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現状最弱の吸血鬼に転生したのでとりあえず最強目指して頑張ります!  作者: あきゅうさん
第7章 絡み合う二つの世界
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短話 トコル編




一番強いチームは何処だろう、そう聞いた時誰もが口を揃えて言った。

――ナーサ達のチームだろ。あそこに勝てるのは誰もいないって。



人間とは思えない怪力と巨体で敵を屠るナーサ、芸術品のように美しく、しかし前線で己の負傷を躊躇わないティアーシャ、百メートル程であれば標的を外さない弓の腕前を持ち、医師の資格を持ちメディックとしてサポートするトゥルナ、短槍を舞うように振るい長耳族としての戦闘センスや直感を駆使して戦うヘデラ。

そして長距離近距離のどちらでもこなせる小人族のハーフ、トコル。



――



「よ、久しぶり。トコル」

「あー、ティールか。久しぶりだね」

ルントとナーサの店の隣で小さな武器屋を営み始めたトコル。久しぶりにティールが顔を出すと煤だらけのゴーグルを外してトコルが満面の笑みを咲かせた。

「どうかした?何か用?」

「ああ、一本短剣を作って欲しくてさ」

ずかずかと工場に入り、トコルの傍にあった木製の小さな椅子に腰掛けるティール。

「…………仕事で使うの?」

トコルは一瞬顔を曇らせたが直ぐに笑みを浮かべて彼女の隣の椅子に腰を下ろした。

「うーん、まあそんな所。護身用程度だけどな。あれ以来まともに剣は触れないんだけど」

「見せて」

ティールが手を差し出し、トコルがその手を掴んで目を見開いて観察する。

「握ってみて」

「これが限界」

ぐっと力を入れて手を握ろうとしているのは分かるが、その手は小刻みに震え手が閉まりきらずにいた。

「ははあ……、私はトゥルナじゃないからねぇ。こういうのに関しては専門外なんだけど。やっぱり大変でしょ」

「まあ……、飯食うのが大変だな。俺は箸派なんだけど、しっかり握らないと使えないからさ。いちいちソウカに()()()されるのも嫌だし。フォークとかスプーンで試行錯誤してるよ」

「だろうねえ」

トコルはうーん、と少し考え込んでから腰のポーチから小さなメモ帳を取り出した。

「少し考えてみるよ。今注文が入ってるやつが終わったらで大丈夫かな?」

「おう、急ぎじゃねえからな」

「じゃあ完成したら連絡するよ。()()でね」

トコルはズボンのポケットから黒色のスマホを取り出した。

「また分解するなよ、修理代高ぇんだから」

「ごめんごめん」

何故トコルがスマホを持っているのか。

ティールが何気なくスマホをぽちぽちと操作しているとトコルが欲しい玩具を目にした子供のように目をキラキラさせて見て止まなかったからだ。

まあトコルならば上手につかえるか、と財布を叩いて買い与えてみたのだが彼女はそれよりも設計の方に興味があったらしく初日で分解してバラバラにしてしまった。

さすがに彼女といえど初見でその内部構造を見破るのは無理があるようで泣きそうな目でこちらを見て座り込んでしまっていた。

明らかに事故では無い壊れ方をしてしまっていたので不良品になる訳もなく、実質二つ目を買ったのと同じ値段になってしまったという訳だ。

それ以降は彼女も丁寧にそれを扱い、今では現代人と同じくらいには使いこなしている。

何でも最近はスマホでRPGをするのにハマっているらしく、弟のルコ曰く暇があればお魚をドカーンしているらしい。

ちなみに、スマホにはティールが細工をし電源を着けると内部に()()()()が開き回線が繋がるシステムになっている。

もちろん回線代はティアーシャ負担である。さすがにWifiなんて引けないため通信代がかさみ、彼女の財布がどんどん苦しくなっているのであるが……、まあ稼ぎがいいのでそこまで気にしてはいないらしい。



「そんじゃ」

「はーい、お仕事頑張って」

店を後にするティールを見送り、トコルは再びゴーグルを掛け鉄を打ち始める。

真っ赤に焼けた鉄が鎚に打たれ、火花を散らす。

鉄を打つ時、彼女の集中力は頂点に達する。

――ねえトコル、私達と一緒に来ない?

