(難攻不落の)要塞鳴動して鳩一羽
『銀河英雄伝説』っていう小説があるじゃないですか、一応自分は正伝の方は読んでいるんですけど、外伝でも5冊あると知って読むのを躊躇しているんですよ。
それでも、評判がいいので思いきってネットで外伝の1巻を買おうとして、ポチッとしたんですけど届いてみるとその本は、『銀河英雄伝説』外伝の1巻ではなくて、アンソロジー小説集の1巻だったので、泣きそうになりました。
自分はこういうことを、時々やらかします。この前も大人買いした漫画の最新巻を電子書籍でポチッとしたら既に持っている巻をダウンロードしてしまいました。
話がそれましたが、『銀河英雄伝説』の中で難攻不落の無敵要塞“イゼルローン”が重要な役割を果たし、その攻防戦を巡って色々な出来事が起こります。
日本で有名な攻城戦というとやはり“大阪 冬の陣”と“大阪 夏の陣”でしょう。“西南戦争”も有名ですが、戦う前に熊本城は焼け落ちてましたからね。
現在のシリア・アラブ共和国中部の県都ホムスに“クラック・デ・シュバリニ(騎士の城)”という観光名所があります。
この城の保存状態は非常に良く、今日でも昔の素のままの姿を伝えており、軍事的な建築物の見本として、最高のものと考えられているらしく、アラビアのロレンスの言葉を借りれば、「クラック・デ・シュバリニは、手放しで絶賛できる、世界最高の城」なのだそうです。
昔この場所はイスラム教徒の都市ホムスと、地中海東端のキリスト教徒の都市トリポリを結ぶ道路を押さえる重要な拠点であり、戦略的にも大きな意味を持っていました。1090年に十字軍がやってきたとき、岩山が突き出したこの箇所には、クルド族が守っていた小さな城があったのですが、この後、この城はキリスト教徒トリポリ伯爵の手に渡り、それからこの伯爵が、エルサレムの聖ヨハネ病院の騎士(聖ヨハネ騎士団)たちに与えられました。それ以後50年間に、騎士たちは、これを立派な要塞 (クラック・デ・シュバリニ)に仕上げました。サラセン(アジアのイスラム教徒をさすヨーロッパ人の呼称)はこの城を執念深く攻撃しましたが、少なくとも12回撃退した記録が残っているそうです。
それ以前、この要塞には弱点が2つありました。それは正門と、平地から容易に侵入できるようになっている南門の2箇所であす。騎士たちは南門が弱いという問題を解決するために、堅固な城壁を作りました。この城壁には巨大な塔が3つあり、さらに念を入れて、城壁の下を砕石や石材で固め、その厚さは24メートルもあり、城壁の下を掘ろうとしても、まず不可能でした。正門の弱点をカバーする方法は、これ以上に凝った物でした。正門までは、ジグザグで急な坂を、上がって行かなければならないようにしておいて、侵入してきた敵は、何度も集中攻撃を浴びることになるようにしました。ヘアピン・カーブをやっとのことで突破しても、次には肝心の正門が要塞化して待ち受けているという状態は侵入軍にとっては惨めこの上ないものだったそうです。
攻撃しても、いたずらに味方の死者と負傷者を増やすだけですが、だからといって包囲して長期戦に持ち込もうとしても徒労に終わります。クラック・デ・シュバリニは、膨大な食糧や水を貯蔵できるようになっていて、その量は常駐していた兵2000の守備隊が少なくとも1年間、飲んで食って戦うのに充分で、その間に救援部隊の到着を待つことができたのだそうです。
クラック・デ・シュバリニは、難攻不落のように見え、数々の難敵の攻勢をも凌いできました。しかし、1271年にマムルーク朝(1250-1517年)の君主バイバルス(在位1260-1277年)は、十字軍国家を次々と制圧し、あとに残ったクラク・デ・シュバリニを攻め落としにかかりました。
このときには、この城の守りはひどく手薄になっていました。第8次十字軍失敗の1年前だったので、西側から増援部隊がやってくることは考えられなかったからです。その上聖地エルサレム奪還のために城の常駐兵の何割かを動員していたそうです。砦の1握りの騎士団員たちは、傭兵を指揮して頑強に抵抗しました。
同年3月3日、クラック・デ・シュヴァリエに相対し、それから2日のうちに外郭に攻め入ると、同月15日に守備塔の1基を奪取し、30日に内郭口の塔を破って中庭を占領して、31日には南の3基の巨塔による主郭の守備と対峙しました。
奮戦のかいなく多数の同志を失った守備隊は要塞の南の端にある、三個の丸い巨塔から成る正に「最後の砦」にこもって最後の抵抗を試みました。
バイバルスはこれを攻めあぐね、かといって長々と包囲する気もなかったので、奇策を用いることにしました。バイバルスは伝書鳩を使って、トリポリのホスピタル騎士団の団長の名を騙った偽の手紙を送り込みました。手紙の内容は、「援軍を送れないので降伏せよ」、と書かれていたそうです。その命令は守られ、クラック・デ・シュバリニは陥落し、難攻不落と思われた要塞の最後の砦は、一羽の鳩の前に敗北しました。バイバルスは降伏した守備隊を騎士道的に扱い、自由にトリポリに退避させたそうです。
その後、攻城戦で損傷した城郭は、バイバルスの手により再建、修復され、十字軍の礼拝堂はモスクになったとのことです。
話を『銀河英雄伝説』に戻しますと旧アニメ版は劇場公開アニメ3作、OVA本伝(全110話)、外伝(全52話)となっています。この作品は不朽の名作として有名ですが、あまりの話数の多さに見る前から心が折れました。




