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悪役令嬢は幸せになるために悪い女になる。

作者: まぁ

息抜きで描いたのが思ったより長くなりました。

最後まで読んでいただけたらうれしいです。

今まで何度も何度も比べられてきた。

何故清楚で華奢な姉じゃなく、地味で顔もキツイ、スタイルも良くない女が未来の王妃になるんだと。



そんなのは私だって思っている。

姉が社交界に自分によく似合う素敵なドレスを着て、笑顔で彼と踊ってるのを見るたびに。



自分を見るたびに思う。

姉とは違う、クセのある髪を未来の王妃としてだらしなくないようにとキツク纏められた髪はまるで女官のよう。

私だって流行りの緩いヘアスタイルにしたい。


ドレスだって胸とお尻が大きいのはだらしないからと、

お腹に布を巻いてコルセットをし、首の上までしっかり布のあるドレス。

周りはこのドレスをメイドやシスターのようだという。



私には歳の近い女の子の友達は出来なかった。

2歳上の姉が、私が王太子妃教育で忙しいなか、お茶会で私が厳しいと。妹と仲良くしたいのに拒絶されている。

姉と王太子は元々恋仲だったのに、姉が病気で婚約者になれず、妹がなったと。いまだに2人は思い合っていると。お茶会の場で何回も伝えたらしい。

すると周りの少女は同情し、姉を応援し、私は2人の愛を邪魔する悪役らしい。



確かにその話は正しいのだろう。

姉は昔体がすごく弱かった。よく寝込んでいた。

そして姉と同い年の王太子はよくお見舞いに来ていた。

元々は生まれた時から2人は婚約するはずだったのだ。

だがその弱い体では王太子妃または、王妃としてやっていけないと私に役割がきた。


姉は決まった時にこちらを凄い顔で睨みながら絶叫をあげていた。…だけど私も泣きたかった。誰が姉のことを愛している男と結婚したいものか…。

何故こんなに辛い思いをしなきゃいけないのか分からなかった。毎日夜遅くまでの勉強。同年代の友達は出来ず、遠巻きに悪口ばかり。自分の好きなおしゃれも出来ずに。

別に好きでもない人に嫁ぐのにこの理不尽。

何度心が折れかけたか…。


でも味方はいた。

王妃様はすごく優しくて、いつも会うたびに心配してくれた。王妃様がすごく好きだったから、王太子妃教育という言い訳のお茶会がとても楽しみだった。

王太子と結婚をしたら王妃様の娘になれると。それだけが救いだった。


王弟殿下のユリアン様も味方だった。

王様とは歳の離れたご兄弟で、私とは5つ違う。

いつも自然と甘やかしてくれて、兄がいたらこんな感じなのかと。…好きな人になっていた。

ユリアン様が、こんな地味で野暮ったい私を見ても、いつも私のことを褒めてくれた。きつく纏めた髪でも、少しでも変えて結ってみればすぐ気づいてくれた。


婚約者の王太子なんて常に姉ばかり見ているから何も気づいていないだろう。

現にエスコートの際も褒められたことなんてない。


昔はまだ違った。子供の時は、姉が1番ではあったが、ちゃんと私のことを褒めたり、可愛がってくれていた。


…婚約者になんてなりたくなかった。



――――――――――――――

終わりの見えない悪夢な人生が終わったのは突然だった。


王妃様とのお茶会終わりに王妃様が自分で手入れをしたりデザインしている庭園がとても美しく見頃だと言われ、一緒に見に行かないかと誘われた。


王妃様と一緒にいる時間はとても幸せで、自分を偽る必要がなく、少しでも一緒にいられるのが嬉しく即答していた。


色とりどりのバラが咲き誇る庭園のさらに奥にいったところで問題が起きた。最初に気づいたのは王妃様だった。



『私の庭で何をやっている?この愚息が。お前の婚約者は誰だ?何故他人が私の庭にいるのだ?婚約者が勉強している中お前は何をやっている?』


王太子と彼の膝の上に座っている姉は、顔を真っ青にしていた。


『母上の庭に勝手に入ったのは謝ります!ですが!俺はディーを愛しているのです!昔から結婚するのはディーだと思っていたのに。もうディーは元気になりました!リリティアが婚約者である必要はありません!』


『それに母上!リリティアは同年代と社交ができていません。その分ディーは友達が多く、社交界を引っ張ることができるでしょう。それに…ディーのような美しい娘の方が平民達も王妃として喜ぶでしょう。』


『本当にお前は阿呆だ。リリーが同年代の友達ができない理由を調べもせず、美しさすら気づかないとは。この美しさを隠している理由すら知らないのだろう。すぐに気づきそうなものを、よかろう。私からこの婚約をリリティアからディアスに変えることを王に話そう。これでもう後戻りは出来ぬぞ。』


『母上!ありがとうございます!』


『感謝します王妃様!これで私とルルは結婚できるのね?嬉しいわ!王妃様、私がルルを支え立派な王太子妃になると誓います!』


『ふっ…そうだな。なれるといいな。行こうリリー。ここの空気は最悪だ。』



――――――――――――

あの後家に返された私は、父に呼ばれ最終確認をされた。

そして婚約は姉のものになった。


姉は未来の王妃として忙しくなるからと私の侍女が半分になった。

私付きの侍女だと思っていたが、嬉しそうに姉の元に向かっていったのを見て何とも言えない気持ちになった。


残ってくれた侍女達は何故だか、とても喜び、ドレスや髪飾り、小物類をどんどん買い、今まで着ていたものたちをどんどん捨てていった。



―――――――――――

気づいたら3ヶ月もたっていた。

傷物令嬢として社交界を休み、今までよく頑張ったと父と母からねぎらいの言葉をもらい領地でゆっくり休んでいたのだが、姉と王太子の婚約披露パーティーがあるということで、私は家族として参加せねばならないらしい。