脳内の静寂の中に、昔に聞いたその声が反響していた。




―――



「ねえトコル、私達と一緒に来ない?」




「…………え?」


鉄を打つ手を止め、トコルが顔を上げる。

「それって君達のパーティに入れってこと?」

「そ、話が早くて助かるわ」

ティアーシャが笑みを浮かべると、トコルはふるふると小刻みに体を震わせてやがて腹を抱えて笑い出した。

「私が!?あなた達のパーティに入れって!?あははははっ、冗談キツイって……!!なんのドッキリ!?」

私みたいな何処にでもいる鍛冶屋なんかにその言葉は勿体ないよ、とゲラゲラ笑うトコル。そんな彼女を見て、ティアーシャは表情を変えず静かに頬杖を着いていた。

「私知ってるんだよね~。君が密かに作った兵器の実験してること」

「……え」

一瞬トコルの顔が蒼白に染まる。

「な、ななななんの事?私はただの鍛冶屋だよよ??私が作った武器を使うのは君達冒険者であってそんな私が使うなんて冗談は……!!」

「ふぅ~ん、良いんだ?じゃ、冒険者協会に念の為言っておこうかな~?無断討伐ってね」

「あ、あううう……」

段々と縮こまっていくトコルを見て非情にもティールはカラカラと笑った。

何故トコルがこんなにも取り乱しているのか。実は、冒険者協会のルールには『依頼を受けた者以外が正当な理由無しで魔物を狩るのは違法である』というものがあるからである。主に魔物を狩って収入を得ている者からしたら冒険者ではない赤の他人からその魔物を狩られてしまっては食いっぱぐれてしまう。

よって冒険者の収入を保護する為、このルールが存在しているのだが。

トコルはこのルールに思いっきり離反していた。

「……だ、だって……。理論値だけで見るのと性能をしっかり実戦で確かめるのじゃあ全然違うし……」

若干涙ぐみながら、トコルはふるふると震えていた。このまま自分は協会まで突き出され、何か罰を受けなければならないのか。

「ま、幸い君が戦っているのところは私しか見てないからね。君が私を口止めすれば君はこれまで通り平和に暮らせる」

「……っ、い、いくら欲しいんだい……?」

懐から小さな麻袋を取り出し、中身の硬貨の枚数を確認し始めるトコルを見て、一瞬目が点になるティアーシャだったが数秒で吹き出した。

「……えっ、えへっ!?ま、まさか私を金で口止めしよって……!?あ、あははっ、あははははっ!!おなか、お腹くるしっ……!」

「……じゃ、じゃあどうしろって?私が君を殺して口止めしろって??有名人の君を手に掛けたら私自身の命が危ないよ」

「…………ひいっひいっ、あーひっさしぶりにこんなに笑った……。腹筋バキバキだよ。……そんな事しなくても、ほら言ったでしょ?最初の提案思い出してよ」

トコルは一瞬考える素振りを見せてハッと顔を上げた。

「……君の、仲間になる」

「ピンポーン、正解。私達は君が君自身が作った道具を実験する機会を提供できる。君は私達に少なからず道具の整備や新しい武器の提供などで貢献できる。どう?WINWINだと思わない?」

