アメリカのウルトラ計画
以前、ナチスドイツの『シオン賢者の議定書』と『音波砲』、ソ連に関する『ヴェノナ文書』を取り上げたので、今回はアメリカとカナダで共同で実施された『MKウルトラ計画(Project MK-ULTRA)』を取り上げようと思います。
アメリカ側も何だかんだ言ってやることやっています。
まず『MKウルトラ計画』の前段階に『ペーパークリップ作戦』という物がありました。
この作戦は、統合諜報対象局(1945年設立)によって、かつてナチス政権下で働いていた優秀な科学者を募集(スカウト?)し、アメリカ政府のために研究させることを目的に、ドイツからアメリカに連行するというものでした。
スタンリー・キューブリック監督作品の映画『博士の異常な愛情(後略)』に登場する、ストレンジラブ博士も、この『ペーパーグリップ作戦』によってアメリカ政府の御用科学者になった一人でした。
そんな科学者たちの中には拷問や洗脳を専門にしていた研究者たちがいました。
この状況で、中央情報局 (CIA) 科学技術本部によって発案されたのが『MKウルトラ計画』でした。
計画の目的は、表向きは「マインドコントロールの効果を立証するための実験」と称し、化学的かつ生物的な手段を用いたことに留まらず、放射性物質にも着手したことが明らかとなっていますが、これに関わった研究者でさえ「計画の最終目的を知らされてないこともあった」そうです。
この計画は第5代中央情報長官アレン・ダレスの命によってシドニー・ゴッドリーブ(彼の両親がハンガリー系ユダヤ人移民だったのは何だか皮肉な感じです)を先頭に実施されました。
被験者はアメリカ人、カナダ人の中からCIA職員や軍人、医師、妊婦、精神病患者ら当時、特に優れた自白剤として注目されていたLSDを投与する実験が多く行われており、薬物は常に被験者からの事前の同意なしに投与されていた。
例としては、カナダのマギル大学アラン記念研究所では、精神上の問題や精神障害を抱えた患者に対して、本人や家族の承諾を取らずにLSDと精神操縦を伴った実験が行われました。内容は、LSDの投与で患者を昏睡状態にして12時間近くも洗脳テープを聞かせる、通常の30~40倍も強い電機ショックを与えるなど、非人間的なものばかりでした。
実験の結果は被験者に対する影響に個人差が大きくあったようで必ずしも有用とされる物ではなかったようです。
またもう一つの結果として、被験者たちの多くは、失禁や記憶喪失をはじめとした重度の生涯的な障害を抱えることになってしまいました。
この実験は、1960年代末までに、80の施設、44の大学、15の研究基金、12の病院または診療所、3つの刑務所で行われたとされています。
こうした行為は、第二次世界大戦後にアメリカが調印したニュルンベルク綱領に違反していました。
1973年当時のCIA長官リチャード・ヘルムズが関連文書の破棄を命じたものの、辛うじて残されていた数枚の文書が1975年、アメリカ連邦議会において初公開され、物議を醸しましたが、証拠となり得る資料の大部分が破棄されていたため、それ以上の追求ができないというのが現状のようです。
以前、「火のない所に煙を立てるのが都市伝説と陰謀論の常套手段」と書きましたが、この『MKウルトラ計画』を基にした創作物は、結構多くて、小さな火種に大きな煙を覆い被せて、火種自体を見えにくくしているのではないかと陰謀論めいたことを考えてしまいますが、これは完全に邪推ですね。
それにしても、この話は本当に資料が少な過ぎて話が掴みにくいです。別方面から話を掘って行こうとすると、また別の闇堕ちルートに分岐していたり、『人類補完計画』や『デスティニープラン』みたいです。
1 超底辺なろう作家の連載10話目なのでボツネタを供養してみました
2 “ボツの理由” 結構有名な話なので面白くなさそうだと判断しました。それに本文にもある通り大きなネタの割りに資料が少な過ぎます。