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第6話 吸血鬼は反撃する

――だから金持ちの息子ってのは嫌いなんだよ。自分のものでもない親の権力を使って威張り散らす。

嫌なことがあれば親に言い罰則を与える。


『マア、ソンナモノデショウ。シカシ…コノママ立チ去ルノデスカ?』


――いや?一発くらいボコしてから帰るけど?


『ソレハ不可能デス。アナタノ筋力値…近接攻撃力ハ到底彼ラニハ及ビマセン。デスカラ…』



――ふうん…できんのかね。ザコモンの俺でも?






とりあえず、【解析者】のアドバイス?を実行してみることにした。

方法は簡単、魔法を使って仕返しをすると言うものだ。

だが俺は使い方を知らない。そこで【解析者】に訪ねると『感覚デ行ケマス』。とのこと。なんか雑じゃねえ?


「おいおい、なんだ?俺達が怖くて足がすくんじまったのか?ひゃあっはっはっはっ!」

「はっはっは!」


うるさいうるさい、集中しろ。俺。

この世界で初めての魔法なんだ。一発きれいに決めて、周りから尊敬の眼差しで見られるようになろう。


まずは、手先に何か柔らかいものを持っていてそれを軽く握る感じって言ってたな。



ぐっ…。



おぉ、何も持っていないはずなに何か感触があったぞ。よしよしで、それを一気に上に持ち上げてっ。


「よいしょっ…」

「「「「な…」」」」


ずごごごっ!っと音がして石を持ち上げる。

よっしゃ!成功っぽいぞ?俺才能あるんじゃね!?


と、待望の眼差しで辺りを見回す。


しかし、周り人達はそれを見て絶句していた。


――はて…、俺が石を持ち上げたことがそんなにおかしいのか?


『…持チ上ゲテイル物ヲヨク見テクダサイ。ソウスレバワカリマス』


――見る?えっと…


「へ?」


あれ?俺は石を持ち上げたはずだよな?

…だが…俺が指を触れずに持ち上げているのは…




巨大な土の塊だった。




しかも、ご丁寧に俺のすぐそばにボッコリと土の塊と同じサイズの穴が空いていた。



――あれ?俺やらかした感じ?


『…イエ、ヤラカシテハイマセン。確カニアナタが使ッタノハ【浮遊】デス。シカシ、アナタノソバニハ奇跡的ニ【浮遊】ノ対象トナル物ガ無カッタノデス』


――それで代わりに地面がすっこぬけたと。


はぁ~。


…魔法ってややこしいな。


「おいおいおいおい!なんだよあれ!」

「俺だって知らねえよ!」

「逃げるぞ!」

「おう!」

「覚えてろょぉぉぉ!!」


だが、一応効果はあったようだ。例の三人組は目を白黒させて一目散に逃げていった。

一瞬『タノビ』と目が合ったのは気のせいだよな?


「ぃっしょ…」


まあそんなことはさておき、引っこ抜いた地面を元通りにはめ込む。幸いなことに引っこ抜いた土の塊にはダメージが無かったためほぼ、今まで通りに収まった。


「さて、そろそろナーサが帰ってきそうだし…帰るか…」


周囲の人達は引っこ抜いた地面と俺のことを交互に見やり、しばらくして何事も無かったカのようにして各々の生活に戻っていった。


「…にしても…まさか地面ごと抜けるとは…」


ザコモンの俺が地面を引っこ抜いてしまったら人間には立場はないわな。


どうだ、泥団子投げられてる時に反撃してくれなかった罰だわ!




「…ただいま…」


しばらくしてナーサの家についた。慣れぬ魔法など使ったからであろうか。体中の倦怠感がひどい。


「おぉ…お帰り。あれ?ナーサは?ティアーシャ一人かい?」


ほんの数秒、傘をたたんで待っていると、たたたたたっという疾走音と共にナーサの旦那、ルントが現れた。


「ナーサは…服屋の娘を看病してる」

「看病?なんかあったのか?」

「服を…着替えたら倒れた…」


そう言われ、俺の顔と服を交互に見やった。


「何が起きたのか、いまいちわかんないけど…似合ってるな」

「ルント、涎垂れてる」

「はっ!」


どいつもこいつも、俺のこと見るたびに甘い顔しやがってよぉ。少しはナーサを見習おうぜ?


