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第7話『オリーブの失恋とタイラーの想い人』

「そこへいくと、レンナちゃんはたぶん初恋でしょ。初恋で一生ものの恋愛に発展する確率って低いじゃない。もっとも、レンナちゃんは幸運の星の下に生まれてるんだけど」

「かかる責任はデカいけどな」

「まぁね。それにしてもつくづく運命って不思議よね。レンナちゃん見てると、運命に抗わないで受け入れることで、とんでもない高みにまで上り詰めてく。人や状況もそれについてくる。彼女自身は人を引っ張ってくタイプじゃないのによ? よく、運命と戦うとか立ち向かうとか聞くけど。実は状況に身構えるんじゃなくて、素直になることの方が、ずっと大事だったりするんじゃないのかな」

「素直に、か。大人になればなるほど難しいな」

「いろんな価値を積み上げることが、大人になるってことならね。逆に大人になる過程で、価値を削ぎ落とす人もいるのよね。私はどっちでもいいと思うんだ。生きやすい方を選択すればいい。ただ、私が見る限り――前者はしんどそうで、後者は幸せそうなの。でもってお互い相容れない。そりゃそうよね、反対方向に向かって走ったり歩いたりしてるんだから」

「……なるほどな。わかりやすい喩えだ」

「で、ここで登場するのがエリックよ」

「エリック?」

「私が知ってるエリックは、運命と戦う姿勢を見せない人だった。周りと歩調を合わせるのがうまくて、なおかつ楽しんでた。さっきの話で言えば、大人になる過程で価値を削ぎ落としてきた幸せな人。でも、修法者になったばかりのレンナちゃんに出会った。幼いのに自分より高みにいる人間に。あの時、エリックの運命が大きく揺らいだ。そして、修法者を目指す道を――しんどい道を敢えて選んだ。……今度再会した時、エリックはあのエリックじゃないのかな」

「……エリックはエリックだと思うぞ。あいつが修法者風吹かせたら、俺たちが黙っちゃいないからな」

「あはは、そっか、そうだよね。必死にやってるんだろうけど、ダレてる部分は変わんないのがエリックだもんね」

「——あんたが告白した相手ってのは、エリックだったのか」

「あ、わかっちゃった? うん、若かりし頃にね。あいつといる時間はすごく楽しかったから。でも、あいつのタイプはレンナちゃんみたいな素直でかわいいタイプなんだって思い知って。そこだけが変わらないんだったら、私って何だろう、とか」

「……」

「はは、なんで私、タイラー相手に愚痴ってるんだろう。ちょっと止めてよ」

「悪いこと聞いちまったな」

「いいの、いいの。私が勝手にしゃべり続けたんだから。タイラーも好きな子に想いが伝わるといいね」

「俺は――待つ。そいつが俺のことを好きになってくれるまで」

「そっか、そういうのもいいね」

 そこへ闖入者が。

「ちょっと、さっきから話に入ってこないと思ったら、なに艶っぽく恋愛談義してんのよ」

 こういうことを言うのはポールである。

「えっ、艶っぽかった? ホントに?!」

「タイラーがな」

「えーっ、ヒドい」

「あんたは愚痴ってただけじゃん」

「なにさ、あんたに私の心の機微がわかるの?」

「——あーあ、カワイソ」

「カワイソ、って何?」

「べーつーにー。タイラー、飲み直そうぜ」

 オリーブの困惑をよそに、ポールはタイラーのグラスに頼まれもしないのに、赤ワインを注ぐのだった。















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