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アルティメットマン  作者: 赤坂大納言
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降臨

ムラノとアラタは信じ難い光景を目の当たりにした。


墜落していくイデミツ機を、彼方からやって来た謎の光が包み込んだ。

怪獣も攻撃をやめ、依然厳しい表情のまま光を見つめる。

漂う発光体は一瞬恐ろしいほどの輝きを放った。

その場に居合わせた全員があまりの眩しさに顔を伏せて目を閉じ、開けた。


ゆっくりと目を開ける。

視界に飛び込んできたのは、銀色の巨人だった。

全身が銀色に輝く、圧倒的なまでに神々しい巨人。

観音菩薩のような優しい顔には、月のように優しい光を湛える大きい目が二つ付いている。

まるで長距離ランナーのような、シルエットはスリムだが良質な筋肉が皮膚の下にしっかりとついているのが分かる身体美。

スラッと長い右腕を上にあげて、拳を天に突き上げている。

そして左手にはイデミツ機が掴まれていた。

巨人はゆっくりとイデミツ機を地面に置いて、その後怪獣に向けて構えを作った。


ユリサキは着陸し、地上班の二人と合流した。

「あれはなんでしょうか、本部長」

ムラノ本部長は、巨人に釘付けになっていた。

今まで大型動物サイズ程度の未確認生物なら数例対処に当たったことがあったが、こんなビル十数階分の大きさの生物が地上に立った姿は一度もなかった。

しかもそんな規模の生物が二体いて、かたやヒューマノイドの形状をしている。

「全くわからん......。ただ一つ言えるのは、巨人は我々に敵意がないということだな」

アラタが急に声を出した。

「あ!そういえばイデミツさん!助けに行かないと!」

「「あ!」」

ユリサキとムラノも目の前の光景に注意を奪われていた。

「誠に遺憾だが、怪獣のことはあの巨人に任せ

よう。我々は早急にイデミツ救出に向かう!」

「「了解!」」

三人はイデミツのジェットハイパーに向かって駆け出した。


巨人と怪獣は互いに睨み合う。

どちらが先かは分からない、しかしふたつの巨体は信じられない音をたてながら、初めて衝突をした。

おそらく地球史上最も大きい取っ組み合いが今まさに始められた。

巨人がグッと踏みしめて、怪獣を横へ投げ飛ばす。

怪獣も巨人も『声』を持っているらしく、踏ん張る際に漏れるように、それでいながら力強い独特の『声』を出していた。

戦いの形相は、終始巨人が優勢であった。


巨人の長い右腕からかなり重そうな拳の一撃が

怪獣の左頬を打つ。

怪獣はついに水面にバシャンとその身を倒され、動かなくなった。


三人はついにイデミツ機にたどり着き、救出に成功していた。

「あ、本部長、怪獣がついに倒れましたよ!あのデカいのやりやがった!すっげえ!」

ムラノが巨人の戦いを見ながら頷いた。

多少怪我はしたものの、無事だったイデミツが厳しい表情をしながら言った

「あの巨人、本当に何者なんだ」

「......」

ユリサキは何も言わず、ただただ巨人を眺めていた。


怪獣は完全に弱り果てており、逃げ腰になっていた。

急いで湖の中に逃げ込もうとしている。

巨人が右腕を高くまっすぐかかげると、その肘から先が光を放ち始めた。

「あの光はなんだ」

イデミツが呟く。

「やつ、怪獣に引導を渡すつもりさね......」


光が溜まった右腕を怪獣に向ける。


『デァッ!!!』


集まった光が、一直線に怪獣へ放たれる。

ものすごい熱量の光線は、怪獣の背中へ当たり、そのエネルギーに耐えきれなくなった怪獣は最後の雄叫びをあげ、爆発四散した。



霞ヶ浦にあった二つの巨大な影は、一つのみになったのだった。


「やった、勝ちましたよ!本部長!我々の勝ちですよ!」

アラタは無邪気にはしゃぐ。

「我々ってな、お前、楽観すぎだろ」

「まぁそう言うな、イデミツ。彼が君を救ってくれたのは間違いない事実だ」

「そうですよ、イデミツさん。もうわたしヒヤヒヤしてたまらなかったんだから!」

ユリサキはぽかっとイデミツの方を軽く叩く。

バツが悪そうにはにかみ、巨人を見るイデミツ。

「しかし、ヒロセは結局......」

職員全員が、湖底に無惨な姿で頓挫したジェットハイパーを思い出す。

ムラノは重い声で言った。

「科学特別捜索本部で初めての殉職者を出してしまった。私の責任だ......」

「でもわたし、何故だかヒロセさんは生きている気がしちゃうんです。」

「いやねユリサキさん、その気持ちは痛く分かるつもりだよ」

「アラタさん、わたし冗談とかそういうんじゃないんです。何か心に引っかかるというか」


「おぉぉぉぉぉぉいい!みんなあああ!」


四人は、聞き覚えのある仲間の声が聞こえた。

「ほら、ユリサキがそんなこと言うから俺幻聴しちゃったよ」

「ふっ、不思議だな。私にも聞こえた」

「あれ本部長もですか、俺も聞こえますよ」


「おぉぉぉい!!!こっちこっち!」


さすがの一同も声のする方へぱっと振り返る。


なんとヒロセが元気にこちらへ走ってくるではないか!

『い、生きてた!』

そうしてようやく全員が合流することができたのだった。

「お前生きてたんだな!なんて悪運の強いやつだ」

「元気も元気、五体満足ですよ本部長」

「しかし、今までどうしてたんです?ジェットハイパーだってあんなんなっちゃって」

アラタがみんなが知りたいことを聞いた。

「『彼』が助けてくれたんですよ、イデミツさんの時みたいに」

「あぁ『彼』ね、あの巨人はすごいなまじで」

ユリサキが割って入る。

「みんな知ったように『彼』っていうけど、結局あの巨人は何なんです?」

「遠い星の友人みたいなもんですよ」

「ヒロセさん、お話でもしたの?」

「いやお話っていうほどでもないですけど」

「名前つけましょうよ!彼って言うのも何だか分かりにくいわ」

「名前なんかどうだっていいでしょうが」

「まぁまぁ、いいじゃないかイデミツ。名前は付いてることに意味があるんだ」

五人は名前を編み出すために、ウンウン考え始めた。

「究極の人間なんだから、アルティメットマンくらいでいいんじゃないですかね、え?」

アラタがぽっと呟いた。


アルティメットマン。


「アラタらしく安直だが、ヒーローっぽくて私は好きだな案外」

「まぁなんでもいいや俺は」

「いいと思います、正直考えるのめんどくさいですし」

「アルティメットマンか......」

ヒロセはたった今名付けられたもう一つの名前を噛み締めていた。


人類が遭遇した地球外生命体の二例目。

銀色に輝く謎の巨人。

彼の名はアルティメットマン。

これから起こる出来事にどう関わっていくことになるのか。

物語は続く。



一方で、地球に異物が入り込んだことを察知した「ものたち」が地底で、海底で目を覚まし始めていた。

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