!!」



 サンプルコアが上がってくるのを待つ間、シャーリーとユースティアナさんとでお茶をしていた。


 マティルデさんの淹れる紅茶はとても美味しい。


 けれども俺の心は晴れない。



「もっと見たかったなぁ……あれがなんなのか」


「でも見た目でわからなかったんでしょ? どこがどうなってるのかも、そもそも中に入れるのかも。仮に調べることができたとしても、そんな機械を調べて壊しちゃって魔力が作られなくなったらどうするの?」


「それはそうだけどさぁ……」



 それでもですよ。



 ――


 ――


 ――



 未だ、巨大機械を調べられなかったことを引きずりながら、コア・カッティング・エリアへやってきた。


 今回は見学にユースティアナさんとマティルデさんも一緒である。



「ほらぁ、コア上がってくるから。テンション上げなさい」


「うーん……」



 まぁ、クソみたいに硬い魔石が上がってくるのは楽しみではあるな。


 ちょっと気持ち立て直せてきた。



「まぁ、お客様いらっしゃることだしな」


「そうよ、その調子」


「元気になられてよかったです」



 ユースティアナさんにも心配をかけてしまっていたようだ。


 お客様に心配をかけるなんて……反省しよう。


 その後、ユースティアナさんにアルカイムでのコア回収の方法なんかを話していたら、早速第一陣が上がってきた。



「はーい、第一陣が来ましたよ」



 今回、掘削を手伝っていたエレナがインナーバレルの先端部分を持ってきた。


 先端部分は中の土が崩れやすいから手で持ってくるのが普通だ。


 大体30cm位の長さのコアを手に、コア・カッティング・エリアにシンシアと共にやってきた。


 作業着に油汚れなどが付着していてしっかりと仕事をしていたことが伺える。



「すごいですよ。魔石の色が普通のものと比べてかなり濃いです」


「本当だ。青色がかなり深いわね」


「そうね。普通のは青くて透明だけど、これは色が深すぎて中が見れないわ」



 シンシアから報告を受けると、シャーリーとユースティアナさんがそれを見て感想を言っている。


 確かに色が深く、魔石の色がサファイアだとすると今目の前にあるのはラピスラズリだ。



「こんだけ色が濃いと硬いんだな」



 よく見てみようと思って俺が手を触れた瞬間だった。


 急に魔石が輝き始めたのだ。



「えっ!?」



 慌てて手を離す。


 しかしその輝きは未だ収まる様子はない。



「あなた何したの!?」


「なんもしてねぇよ!! ただ触っただけ!!」



 な、なんだ!? 何が起きてるんだ!?

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