古代ローマ帝国の残酷な刑罰の一例
いらっしゃいませ。
ご注文は何にいたしますか?
はい。承りました。
ご注文を繰り返させていただきます。
『罪と罰のセット』ですね。
え? 間違えている?
そんな筈はないはずですが、「 “罪”はいるけど“罰”はいらない」と、いやですね、お客さん“罪”と“罰”はセットになっているんですよ。ああ、はいはい、そうですね。最近では“罪”を犯すと相応の“罰”が下されるということを知らない人もいるみたいですね。
その上何かにつけて自分を正当化して、無自覚に“罪”を犯している方も多いみたいですね。
申し訳ございませんが、お客様。当店は正規の店ですので、“罪”に対しては必ず“罰”をセットにつけているので、“罰”のともわない“罪”をお望みなら、他の非正規のお店へ行ってください。まあ、非正規な分だけお支払いの方も割高になると思いますけどね。
━━と、まあ冒頭からイタい話を書いてしまいました。上の文章は顔を赤くしながら書きました。後で読み直した時に恥ずかしくなって消すかもしれません。
人間社会に法ができた時から様々な残酷な刑罰が考案されてきました。自分は痛いのは大の苦手で、フィクションの世界でも残酷な刑罰のシーンや拷問シーンなどに出くわすと、「イヤイヤイヤイヤ、痛い痛い痛い、無理無理無理無理」とかってなるんですよね。完全なチキンです。
イタリアの観光名所に古代ローマ帝国時代に建設された“コロッセオ”っていうのがあるじゃないですか。英語の発言だと“コロシアム”、男塾用語で言うと“殺シアム”「知っているのか? 雷電!」……すみません。また空気を読まずにイタいことを書いてしまいました。
古代ローマ帝国時代には、そこで剣闘士たちが闘いを繰り広げていて、時には剣闘士vsライオンとかの対戦とかもされていました。
古代ローマ帝国の軍人皇帝ガッリエヌス(在位253年~268年)は、妻のサロニナから、宝石商に騙されてイミテーションを買わされたと聞きました。昔から裕福な貴族たちから金品などを騙しとって武勇伝にして庶民の溜飲を下げるためのアンチヒーロー的なキャラクターはいましたが、宝石商も内心、得意気だったのかもしれません。それに対して皇帝ガッエリヌスは、不正直な宝石商に、その犯罪にふさわしい罰を与えようと決めました。そこでガッリエヌスは犯人を皇帝夫妻と満員の観客が見守る“コロッセオ”に連れて来るように命じました。
恐ろしさに生きた心地がしない宝石商は、ライオンの声が閉じた扉の外から聞こえる空っぽのコロッセオに放り出されました。まあ、ここから予想されるのは、皇后を騙した罪に対しての見せしめとしてのライオンを使った残虐な処刑ショーでしょう。とても長い時間、皇帝は何もせずに宝石商と観客のテンションが高まるに任せていましたが、ついにドアが勢いよく開くと、中から小さな鶏がおどり出ました。そして皇帝は、「その者は、人を騙したので、自らも騙されたのである」と、伝令に合図して王の言葉を宣言させました。
資料には、「恐怖でまだ足がふらついていた宝石商は家に帰されたが、おそらく死刑よりも悪い罰を受けたと確信しただろう」とありますが、一読してこれは皇帝のお遊びの笑い話の一つと読めますが、別の見方ではくライオンの声(皇帝の権威)に怯える宝石商に対して、皇帝から見ればお前は小さな鶏のような存在だと周囲に知らしめ、最大限に相手を侮蔑し、その尊厳やプライド(小悪党にそんな物があればの話ですが)を完全に踏みにじる残酷な刑罰だったのでしょう。
ガッリエヌスが単独皇帝だった頃の古代ローマ帝国というと、それまで共同皇帝だった父ウァレリアヌスが260年にエデッサの戦いに敗れてペルシアに捕らえられ、ローマ皇帝が捕虜されたことによってローマ帝国の権威は失墜し、それによって幾人かの皇帝を僭称する者が現れたり、ゴート族が侵入してきたりしていました。
それだけに上に書いたような、ガッリエヌスの行動は自らの権威を示すためのパフォーマンスだったとも考えられます。
それにしても、宝石商もそんなにチキンなら皇帝の妻に対して詐偽を働くなど、大それたことをしなければよかったですね。