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episode18 新たな仲間と俺のお休み

 


 お昼、エレナの実家に協力をもらってボーリング掘削のテストができないか確認しようとシャーリーに電話……じゃないや、通信したら――



『『『タイムリーっ!!』』』


「えぇ!? 何っ!? 何が!?」



 突然叫ばれた。



「なんだよ、何がタイムリー?」


『ごめんごめん。実はね――』



 そのまま自分の要件を話すのもアレだから、まずはシャーリーの話を先に聞いた。



『――ってことなの』


「なるほど」



 退学になってしまうシンシアさんを俺が使用人として雇って、俺の研究も手伝ってついでに勉強させて欲しいという内容だった。


 まぁ、俺としては使用人探しをしていたから願ったりだが――



「それ、シンシアさんは了承してるのか?」


『……あっ』



 シャーリーのこの反応……聞いてないな。



「シャーリー、今はスピーカーモードか?」


『えっ? 違うけど』


「じゃあ、切り替えてくれ」



 俺がそう頼むと、操作音が聞こえてすぐに返事が返ってきた。



『変えたわよ』


「そこにシンシアさんはいるのか?」


『は、はい! シンシア・アンカースです!』



 初めて聞く声。


 その声の主に、俺は話しかける。



「初めましてシンシアさん。アーサー・クレイヴスと申します。先ほどシャーリーがお話しした内容は聞き取れましたでしょうか?」


『はい、私がアーサーさんの屋敷で働くと……』


「そうです。私としては願ったりですが、シンシアさんご本人の意思をお聞かせ願いたい」


『えっと……』



 シンシアさんが言い淀む。


 そりゃそうだよ。


 どこの馬の骨とも知らんやつのところに行って勉強って、そんなもの役に立つの? って思っても仕方ない。


 シャーリー達は全くわかっていないな。


 俺を高く評価してくれるのは嬉しいがもう少し自分を俯瞰して見ないと。



『あの……私としてもありがたい話なんですけど……いいんですか? むしろ私がアーサーさんから教わって』


「……あれ?」



 おや? 思ったより乗り気だぞ?


 うぅん? なぜ?



「私の元で勉強をすると言っても、学院のそれとはかけ離れていると思うのですが……」


『あっ、はい! その()()()()知識と技術を学びたいんです!』



 いや、逆!?


 俺は、「俺<学院」で話をしてるのに彼女は「俺>学院」と思っちゃってる!?



『今の私じゃ全くついていけないと思うんですけど……がんばります! なので、私を働かせてください!!』


「えぇ……」



 思ってたんと違う。



『……やっぱり、ダメですか?』



 おっと、さっきの声を聞いて気が変わったと思われたか。


 それは訂正しないと。



「いえ、先も言った通り願ったり叶ったりです。ちょうど使用人を探していたので」


『じゃ、じゃあ!』


「ええ、貴女が良ければぜひ」



 スピーカーの向こう側でわぁっと盛り上がる声が聞こえる。


 さて、じゃあ、今度は俺の話を――



『ありがとう! アーサー!! じゃあ、お昼休み終わっちゃうから切るね!!』


「あっ、ちょ!?」



 プツリという音の後、ツー、ツーという音がスピーカーから鳴る。


 あいつっ! 自分の話するだけしてかけてきた相手の要件聞かずに切りやがった!!