ティアーシャは両人差し指を上に向け、ちょいちょいと前に突き出した。

「……じゃあ、私は公式に戦って自分の道具を試せるってこと?」

「そゆこと、話が早いね」

「………………少し、考えさせて欲しいな」

トコルが俯いた為、彼女の表情は分からない。それでもティアーシャはあっけらかんとして何も変わらぬ態度で返答した。


「いいよ、何も緊急じゃない。ゆっくり考えてよ」


彼女が浮き足立って帰っていく様子を、トコルはぽけーっとろくに焦点すらあっていない目で眺めていた。

彼女にとって、ティアーシャが提案してきたのはこれ以上無い好条件。なんならこちらにメリットまである。

それなのに、何故なのだろうか。トコルは中々にその条件を飲めずにいた。




―――




「穢れた血め」




トコルは自身の名で呼ばれることよりその名で呼ばれる時の方が多かった。

故郷、小人族の村。全員が小人族であり、故な身長も均等に小さい。

そんな村の中で生まれたトコル。彼女は人間と小人族の血を引くハーフだった。当然多少なりとも身長は周りより大きくなる。本来なら誇らしいことかもしれないが、悪い意味でそれは彼女を村の中で目立たせてしまった。

純血を好む彼女の故郷は血の混じりを嫌った。故に村の中で迫害を受けていた。


「トコル、お前、人間の血、混じってる。近寄るな」

「……はいはいそうですか。どっか行きますよ」


自分がどう言われようと彼女は耐えられる自信があった。

「……っ」


けれど、彼女の血筋を罵倒することは彼女の人間の血を貶している事を意味する。

トコルは母親が好きだった。父親も同様に。

母親だって人間というだけでこの村では生きにくいはずだ。

半分小人族の血が混じっている自分が、この程度でへこたれてどうする……。

トコルは唇を噛み締めて毎日を過ごしていた。







人間であった母親はそんな環境だったが故か、早くにこの世を去ってしまった。

小人族であった父親は今度は同族と再婚し『ルコ』という子供を授かった。

純血の腹違いの弟、それに対し唯一人間の血が混じったトコル。




彼女への、亡き彼女の母への罵倒は次第にトコルの身も心をも蝕んで行った。


幸いだったのは、家族が人間の血に対して肯定的だった事であろう。弟も何も嫌な顔せず一緒に暮らしてくれていた。




……しかし、成長するにつれて視野は広くなっていく。


「トコル、お前は何も気にするな。あいつらの戯言を耳にするな」




ハーフの自分と暮らしているだけで自分達の大切な家族が腫れ物扱いされている事に気がついたのだ。

それも必死にトコルに気づかれまいとして隠していることに。

一緒に、暮らしているだけなのに。


私のせいで。


そう思った時、心の中に引っ掛かりを覚えた。

私のせい、それは人間の血のせい。つまり人間であった母親のせい。


「……はっ」


思わず乾いた笑い声が出た。

結局、何だかんだ言いつつも一番人間の血を否定しているのは自分なのでは無いか。

人間の血なんて引いていなければ、元の母親も死ぬことはなく平穏に暮らせたのでは無いか。


「……」


少なくともこれ以上大切な家族の元にはいれない。自分が居なくなれば、しばらくすれば家族は平穏に日々を送れるようになるだろう。

それに、外の世界がどんなものか、この目で見ていたい。この小さな村に縛られず、この足で世界中を見て回りたい。


「今まで、ありがとう」


思い着く限りの感謝の言葉を綴った手紙を家の入口にそっと起き、夜な夜な家を出て、村の門を越える。

きっと自分は、親不孝者なのだろう。

それでも、家族が自分無しで幸せに暮らしていけるのなら。


「私は何でもするさ」


食料や小道具をパンパンに詰め込んだバッグを背負い、月明かりに照らされる夜道を歩く。

小脇から聞こえる虫の音が、その時のトコルには嫌にうるさく聞こえた。



――






「……あの」

「どうしたの?お嬢ちゃん」

数日後、受けていた仕事に区切りが着き彼女は冒険者ギルドに赴いていた。

背伸びをして受付のカウンターに声をかけると、まるで小さな子供を相手にするように優しい声が帰って来た。

この街に来てからはもう慣れっこだ。一見しただけでは彼女が小人族と人間のハーフだと判断することは難しいだろう。年端の行かぬ子供の扱いをされるのは仕方の無いことだと彼女ももう割り切っていた。

