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計画

 電車を降りてそのままアパートへ向かう。そこは駅からは少し遠めだが、学校からは結構近い。歩きで10分くらいかな。


 時々同級生を見かけたが、特に声を掛けられることなくついた。


 ちょうど、管理人のお孫さんの山田紗季やまださきさんが箒で門周りの掃除をしていた。紗季さんは今年で大学一年生になったらしい。大学生になったら一人暮らしをしたかったらしいが、両親にダメと言われたらしい。けど、何とか頼み込んで自分の親が経営しているアパートならオッケーが出たらしい。その代わり手伝うように言われたそうだ。


 紗季さんは茶髪でストレートロング。俺から見ると、頼れるお姉さん的位置にいる。


「お帰りなさい、裕也君」


「ただいまです、紗季さん」


「しっかり休めましたか?」


「はい。いつも掃除お疲れさまです。手伝いましょうか?」


「いいですよ。もう少しで終わるので」


「そうですか。何か手伝うことがあったら気軽に言ってくださいね」


 そのまま俺は自分のへやに戻る。


 俺の部屋は、テレビが一台。本棚が一つ。ノートパソコンが一台。机が一つという必要最小限の家具しかそろっていない。一言で表すと殺風景だな。


 何か増やせって?特に必要はないな。金ないし。


 そうそう、忘れてた。金!アルバイトしないとやばいな。これから陽キャになるために必要なものを買わないといけなくなってくるからアルバイト探さないと。


 陰キャのいいところって基本趣味がないから金使わないんだよな。仕送りだけで足りる。無趣味陰キャ最高!まぁ、ゲームとかラノベ、漫画、アニメは趣味に入ってくるかもしれないが、俺は漫画とかラノベは友達から借りる派。だから、部屋の本棚には実家から持ってきたものしかない。後、web小説、web漫画。アニメはリアルタイムで見る派。


 ゲームはどうしてるかって?無料ゲームやりまくってます!無料だからってなめんなよ!


 ここらへんで自分の部屋の説明は終わろう。


 早速、自分の部屋に帰ってきたわけだが、ここで俺の成り上がり計画を立てようじゃないか。パフパフパフッ。


 中学の時の経験を生かせば多分、あっという間に陽キャになれるだろうけど、周りから変な目で見られそう。あ、でも夏休みデビューとかで何とかなるか?


 まず、最初は顔の問題だな。こんなボッサボサの状態からいきなり綺麗に整えられて言ったら絶対他人と間違えられるな。ゆっくり綺麗にしていくか?一日一日大体0.5センチずつくらい切っていったら誰も違和感なくなるよな。そもそも俺を見てる奴なんかいないし。


 容姿についてはこれくらいでいいだろう。


 次は、成績。一番大切なことだな。今、ノーベン状態で平均点とってるからな。でも、いきなりドカンと成績が上がったら注目されるよな。風陵は課題テスト、定期テストは順位が出るからな。普通にバレる。順々に上げていこう。


 次は体育。これも勉強と同じように次第に上げていこう。


 部活はどうするかって?とりあえず、小さくなったシューズ買い替えとガットの張り直しに行こう。ちなみにうちのバドミントン部は女子男子両方とも対して強くない。市大会で4回戦いけるかいけないかレベル。俺は関東大会4決まで行った。男子と女子どっちの方が強いかって?どっちもどっち。


 風陵のバドミントン部には、一年のイケメンアイドルがいるからそいつ目当てで入った女子もいる。こいつらはうるさい。俺が部活に行かなくなった原因でもある。イケメン君が点数を取るたびにキャーキャーキャーキャー喚きやがって。


 後、顧問。顧問がバドミントンのこと知らなすぎ。基本練習は本に載ってるやつを参考にしながらしている。


 部活のことはおいおい考えていくとしようか。


 後は性格だけだな。陰キャが夏休み挟んでいきなり話しかけてきたらホラーだお。あ、噛んだ。ホラーだよ。想像してご覧。夏休み前までは、「メリーちゃんは僕の嫁」とか人目を気にせず話していたオタク野郎が、夏休み開けた途端積極的に話しかけてくる様子。分かりやすいたとえだろ。


 正直言ってキモイだろう。いやいや、俺は二次元キャラに嫁とかいなかったし。アニメキャラは確かにかわいい子がいっぱいだけど、優劣はつけない。俺はストーリーを楽しむ派だ。


 そんなわけで頑張って陽キャになろうと努力している陰キャっぽさを醸し出そうと思う。基本俺は教室ではネットニュースとか読んでるだけだからキモイとかは言われないはず!……多分。自身はない!