「しばらくしたら帰ってくると思う…だから…」

「だから?」


ルントはゴクリと唾を飲み込んだ。


「その…」

「…」

「料理を作っているところを…見せてもらえないだろうか?」

「なっ!」

「残念…ルントの考えている通りにはならなかったね」

「やかましいわ!…で、なんで厨房なんか見たいんだ?」


ルントは頭をぶんぶん振り問うてきた。


「いろいろと…どんな食材が使われているのか見ておきたい」

「それだけ?」

「だめ…?」


と、いうのも。俺が吸血鬼である以上、いつボロを出して追い出されるかわかったもんじゃない。

もし仮に追い出されたとして食事はどうする?どこか、村がや街がない限り人や動物の血液を飲むことは不可能だ。動物なんて今の俺には殺せるかもわからん。

だから、どこかにたどり着くまでに生き延びることが出きるよう今のうちから食べられる物を知っておくのだ。

できれば山菜料理や魚料理を教わりたい。


「いいぞ、俺の知ってる限りで教えるよ。…その内、知識量がティアーシャに負ける気がするけど…」


ルントは苦笑を浮かべて後頭部をわしわしとかいた。


「じゃあついてきな。俺の厨房に案内するよ」

「…よろしく頼むよ」







「さ、ここが俺の厨房だ」

「おー」


ルントと一緒に家の中をぐるりと回ってたどり着いた彼の厨房。入る前からいい匂いが鼻腔をくすぐっていたが、二つの内開きのドアを開けるとそれがいくつも混じりあって最終的に素晴らしくお腹を空かせる香りに変化した。


「料理長!お帰りなさいっす!…?その娘は?」


黙々と料理をしてい数人のコックの中の一人がこちらに気がついて口を開いた。

おいおい、マスクしろよ。


「あぁ、この娘はナーサが洞窟から助けた娘だよ。名前はティアーシャ。どんな料理を作っているのか興味を持ってくれてな、見学したいそうだ」

「そうなんすか!いやはや、なんとも可愛いですね!」


でれ~んと、砂糖たっぷりのチョコレートクリームよりも甘い顔をしてこちらを見つめるコック。

涎!おいコック!涎!


「よろしく…」

「よろしくっす、俺はシュイ。ここで修行を始めて二年目っす」

「おいおい、嘘つくなよ。まだ一年と半年だろ?」

「ちょっと言わないでくださいよ!」


男達の笑い声が厨房に反響する。それを耳にして、残りのコックもようやく俺のことに気がついたらしい。


「料理長!仕上げお願いします!」

「料理長!今新作を作ってて…味見してもらってもいいですか?」

「料理長!誰ですか!その娘!まさか隠し子ですか!?」


なんだ、ナーサの前だとただの弱々しい男かどうかもわからないやつだったのに…意外と慕われているんだな。


「誰だ隠し子なんて言ったのは」

「…誰だ…」


だが、少なくとも俺はこいつの血なんか受け継ぎたくもない。飲むのも嫌だ。弱っちいし。



「ひいぇぇぇ!その娘、料理長よりも殺気だった目してますよぉぉ!?」

「…そんなに…俺の子供だって言われたくないのか…すこし悲しくなるぞ?」


ルントは潤んだ瞳でこちらを見てきた。


…本当に料理長なんか?こいつ。


「この娘はティアーシャだ。そこの採掘用の洞窟で『例のあの二人』に追われているところをうちのナーサが保護したんだ。今日はうちの厨房でどんな料理が作られているか、見たいと言ってくれたんだ。さあお前達!ティアーシャに恥じない仕事をするぞ!」

「「「はいっ!!」」」


息ぴったりなコック達。これなら料理の腕も期待できそうだな。

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