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新スパイ大作戦? 有名スパイと無名のスパイの話

『SPY✕FAMILY(スパイ✕ファミリー)』っていう漫画が流行ってるみたいですね。自分も8巻くらいまで読んでみました。

 たまにはこういうほのぼのとした漫画も読んでみると楽しいですね。


 スパイというと、以前に別名義(無駄人)で『スパイ大作戦? 有名スパイと無名のスパイの話』というのを書いてみましたが、今回も似たような話を書いてみることにします。


 まず、前回でフィクションの世界で最も有名なスパイというと007ことジェームズ・ボンドではないかと書きましたが、それに次ぐのは? というと映画『ミッションインポッシブル』シリーズの主役トム・クルーズ演じるイーサン・ハントではないかなと思います。


 それでは、現実世界で最も有名なスパイというと? というと何だか矛盾した問題のような気がします。何しろスパイというと目立ってはいけないわけですから、無名なほど優秀なスパイと言えるかもしれません。まあここら辺は前回も書いたんですけどね。


 日本関係で有名なところだと、日露戦争中で活躍した“アバズレス”こと明石元二郎や太平洋戦争中に活躍(?)した“男装の麗人”川島芳子あたりですかね、あと忘れてはいけないのは“ゾルゲ事件”のリヒャルト・ゾルゲとかですかね。


 少し話は変わりますが、1930年代から1980年代までアメリカ政府によって実施された極秘作戦“ヴェノナ作戦”というのがあったんですよ。


 この作戦の内容は、“1930年代から1940年代までにアメリカ国内に潜伏していたソ連のスパイたちが、ソ連に送っていた報告などが書かれた暗号文を解読する”というものでした。


 この暗号文の解読は難航を極めたようです。ソ連が使っていた暗号は簡単に言えば一つの暗号文につき一つの乱数表を用いる、というものでした。これは一つの暗号文を読み終えたら、それに用いられた乱数表を破棄することで暗号のパターンが分からなくするという、非常にコストパフォーマンスが悪く、膨大な人員を要するために原理としては可能でも現実には不可能と思われていたものでした。しかし、ソ連はその方法を採用し、ほぼ成功を収めました。


 公開されているアメリカによって解読された暗号文を読んでみると、当時のアメリカは能天気に日本とドイツを倒せば、世界は平和になると考えていたようですが、ソ連はその先の冷戦まで見越して行動していたことが分かります。


 また、このヴェノナ作戦の資料(ヴエノナ文書)を念頭において太平洋戦争後のアメリカ軍の日本占領政策を考えると、いかにソ連の思惑通りだったか思い当たる節が多すぎます。


 このヴェノナ作戦によって判明したアメリカ政府内に潜伏していたスパイまたはソ連協力者は夥しい数に上りますが、今回はその中からハリー・デクスター・ホワイトをとりあげます。なぜなら名前が面白いからです。


 このホワイトはアメリカ政府の財務次官補にまで登り詰め、一時は次期財務長官の最有力候補とまで呼ばれた超大物スパイです。故意の情報漏洩はもちろんのこと、その立場を利用して政府関係の機関にソ連の共産主義スパイが入り込む後ろ楯になるなど、他にも色々メチャクチャやってます。


 日本に対しては実質的な対日最後通牒として有名な『ハル・ノート』の原案作成とかしてます。


 名前はホワイトでも、中身はレッド。


 と、まあここまでが有名なスパイの話で、これからある無名のスパイの話をします。


 1910年代フランスの田舎の厳格な家庭に生まれ育ったマルト・モルイユは両親からの束縛に耐えかねて花の都パリへと出奔しました。


「有名人になって周囲からチヤホヤされたいとか、そのためにスターになりたいとか、アイドルになりたい」とかの願望を抱く自分の美貌に自信がある思春期女子は多いみたいですね。もちろん全員がそういうわけではないですが。


 まあマルト・モルイユがパリを目指した理由がそこら辺だったみたいです。


 パリに着くと、絵のモデルや看護師とか色々な職に着いたみたいですが、性格に難ありというやつでどこの職場も長続きせずに、転々として結局いわゆる春をひさぐ仕事をし始めました。


 ところが、そこに偶然客として来たイギリスのスパイが、マルト・モルイユの美しさと前述したような夢見がちな中二チックな性格に眼をつけ、マルト・モルイユに「パラシュートを使ったエンターテイナーにならないか?」と持ちかけました。もちろんアイドルスターに憧れていた、マルト・モルイユはこれに二つ返事で答えて了承しました。その上イギリススパイから「空から飛行機を撮影したり、パイロットと親密になって情報を聞き出して流したりすれば更なる報酬を渡す」と言われました。


 こうしてイギリススパイ、マルト・モルイユが誕生しました。飛行機に乗れば軍事機密を撮影し、パラシュートで飛び降りれば衆人の注目を集め、鮮やかに着陸すれば喝采を浴び、夜はパイロットと親密な関係を持つといった売国、売名、売○の三連コンボを決めるというマルト・モルイユの生活が始まりました。


 そんなマルト・モルイユがかつて夢見ていたような生活も一年ほどで終わりを迎えます。


 1920年、マルト・モルイユを雇っていたスパイ組織が摘発されてしまいました。当時は第一次世界大戦が終わったばかりで世相にはまだ剣呑な空気が漂っていて、捕まれば大変な目に会うと考えたマルト・モルイユはイギリスへの逃亡を試み、列車に乗り込むと重要書類を切り刻んで窓から捨てましたが、列車が次の駅に着くとマルト・モルイユはあっさり捕まってしまいました。


 偶然にも線路脇で工事をしていたのが元軍人で、降ってきた紙切れに重要な軍事機密が書かれてあったのを見つけて通報していたのでした。


 これで話は終わりかと思いきや、事態は面倒臭いことになっていきました。


 フランス側としてはスパイ組織を摘発したはいいものの、実は同盟国のイギリスの組織だったものだから事態を大事にしたくないという思いになりました。何しろ先にも書いた通り当時は第一次世界大戦が終わったぱかりで、外交問題を誤ると重大なことになりかねません。


 ところが、マルト・モルイユは異世界おじさんの座右の銘「ピンチはチャンス」とばかりに承認欲求を満たすめにまるでタレントが売名目的でにインタビューを受けるみたいに聞かれてもない余計なことまで何でも喋り続けます。その上、マルト・モルイユは自分の背後に大物がいると匂わせたり(もちろん嘘)、大きな陰謀が隠されていると匂わせたりしたので(当然、嘘)、フランスとしては生きた心地がしなかったようです。


 まあ、結局いわゆる高度に政治的な判断というやつで、事件その物を揉み消してなかったことにされ、マルト・モルイユや他のスパイも釈放されました。


 これで今度こそ話は一件落着と、思いきや……芸人ばりの「からの~?」とばかりに話が終わりません。


 これも先に書いたように、無名のスパイほど優秀という理屈を逆手に取ったように、失敗したスパイの方が有名になれると思ったマルト・モルイユは『美しき女スパイの告白』みたいな記事を新聞、雑誌などに売り込んだそうです。


 それにしても「マルト…恐ろしい子!」。いつ爆発するかわかりません。こういう人のことを最近の言葉で地雷系女子というのでしょうか? ……違いますね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >なぜなら名前が面白いからです。 ヽ(・ω・)/ズコー 確かに赤い!真っ赤ですね! そんなに中枢にまで入り込むなんて…ソ連の諜報機関は優秀だったんですね… [一言] 人選は大事ですね。
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