 では、俺のイメチェンに行くとしますか。


 財布は持った。ラケットもシューズもある。家の鍵はしっかりと。では、行こう。


 掃除道具を片付けていた紗季さんに行ってきますと言って自転車を走らせる。


 とりあえず、美容院に先に行くことにする。いつもは金がかからないようにするために紗季さんン頼んで切ってもらっている。本当に頼りになります。


 自転車で5分くらいのところに『栗山美容院』を見つけた。ネットで調べて近場で一番レビューの評価が高かったのでここにした。少しお値段は高め。


 美容院なんて3か月ぶりだな。


 特に躊躇することなく入っていき、受付まで行く。


 でも、そこには衝撃の人物がいた。そいつの名は栗山遥香くりやまはるか。俺と同じ1−2。ボブカットで天真爛漫系美少女。どんな相手もひっこり笑顔で話しかける。これに落ちない陰キャは陰キャじゅないとも言われている。嘘だけど。いつもネットニュースを見ている俺にも笑って話しかけてくれる。


 頭もよく、成績は常に20番以内。運動神経も良く、バドミントン部所属。でも、顧問がクソなので普通の人より結構うまい程度になってしまっている。もちろん、最上位カースト所属。


 くっそー!『栗山美容院』って名前で気が付けばよかった!なぜ俺は気付かなかった!


 しょうがない。こいつにはよく顔を見られているから隠す必要がありそうだ。出来るだけ、バレない様に声を変えよう。


 少し低めの声を出す。


「予約していた上井かみいです」


「はい、予約されていた上井裕也様ですね。こちらで少しお待ちください!」


 ちょい待ち!おい!思いっきりこいつ俺の名前を呼びやったぞ。予約は苗字だけだったのに!声は完璧に変えたしなぜバレた!


 俺は思わず振り返ってしまった。


 その彼女は楽しそうににっこりと笑いながらピースを添えている。


「驚いた?」


「何がですか?」


 俺は最後の抵抗に低い声を出す。でも、彼女は俺の顔を見たことでもう確信してしまったようだ。


「もうバレてるバレてる。上井君いらっしゃい」


「なんでわかったんですか?」


「いやー、見たことある髪型にバドミントンラケットケース。名前が上井とくれば流石に分かるよ」


 まじでっか。まぁ、でも本性はバレてないみたいだからいっか。俺は本格的に陰キャになるために基本誰にも丁寧語で話している。


「ここ栗山さんの親御さんが経営されているのですか?」


「そうだよ。何回も言ったじゃん」


 すいません。聞き流してました。しっかりと聞いておけば今こんなことにはならなかったはずなのに!