 ――


 ――


 ――



 というわけで放課後、再度通信凸。



「俺の話聞かずに通信切るなバカ」


『ごめんなさい……』



 まぁ、時間がなかったからどのみちダメだったんだろうけどさ。



「まぁ、反省してくれたならそれでいいよ。じゃあ、改めて俺の要件だが、エレナに変わってくれないか?」


『えっ? エレナに? 私は聞いちゃダメ?』


「いや、別にいいけど」


『じゃあスピーカーにする!』



 またスピーカーモードに設定されたところで、エレナから話しかけられた。



『こんばんは、私に何か用?』


「こんばんは。一つ頼み事をしたくてな。今度は海底の掘削調査をしようと思ってて――」



 俺は今計画している掘削調査の件を伝えていった。



「――ってことで、エレナの実家の方々に協力を仰ぎたい」


『……またすごい計画だね。わかった、聞いてみる』


「ありがとう! 助かるよ!!」


実家(うち)にも通信機があるから今度の休みの日にでもかけてみるよ』


「ああ、よろしく頼む!」



 その後、二言三言交わした後、通信を切った。


 そっか、エレナん()にも通信機があるんだ。


 なんか自分が作ったものが波及していくのってむず痒いな。










 ◆










「……またあいつはすごいことをさらりと言うわね」


「あはは……そうだね。海底を掘って何があるか確かめるなんてね」



 食事も入浴も終えて、就寝までの穏やかなひと時。


 シャーリーとエレナはアーサーの次の計画について話していた。



「まぁ、あいつが突拍子もないことをやり出すのは今に始まったことじゃないからいいけど、それよりもシンシアさんが無事学べる場が出来たことが一番嬉しいわ」



 しかし、アーサーの破天荒なぞ日常茶飯事であるため、シャーリーは話題を変えた。



「でもシンシアさん驚かないかな? アーサー君ってほら、それこそ突拍子もないことをしれっと始めるでしょ?」


「あ〜……確かに」



 やることなすこと全て、高度な知識知恵を駆使して行うアーサーだが、その全てを()()に始めてしまう。


 故に驚く間もなく、淡々と事は進み、気がつけば偉業を成し遂げているのだ。


 そんな場面にシンシアは耐えられるのだろうか? とエレナは心配しているのだが――



「……慣れてもらうしかないでしょ」


「……そだね」



 そう結論付け、二人は床についたのだった。



 ――


 ――


 ――



 一方その頃、カレンとシンシアの部屋では――



「……ありがとね。カレン」


「ん? どうしたの? 改まって」



 突然、シンシアから礼を言われたカレンは雰囲気から居住まいを正した。



「ここを退学するってなった時、絶望しかなかった。せっかく入れた魔法学院で、何も成し遂げることもなく去るなんてって」



 ルームメイトであるカレンが世界一周海底調査に向かったことで、シンシアの勉強意欲は一段と上がった。


 カレンから調査の目的を聞いた時は何を言っているのかさっぱり理解できなかったことが悔しかったのだ。



「いやぁ……私もアルトゥムのことにばかり目がいってたから調査内容はあんまり理解してなかったんだけどね」



 そのことをシンシアはカレンに伝えると、照れ臭そうに頭をかきながらそう言った。



「それでも刺激になったよ。そんな時にこんなことになって……でも、クレイヴス君のところで働きながら勉強出来るっていう最高の場所を用意してくれた。だから、ありがとう」


「私も、シンシアの力になれて嬉しいよ」



 カレンは席を移動し、シンシアの隣に座る。


 そしてそっとシンシアの手を取った。



「今学期中はまだ在籍できるんだから、学院での思い出いっぱい作ろ? まずは学祭を頑張ろう!」


「うん!」



 シンシアが学院を去っても、アーサーと関わるカレン達はまた顔を合わせることになる。


 しかし、学院での思い出は今しか作れない。


 残り少ない学生生活を精一杯楽しもうと思ったシンシアであった。



「あっ、あと忠告しとくね」


「? なにを?」


「……アーサー君、とんでもないことをしれっと言ったり始めたりするから、いちいち驚いてたらキリないよ」


「わ、わかった……」



 カレンの目が本気であったことから、シンシアは覚悟だけは決めておこうと心に誓った。










 ◆










 使用人の問題が解決したおかげで、開発の方に力を注ぐことができるようになった。


 俺はホントに運がいい。


 なるほど、これが異世界転生で貰った俺のチート能力か!?


 なんて冗談は置いておいて、俺が開発しなければならないのは掘削機だ。


 深深度の地層を掘り起こすためには様々な工夫が必要になってくる。


 1000mや2000mもの深い距離を掘る為にはドリルヘッドを付けた棒そのものもかなりの重さになる。


 それを支えつつ、且つ高トルクで回さなければならない。


 ドリルヘッドは幸いこの世界には超鋼鉄「アダマンタイト」が存在するから心配はしていないが先も言ったドリルの棒……「ドリルパイプ」を支えて回すドリル本体である「トップドライブ」が難問だ。