今まで着ていたドレスは全て捨てられてしまったしどうしようかと思っていたら、ユリアン様がなんとエスコートしたいとドレスと共に手紙を下さった。


今まで着たことないようなドレスで恥ずかしくもあったが、好きな人が自分のために用意してくれた特別なドレスなので、ドキドキしながら了承の返事を出し、パーティーの日を楽しみに待つことにした。




―――――――――――――

私とディーの婚約披露パーティーは幸せの絶頂で終わるはずだった。この時をずっと望んでいたから。

パーティー終盤にユリアン様と一緒に入ってきたリリティアを見るまでは。


皆が注目し、目が離せなかった。

透き通る金色のキラキラとし、緩やかにカーブを描く美しい髪も。

伏せ目がちの長いまつ毛の奥に見える、美しい紫色の瞳も。

美しい体のラインにピッタリとしたドレスも。

何もかもが美しく、女神が現れたのでは?と錯覚した。


一眼で恋に落ちた。


あれが…リリティアだと?そんなはずない。

リリティアはもっと地味で、スタイルだってもっと寸胴だった。それが…何だあれは?あんな美しさを隠していた?


ピシッ!!


隣を見るとディーの手に持つ扇子が折れていた。

顔も恐ろしいくらい睨んでいた。


『ディー?』


油断した油断した油断した!

私が王太子妃になったからってリリティアの監視を緩めた!

リリティアは私より昔から優れていた。

見た目も頭の良さも何もかも!


私は体が弱かったから比べられなかったけど、父や母、王妃は気づいていたのだろう。


でも許せなかった!私が1番じゃないなんて!

ずっと王太子妃になると思っていたのに!

リリティアだけには負けたくなかった。

だから私に崇拝気味である侍女何人かを、リリティアの侍女に潜り込ませた。リリティアが地味に野暮ったくなるさまは、とても気分の良いものだった。


後もう少しで全てを手に入れられたのに!

悔しい悔しい悔しい!


それにリリティアのエスコートの相手ユリアン様じゃない?

誰も相手にせず、冷たい眼差しで一刀両断する氷の貴公子。

私だって相手にされなかったのに何で?

ユリアン様の色を纏って笑顔で歩いているの?


許せない!!


『ここで皆に話がある。』


王様がとてもよく通る声で話し始めた。


『今まで第一王子ルルーシュを王太子とする予定ではあったが、この度王弟のユリアンを王太子とする。後日立太子の儀をするためまた皆には集まってもらいたい。そしてユリアンとシトリン公爵家のリリティアが婚約する。後日また婚約式も行う。

そしてルルーシュはディアスと婚姻しシトリン公爵に婿入りすることになった。』


『…父上?父上!お待ちください!どういうことですか?』


『ルルーシュ。今言ったことが全てだ。お前とユリアンどちらが王として相応しいかずっと見ておった。その結果ユリアンは沢山の功績を残した。お前は何をした?何もしていないだろう。ただそれだけだ。これからは公爵になる勉強をするように。』


嘘だろ?

俺が公爵?王になるはずの…俺が?

王にもなれずリリティアも手に入らない?

俺には…何も残らない。



嘘よ!信じられないわ!!

ルルが王にならなくて、リリティアは王妃になる?

私はまた負けるの…。



………後日ルルーシュとディアスは王族に謀反を起こそうとしたとして、国外に追放された。

起こす前だったことと、人が集まらなかったことから、追放の刑となった。

何もしなければ公爵となれたのに、追放ということで2人は平民となる。今まで働いたこともない2人が…。

きっと楽には生きていけないだろう。




―――――――――――――

『リリーどうしたの?外なんか見て?』


「ユーリ?…中庭を見てたの。ユーリ、私悪い女なの。」


「全てわかってた。姉が私を貶してたのも。美しくならないようにしてたのも、社交からも遠ざけてたのも。全部わかってたけど、あえて利用してた。」


「ちゃんとしたら、ルルーシュに好かれるって知ってたの。でも私はユーリが好きだったから全てを利用した。…あの日王妃様が中庭に連れてってくれたのも私が誘導したの。中庭にお姉さまとルルーシュがいるのを知ってたから。」


「悪い女でしょ?…ごめんなさい。…幻滅した?」


『そんなことで幻滅するわけないよ。何年片思いしてると思ってるの。悪い女なリリーも大好きだよ。』



「ユーリありがとう。私も大好きよ。」



姉と王太子の愛を引き裂く悪役令嬢は幸せになるために悪い女になる。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

感想聞かせて頂けたら嬉しいです。


また次回作で会えたら嬉しいです。ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく良かったです!
[一言] 利用していたということであれば,「残ってくれた侍女達は何故だか、とても喜び」というのはちょっと違和感。理由はわかっているはずだから「何故だか」ではないかなと。 第一王子の方は,まぁ,王族が…
[一言] シンプルなざまぁで良かったです。その後のルルーシュとディーがどうなったのか、2人の関係は維持されたのか拗れたのか等の描写があれば個人的には気になりました。
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