「その顔は聞いてなかった顔だなぁ〜。まぁ、いっか。やっと来てくれたし。せっかくいい素材持ってるのに髪切らないなんて持ったいなすぎるよ」


 なんかいろいろばれてたっぽい。


「そうかな。でも、そこまで本格的に切りに来た訳じゃないないですよ」


「そうなの?ここ結構高めだと思うけど?」


「美容院行ったことなかったから」


「そうなんだ。じゃ、お母さんには頑張ってもらわないと!」


「いやいやいやいや。やめろ!」


「へ?」


 ミスったあああああああああああ!反射的に本能が。


「なんでもないです。少しさっぱりしたなって感想がみんなから聞こえるくらいでいいよ」


「よくわからないけど分かったよ」


 そう言った栗山はニヤリと口を歪めていた。でも、俺はそんなことには気付かなかった。


「あ、丁度空いたね。では、ごゆっくりぃ〜」


 そういいながら栗山はその席担当の美容師さんに話しかけに行った。その女性はかなりきれいで栗山に似ているので多分母親なのだろう。


「どうぞ、こちらへおかけください」


「はい」


「どのような髪形にされますか?」


「耳が半分隠れるように、前髪は目が隠れるくらいの長さまでお願いします。その他の場所はお任せします」


「はい、畏まりました」


 チョキチョキとリズムよくはさみの音が聞こえる。


「上井君は高校どこなのかしら?」


「風稜高校です」


「へぇ、賢いのねぇ」


「いえ。学校では順位も真ん中なので」


「うちの子も風陵なんだけどねぇ。あ、さっきの受付の子ね」


 知っとるわ!何が言いたいんだ?栗山母。


「上井君は遥香とどんな関係なのかな?」


 それが目的か!何を吹き込んだんだ栗山!


「いつも教室の端っこで一人でいる僕に声を掛けてくれて。本当にありがたいです。栗山さんはやさしいですよ」


「それは母として誇らしいわね。でもねぇ、遥香全然家に男の子連れてきてくれないのよ。あの子かわいいから彼氏の一人や二人出来てもおかしくないはずなのに」


 二人はダメだろ。まぁ、その気持ちもわからんでもないが。なんであいつ彼氏作らねえんだ?


「告白はされるらしいけど、全部断ってるらしいの。そんなの試しに付き合って合わなかったら別れればいいのに。あの子、初彼氏は本当に好きな人がいいって」


 その情報を何故俺に話したんだ?何か裏があるのか?


「ねぇ、上井君。遥香をもらってくれないかしら?」


 そう来たか!予想とは別方向すぎるだろ!


「いえ、そんな恐れ多い。僕と栗山さんとでは釣り合わないですよ」


「そうかしら、上井君カッコいいわよ」


「そんなことないですよ。僕なんて陰キャオブ陰キャです」


「そうかしらねぇ〜」


 それから雑談が続いて髪が切られていく。


 全体が終わってきて今は前髪を切っている。


「あっ!」


 しかし、栗山母の手が滑った俺の前髪がバッサリと切られ視界が開けてしまった。


「すいません。手元がくるってしまって。前髪が結構バッサリと行ってしまって」


「いいですよ。失敗は誰にでもありますよ」


「本当にすいません。お代は結構なので前髪に会うように全体を整えさせていただきますがいいですか?」


「えっ!いいんですか?」


「遥香のお友達相手に失敗して、広められでもしたら遥香が可哀そうですし」


「そんなことしませんよ」


「分かってますよ。それでも、私の罪悪感がすごいのでお代は結構です」


「ありがとうございます」


 それで結局俺の前髪に合わせて切られていく。次第に陰キャの俺はなくなっており、中学の時の陽キャの俺になってしまっていた。


 これは少し路線変更しないといけなくなったな。浮いたお金でかつらでも買ったらいいだろう。


「本日は本当に申し訳ありませんでした」


「いえいえ。こちらこそタダで切っていただいて」


「これからも遥香をよろしくお願いします」


「はい?」


 そこは『栗山美容院』をじゃないのか?何故、栗山さんなの?分からない。読めない!


「「ありがとうございました!」」


 まぁいっか。すっきりしたし。


「上井くーん。一緒に行こっ!」


 いや、良くない。確実に目立つ。


「僕今から家に帰るつもりですけど」


「じゃ、そのラケットは何かな?」


「ガット張りに行ってました」


「ガット張りに行ってたくせにラケット持ってるのは何故?」


 くっ。言い訳ミスったな。ラケットを取りに行ってたの方が良かったな。


「今から行くんでしょ?潔く白状しなさい!」


「はい」


「じゃ、一緒に行こっ!」


「分かりましたよ」


 こうして夏休み最終日、いきなり美少女との強制デートが決まりました。


2018/09/20 主人公の大会の結果と部活の結果を変更しました。

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