 船のスクリューを回す魔動モーターはあるものの、何十tもあるドリルパイプを回せるか怪しい。



「新しいモーターを開発するしかないのか……」



 まぁ、基礎技術があるだけましと考えよう。うん。



 ――


 ――


 ――



 新たなモーターを開発すると決めてから数日。


 あーでもないこーでもないとフォスター造船所のエンジン部門の方々と開発の日々を送っていた時だった。



「えっ? 学祭にですか?」


「そうだよ。私と妻、そして君にシャーリーから招待状が届いたんだよ」



 ルイさんから渡されたのはヘラスロク高等魔法学院の学院祭への招待状だった。


 へぇ、この世界の学祭は招待制なのか。


 いや、貴族や大商会の子女達が通ってるんだからこの学院だけなのかもしれない。


 しかし……学祭かぁ……



「君の言いたい事はわかる。新型モーターの開発中に現場を離れたくないのだろう?」


「……」



 図星だった。


 もうルイさんは俺のことをよくご存知のようである。



「しかしだね、君は働きすぎなんだよ。せっかく購入した屋敷に帰ったのは何時(いつ)だい?」


「えっと……」



 ええ、渡された鍵を一回も使っていません。


 つまり帰ってない。


 あの屋敷に足を踏み入れたのは内見の時と引越しして片付けをした時の二回だけだ。



「ハァ……アーサー君、いい機会だから休みなさい。王都の宿もこちらで手配しておく」


「えっ!? そんなことまでしていただくわけには!?」


「こうでもしないと君は休まないだろう? これは業務命令だ。休みなさい」


「……はい」



 ルイさんは俺に有無を言わさず、俺は強制的に休みをもらうことになった。



 ――


 ――


 ――



 というわけで、やってきました王都レオリアル。


 ルイさんが用意してくれたホテルに昨日着いたが、学院祭は翌日。


 今日は学院生だけで学院祭を行って、明日は招待客を招いて学院祭を開くという日程らしい。


 ……じゃあなんで昨日から明後日までホテルを予約したの? ルイさん。


 わかってる。わかってるさ!


 休めって言うんだろぉ!!



「でもなぁ……」



 とりあえず、外に出てみる。


 商店街にやってきたが、正直いって何を見ればいいかわからん。


 一度、魔道具がどんなものが出回っているか見てみようと思って見てみたら殆ど俺が開発したものばかりが店頭に並んでいた。


 嬉しいやらむず痒いやらだが、おかげで俺の興味のあるものはもうなくなってしまった。


 洋服は興味ないし……なんなら洋服は自分達で拵えるのが普通だし。


 俺の普段着は就職時にスーツを何着か拵えてもらえたし、部屋着は孤児院のエスリン先生に拵えてもらったものをいまだに使い続けている。


 それくらい興味がない。


 うーむ……この世界で俺は仕事以外で何を楽しみにすれば……


 仕事が趣味ってなった場合こんな弊害があるんだな。



「……ん?」



 ふと、大きな建物が通りの先にあるのに気がついた。


 近づいて看板を見ると、そこは図書館だった。



「図書館か……」



 そういや、俺って就職してから魔導書を読んでなかったな。


 なんか新しい書物が増えてるかもしれない。


 そう思い、中に入る。


 さすが王都の図書館だ。かなり多くの本棚が所狭しと並び、蔵書もそれに伴って多い。


 本棚に付いている看板にはジャンル名が書かれていて、それらは多岐に渡っていた。


 文学、歴史、料理……それらの中に魔法の本棚もあった。


 俺が孤児院にいた時に読んでいた本もあれば、見たこともない本もあった。


 というより、見たことのない本の方が多い。


 そりゃそうか。俺が読んだことのある本なんてたかが知れてるしな。


 これはいい暇つぶしになりそうだ。


 何を読もうか……と考えていた時だった。


 ある本の背表紙を二度見した。



 ――飛行魔法の未来。


 そう名打たれた本がそこにあった。


 えっ!? 飛行魔法!?


 しかもその書き方はもう既に飛行魔法は存在するってことですか!!


 すかさずそれを取って、読書スペースで開く。


 少し読み進めるとやはり飛行魔法は存在していた。


 かなり魔力制御がシビアなようで、習得できるのは一握りなのだそう。


 へぇ、面白い!


 やっぱ魔法らしい魔法を見るとテンション上がるぜ!



「へぇ……ほぉ……ん?」



 またさらに読み進めると、気になる一文がそこにあった。



 ――たかが20数m飛べる魔法に意味はあるのか? 私はこの魔法はまだまだ改良の余地があると踏んでいる。



 と、書かれていた。


 ……


 ……


 ……えっ? 20mくらいしか飛べないの?

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