表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失敗少女  作者: 鬼京雅
14/21

14話・過ぎ行く日々


 モンスターになった武田との戦いに勝利した失敗少女。


 魔女に心の闇を操られたテニス部一年エースだった武田は、成功の全てを具現化させたモンスターになったが倒され、現在記憶を一部失って入院している。


 戦闘をした建設現場が半壊したが、魔方陣による浄化魔法で武田は一命を取り留めた。成功少女の裏で暗躍してた魔女が現れ、対立する王子は魔女との近いうちの決戦を予感していた。



 モンスターを倒した失敗少女である絵空は、先日の戦いを思い出しながら自宅の部屋で王子と話していた。王子特性紅茶とお菓子の匂いが絵空の部屋に満ちている。紅茶を飲む絵空は気持ちを落ち着かせてから話し出す。


「……この前の戦いで被害を受けた建設現場はある程度修復されたようだし、武田君も記憶障害があるけど無事で良かった。あの時現れた魔女は早く倒さないとならないね」


「魔女復活祭を目論む魔女は、現代に受肉して世界を自分の都合の良いようにしようとしてる。それを阻止できるのは僕の失敗少女である君だけだよ。けど、魔女よりも先に魔女の剣である成功少女を倒さないとならない」


「魔女を同時に倒すよりも、まずは成功少女を倒さない……か。確かに成功少女を倒せば、魔女は協力者を失うね。サクセスガールで一位の人間の力を」


 現在もサクセスガールサイトは問題無く運営している。


 肥大化した欲をサクセスガールの奥にいる魔女は食っていた。失敗少女を倒すべく、魔女の相談を受けながら成功少女はサクセスガールに魔力を送ってもいる。


 確実に魔女を現代に復活させる為に――。


 王子は絵空の暗い表情が最近気になっていた。もし、魔女復活祭の時に戦闘意欲が欠けていたら敗北は必死だからでもある。


「ねぇ、絵空。もう黒宮さんは学校には来ないと思う?」


「お互いの正体もバレてるし、芸能人としての活動を優先してるから来ないでしょ。もう、私達は戦って決着をつけるしかないよ」


 あれから、黒宮は芸能活動を進めている。

 グラビアの仕事だけではなく、バラエティ番組などにも出演していた。

 より強い生きた魔力を奪う為に成功少女として芸能人の成功を奪う作戦に出ていたのである。そういう事があっても、世間は一発屋で燃え尽きたとしてそこまで取り扱わなかった。

 その為に、今は芸能人の成功を見捨てる事にするしかなかった。


「芸能人の被害は心配だけど、絵空は無闇に関与しちゃダメだ。今は大局を見据えてまず、成功少女が魔女を現世に復活させる時を待つしかない。その時が魔女を倒せる唯一のチャンス」


「そして、その時しか成功少女の失敗を救う事も出来ないのね……」


「我慢出来るかい絵空?」


「仕方無いからね。今は……魔女の復活を阻止しないといけないから……」


 紅茶のカップを強く握り、その紅い水面に映る自分の顔を見た。

 この間、絵空も失敗少女として悪魔コモンやモンスターなどを倒している。

 直接的に黒宮を狙わないのも、黒宮を狙っても魔女が見つけられないと意味が無いからである。魔女は最悪、今の成功少女を見捨ててしまう事も可能なのだ。


「今後は諸悪の根源である魔女のいるマジックサーバーを見つけないといけない。このままだと、サクセスガールに投稿した本人達までも、サーバーを介してサクセスゲットされる可能性があるから」


「そのマジックサーバーさえ見つければ、魔女復活祭の場所もわかるという事ね。やるしかないよ。やるしか」


 冷めてきた紅茶を一口飲んだ絵空は言った。

 その顔にはまだ前ほどの気迫は無い。

 やはり、魔女を目にして気圧されている部分があるようだ。だからこそ王子は敢えて言う。


「絵空。僕は自分の現世への具現化に魔力を使ってるから、戦闘においては自衛ぐらいしか出来ない。だから戦闘は失敗少女である君に託すしかないよ」


「わかってるよ。私はまず成功少女を倒す。そして、王子は魔女を消滅させる事を考えてくれていればいい。全ての失敗は私が絵空事にしてあげるんだから」


「君は歴代の失敗少女の力をかなり扱えている。素晴らしい逸材だ。安心していい。君の代で僕と魔女の戦いは終わる」


「あ、それなんだけど。その歴代の失敗少女の事とか聞きたいんだけど……?」


「……そうだね。じゃあ、どこかで話そうか。少し気晴らしが出来る所が……」


「なら、ここに行こう」


「ウミ……パラ?」


 突如、絵空はテーブルの上にある雑誌の表紙に指を指して言う。そこには、ウミパラダイスという海の生き物がいる水族館があった。そんなこんなで、二人はウミパラデートに行く事になったのである。


(やれやれ、まさか僕が誘おうとしていたデートを誘われてしまうとは。やはり絵空は強い。このままなら成功少女も、魔女も倒せるね)


 自分の心配も無用のものだと思った王子は微笑む。快晴市の水族館・ウミパラデートに行く事に決めた二人は雑誌を見ながら話した。



 そんな話をしている最中、とあるフリーカメラマンが入院中の武田の取材に来ていた。ただ一人、高層ビル建設現場を事件として見ていた。これは失敗少女の失敗ではないか? と怪しまれていたのである。


 そして、絵空と王子がウミパラデートに行く日になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