「……ティアーシャという冒険者は何処に?」

「ティアーシャさんに会いたいの?」

受付嬢は身を乗り出し、辺りをグルグルと見回した。

「あ、いたいた。ほら、あそこのテーブルに座ってるよ」

「ほんとだ、ありがとう」

「どういたしまして」

トコルは軽く会釈をし、踵を返して受付嬢の指さした方向へ足を運ぶ。

絹のような美しい純白の髪を靡かせる彼女の隣に、人間なのかと目を疑うほどの巨体の持ち主が座っている。

その二人は遠目からでも明らかに異質なオーラを放っていて、一度目に入ってしまえば見逃しそうになる事は無かった。


「お、来たね」

初めにトコルに気がついたのはティアーシャであった。テーブルを囲う他の仲間との談笑を切ってこちらに手を振る。

「ん?この子は?」

その隣で巨体をひけらかすナーサが不思議そうに目を細めてトコルを見る。

「見る限り小人族の方ですか?」

滑らかな黒髪を後頭部でひとつに束ねたトゥルナがどうぞ、と隣の空いている席を引いた。

「ありがとう」

トコルは机に手を掛け、登るようにして椅子に腰掛ける。

「ティアーシャの友達かい?」

「うーん、まあそんな感じ。前に私の剣を作ってもらってね。今回は私達の仲間にって」

「へえ……」

ナーサはジロジロとトコルの体を隅々まで見て、うんうんと頷いた。

「いいんじゃないのかい。ちょうど五、六人は欲しいと思ってたんだ。それに、戦闘の心得はありそうだ。見てわかる」

「出たな冒険者鑑定士一級(自称)」

「そりゃ私も長いからね。誰であろうと目を見れば分かる」

目?とトコルがぱちくりと瞬きをする。

「あたしと対面して目が泳がない奴は素質がある。肝っ玉があるって事だね」

皆あたしと目を合わせるとぶるっちまって目を逸らすからね、とナーサは豪快な笑いと共に机をバンバン叩いた。

「それに、ティアーシャが連れて来たってことはハナっから信用するさ。小人族でも何でもな」

人間の中でも稀有な巨体を持つナーサとトコルの体格差は天と地ほどの差がある。トコルの頭のてっぺんはナーサの腰程になるだろう。

彼女がただの傲慢なら、こんなチビは要らん、と捨て放っていただろう。

「……ホントにいいの?私なんかただの鍛冶屋だよ?君たちと釣り合うとは……」

「何故釣り合う必要が?」

トゥルナが小首を傾げたのに対し、えっ、とトコルが目を見開く。

「もちろんある程度の戦闘センスは必要ですけど。私たちが必要としてるのは個性ですから。ティアーシャがあなたを選んだのは、きっとあなたにしか出来ないことがあるから、でしょう?」

