バケツの中の戦争
「確かに違いはひとつです。しかし普段ならば傷つけただけで罪に問われる高級品が特価大廉売される。それは大違いである、と僕は判断いたします」というのは漫画『皇国の守護者』の中の台詞です。
『皇国の守護者』は原作者は佐藤大輔氏ですが、作画は伊藤悠氏が担当されています。
伊藤悠氏はガンダムシリーズの『鉄血のオルフェンズ』のキャラクターデザインを担当されたことでも有名です。
そう言えば『ガンダムSEED FREEDOM』っていう映画がヒットしているみたいですが、自分は残念ながらまだ観れてないんですよね。
以前、某巨大掲示板をウロウロしてたらガンダムシリーズの『水星の魔女』のスレがあったので覗いてみました。
そこで「確かに面白いとは思うけど、これは『ガンダム』である必要あるのかな?」
「お前、ドモン・カッシュの前でそれ言えんのかよw」
「あっさり論破されたw いや、俺の中で『ガンダム』ってなんか“戦争”の中に理不尽に放り込まれた子供たちの物語ってイメージがあるんだよな」
「いや、お前のイメージはそんなに間違ってないぞ」
みたいな会話があり、じゃあ『ガンダム』とは何か? やはり基本的に戦争を舞台にするべきか? みたいな話になっていました。
“大戦”というと日本人の感覚だと“第二次世界大戦”のことを思い浮かべますが、ヨーロッパあたりでは“大戦”というと“第一次世界大戦”のことを指すのだそうです。“第一次世界大戦”によりそれまでの価値観が全てひっくり返ったのだそうです。
「戦死者の平均慎身長を172㎝として換算すると、フランス兵の犠牲者は全体で2681㎞、イギリス兵は1547㎞、ドイツ兵は3010㎞となり、世界中で戦死したすべての兵士を換算すると、15508㎞の長さとなった」らしいです。
ある有識者によれば「歴史家のなかには、戦争が政治の延長であるのは明らかだと述べる者がいたが、この意見に同意せず、逆に政治こそが戦争の延長であり、戦争は本来終わることはなく、ただ形を変えて別の現れ方をするだけだと主張する歴史家もいた」なのだそうです。
ファーストガンダムの舞台は『1年戦争』でした。
前回は『335年戦争』という世界最長の戦争のことを書きましたが、今回は世界最短の戦争とバケツが原因の戦争のことを書きます。
世界最短の戦争としてギネスブックにも載っているイギリスvsザンジバル戦争は、1896年8月27日に起きました。終戦までの時間には「38分」「40分」「45分」の3つの説がありますが、いずれにしても100年以上が過ぎた現在でも破られていない偉大な記録だそうです。
ザンジバルはアフリカ東岸のインド洋に浮かぶ小さな島で、この頃はイギリスの保護国になっていました。島を統治する王は条約によってイギリス領事が任命することになっていたましたが、王位継承の対立候補だった前王の甥ハリドはこれに納得せず、イギリスが任命した王を殺害してクーデターを起こしました。ハリドは自らを王と宣言して、ザンジバルの全権を掌握しました。
これをイギリスが許すはずもなく、駐留艦隊を即座に動かして王宮を包囲しました。ハリド一派に王宮を退去するよう最後通牒を送りましたが、期限の8月27日午前9時になっても退去しなかったため、9時2分にイギリス艦隊は一斉砲撃を開始しました。圧倒的な火力の差にザンジバル軍は手も足も出ず、王宮は火の海となり、9時40分には白旗を上げて降伏しました。白旗が上がった時間については9時45分という説もあり、また、開戦を9時45分という説もあり、また、開戦を最後通牒期限とするか英艦隊の砲撃開始時刻とするかも意見が分かれるところらしいです。そのため開戦から終戦までの時間に諸説存在しているそうです。
次は“バケツの中の嵐”とでも言ったような戦争の話を書きます。
中世のイタリアは小さな都市国家がコラージュのように入り組んでいる状況で、国家間の紛争も絶えませんでした。北イタリアにあるボローニャとモデナもまた、長年の間、一触即発の緊張した状況が続いていました。
そして1325年には、ついに実に些細で他愛ないことが原因で本格的な戦端が開かれてしまいました。発端はモデナ軍の兵士がボローニャ領に入り、バケツを1個盗んだことでした。それに気がついたボローニャ側が怒り、モデナにバケツを返すように要求しました。ここで返しておけば事態は収束したかもしれません。しかし、モデナ側も意地になって返還を拒絶しました。これによって双方とも引くに引けない状況に陥ってしまいました。
ボローニャは32000人の兵士を召集して、モデナ領へ侵攻を開始すします。戦闘目的はバケツの奪還。たった1個のバケツを奪い返すために、国をあげて戦争を仕掛けたのです。これに対してモデナ軍も7000人を動員し、両軍は国境付近で激突しました。かなり激しい戦闘が行われ、モデナ軍は2000人近い戦死者を出しました。しかし、敵の領内侵攻の阻止には成功し、ボローニャ軍はバケツを諦めて撤退することになりました。
この木製のバケツは現在もモデナ市内のモデナ大聖堂に展示されています。その後、ボローニャからの返還要請もなかったようです。
「戦争の結末はいつでも曖昧だ。勝ち負けでさえ白黒がついていない。無駄な勝利、意味のある敗北。そこで死に手足を失う兵にはどちらも同じだが」━━『皇国の守護者』より。
浜の真砂は 尽きるとも 世に戦争の種は 尽きまじ