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第2話『アース班への配慮とポールの不始末』

 ポールが思わず電卓で験算すると、オリーブが否と答える。

「違う。私が4平方キロメートルで、ナタルが2平方キロメートル」

「4平方キロメートル?!」

 事情を知らない全員が驚愕する。

「すっげぇー! 鳥俯瞰者で4平方キロメートルもカバーできるなんて、聞いたことないよ」

 キーツが素っ頓狂な声を上げる。

「あれって心を拡大しないと大地とつながらない修法でしょうが。炎樹の森の特殊な状況でも変わんないの、そのデータ」

 ポールが思いっきり疑ってかかると、オリーブはあっけらかんと言った。

「平気、平気。レンナちゃんの修法陣があれば100%大丈夫。それに、タイラーが担当なら多少は援護を期待していいんでしょ?」

「——そのつもりだが」

「ほらね、絶対大丈夫」

「……オリーブをアース班に配置したのは大正解だな、マルク」

「いや、そんなつもりじゃなかったんだが」

 アロンに言われて、マルクが頬をポリポリ掻いた。

「ナタルさんの2平方キロメートルが平均でしょう。4平方キロメートルは私もチャレンジしたことがない」

 ランスもしみじみ言った。

「あ、それでアース班には売るほど時間があることがわかったから、私たち以外のメンバーに大半をやってもらおうってことになったの。何ならツリー班を手伝いましょうか?」

「いや――待機してもらって、こっちに残るメンバーの監督をしてもらっていいか? 実は彼らに中継点になってもらって、細々としたやり取りを一括しようと思ってる。ツリー班のリーダーは定例の会合をテレパスで開いて進捗を管理する。同時に緊急事態にも備えようと思ってるんだ」

 マルクの意見に、オリーブが拳で手をポンと打った。

「了解、それはナタルがやるわ」

「えっ」

「頼むぞ、ナタル。現場にもきちんと顔を出せよ」

「文字通り白紙の仕事だからな、ちゃんと起ち上げろよ」

 マルクとタイラーに言われて、ナタルは目頭を熱くした。

「ああ、任せておいてくれ!」

「まぁ、なんでしょ。2人してかっこつけてからに」

 ポールがやっかむと、タイラーが一言。

「俺がナタルの次に危ぶんでるのはおまえだからな」

「おや、どういたしまして」

「自分の不始末をど忘れするんじゃ、先が思いやられる」

「フン、自分を笑うユーモアのセンスがないやつに言われたくないね」

「なんだと、コラ」

 タイラーは拳骨を落とそうと思ったが、舌を出すポールの後頭部を離れたところから空気圧で殴った。

「おごっ」

 ポールの首が前に勢いよく曲がる。

「おのれ、卑怯なり……」

 言って円卓にくずおれる。もちろん演技である。

「……どうしたの、あの人たち?」

 オリーブが隣のルイスに問う。

「それがポールさん、5班の男性メンバーが不参加の理由がわからないんですって」

「あらら、絵にかいたような5班あるあるね」

「自分でもそう言ってましたよ」

「コラそこ! 人の不幸を笑うんじゃない」

 すかさずポールが聞き咎めると、オリーブがあっさり返した。

「わかってんじゃん」

「何をーっ⁈」

 そこでスッと視線を上げて、トゥーラがポールを見た。

「静かにしなさい」

「はい」

 ポールが背筋を伸ばした。

「……絶対、トゥーラに怒られるまで待ってたんだぜ、あいつ」

「こすいわぁ」

 アロンとキーツがひそひそ言い合ったが、ポールは聞いちゃいなかった。目が生き生きしている。

 トゥーラは何事もなかったように会議を進行した。

「次にメンバーの割り振りについて話し合いたいと思います。今のところ、それについて言及したのは北東側に女性を配置しない、ということで。班ごとでも話し合ってもらいますが、都合面で自薦他薦があれば、この場でお願いします」

 何とまぁ、冷静でいらっしゃる、と全員が思った。

 この辺りがNWSの女性メンバーが強い理由なのかもしれなかった。

 トゥーラはこの騒ぎの間に、班名簿もオービット・アクシスで用意していた。

(いつも思うけど、リーダー間で仕事らしい仕事してるのって、トゥーラとマルクだけなんじゃないの?)

 そう考えた自分がちょっと嫌になったオリーブだった。

 会議は次の段階に入ろうとしていた。


















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