トゥルナがティアーシャに視線を向けると彼女は嬉しそうに頷いた。

「決まりだね。トコル」

ティアーシャがトコルに視線をやると彼女は静かに頷いた。

「稼ぎはいいですよ。ナーサさんのいびきはうるさいですが」

「トゥルナの寝言だって相当だろ!?」

三人が声を上げて笑うので、トコルも釣られて笑ってしまう。


「ようこそ、私たちのパーティへ」

「よろしくお願いしますね」

「よろしく!」


トコルは一瞬、言葉を詰まらせた。

小人族だとか人間だとか、ハーフだとか、関係無しにこれ程オープンに受け入れられたのは初めてかもしれない。

故郷にいる家族とは別の、新しい家族。

それの基盤が、今ここに建てられたような気がした。


「トコルだよ。みんな、よろしく」


久方ぶりに浮かべた満面の笑み。

何故か三人の顔はボヤけて上手く見えなかった。




―――





「っ」

……随分と、懐かしい夢を見ていた。

工場の椅子に座りながら、すっかり眠りこけてしまっていたようだ。

店の外は既に日は落ちて暗くなってしまっている。急いで洗濯物を取り込まなくては。

トコルが立ち上がると、肩から何かが地面に垂れ落ちる。

「……毛布?」

「お、起きたか。おそよう」

肩に掛けられていた毛布を、横から拾い上げたティール。

「……あ、ああ。ご、ごめんね。わざわざ来て貰ってたのに居眠りしちゃって」

霞む目元を擦りながら欠伸を噛み殺す。

「連絡見て来たら店も開けっ放しで寝てるから。ビビったぜ」

「あ、はは……。危ない危ない」

トコルは苦笑を浮かべながら体を逸らし伸びをして工場の奥へ足を運んだ。

「お待たせ、ティール専用の短剣だよ」

小綺麗な木の箱を手に持ち、蓋を開ける。


その中に静かに横たわっていたのは、今までティアーシャが愛用し、ティールに受け継がれて使っていた短剣と瓜二つのもの。

「……これって」

「色々と機能は付け加えたけどね。やっぱりティールにはこの形が合うかなって」

ティールは箱の中から短剣を手に取った。一見、以前使っていたものと寸分変わらぬ同じもの。

「手で握って使う事もできるけど、魔力を込めると浮かせて自在に操れるように作ってみたよ。それなら今のティールでも扱えるでしょ?」

「魔力で?」

ティールが手に取った短剣に魔力を込めると、それはふわりと重量に反して浮かび上がりティールの傍にピタリと浮遊して止まった。

「へぇ、こいつはいいや」

「慣れれば色んな動かし方も出来るはずだよ。魔法が得意なティールには丁度いいでしょ」

「てっきり手に巻き付けてでも使えって言うのかと思ったぜ。……にしてもよくあれと同じ形の作れたな。俺なんか材料すら分からなかったのに」

「だってあの短剣は私が作ったからね」

「…………え、マジ?」

「マジだよ」

まさか製作者が目の前にいたとは。ティールは思わず目を白黒させた。

「あれはヘデラんところの大樹の木を貰って限界まで固くして研いだものだよ。ちなみにヘデラの使ってた短槍もそう。そうでもしなきゃ武器に神聖力は込められないって」

「……」

たはーっとティールが項垂れる。

「そりゃ街の鍛冶屋に聞いても材料が分からんわけだ」

「私に聞いてくれれば一発だったのにね」

ティールとトコルは顔を見合わせて苦笑する。

「……こいつは大切にするよ。整備も定期的に製作者様にやってもらうとするかね。で、こいついくら?」

「…………私が仲間からお金を取るとでも?ましてや、二代に渡って私の作った剣を愛用して貰えるなんて鍛冶屋として願ってもない喜びだよ」

「…………そっか。ありがとう」

下手に金を払おうとすれば、それは彼女の善意を踏みにじることになる。ここは潔く受け取っておこう。

「それじゃ、洗濯物取り込んだりしないとだし。今日はこれでね。あ、後でルコと一緒にルンティアのとこでご飯食べに行くからよろしく」

「おう、伝えとくわ。それじゃあまた」

軽く手を振ってティールは短剣の入った箱を抱えて店を後にする。

夜道を歩くと、背後で店の明かりが静かに消えたのが分かる。


『私の短剣とお揃いじゃない。トコルも気が利くわね』


頭の中でティアーシャの声が響く。

「あの短剣ってトコルに作ってもらったんだな」

『ええ、多少無理言ってね。それからの付き合いよ、トコルとは』

一緒のパーティになったのはそれから、と彼女は付け足した。

『私達の元で、居場所が出来ていたのなら良かったのだけれど』

「心配するなって、あいつが俺達の話をする時心底嬉しそうだからな。きっと、かけがえのない存在だったと思う」

『そう、ね』

一呼吸置いてティアーシャが呟いた。









次回は外伝 ヘデラ編となります

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