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それは聞いてません!

イケメンからモブがあるなら、その逆もあるのではと思い、書き始めました。



「私の第一志望校は風稜ふうりょう高校だよ。裕也と同じ」


 そう、幼馴染が告げたのは夏休みの最後の日だった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 今日は夏休み最終日の一日前。俺は、実家から一人暮らしをしているアパートに戻るために準備をしていた。


「裕也ぁー、まだぁ、準備終わらないのぉー?早くゲームしようよー」


 こいつは俺の一年したの高校受験真っ盛りの幼馴染、早乙女夕夏さおとめゆうか。塾の夏期講習から帰って来て、俺の部屋のベッドでへそ丸出しで寝転がっている。


 こいつは自分が美少女ってこと自覚してんのか?


 そう、夕夏はいわゆる男女問わず振り返るであろうかという美少女。艶のある黒髪ポニーテール。きゅっと引き締まったお腹に大きすぎず、かと言って小さすぎるというわけでもないバランスのいい胸。すらっと長い脚。そして真っ白なお肌。


 更に、それを引き立てているのが彼女の頭脳、運動神経。そして、誰しも笑顔にさせるトーク術。彼女は中学では人気者だったらしい。かなりの回数告白されたらしいが、全部断ったらしい。らしいのは、俺と夕夏が違う中学だったから。でも、これは表の顔。


 裏の顔は見ての通りのダメ人間。部屋の掃除はしないわ、勉強しないでアニメ見るわ、漫画読むわ、ラノベ読むわ。これ程のダメ人間が他にいるのかってほどだ。


 では、なぜそんな彼女が成績がいいのか?それは、夕夏の頭が良すぎるから!俺とは違う!


 夕夏曰く、


「へ?テスト勉強?そんなこと授業ちゃんと聞いて、宿題しっかりとすれば大丈夫くない?」


 だそうです。


 で、暗記科目は?と聞いてみたところ。「暗記教科はどうしてるかって?そんなん授業中に覚えてるに決まってるでしょ?時間は有意義に使わないと」だそうです。


 ムキー!天才ずるい。


 でも、夏休みの間はしっかりと勉強してるんだよな。自分の部屋の掃除は、夏休み最初は汚かったけど、次の日何か閃いたように片付けていたんだ。あんなけ、いやがってた塾にも通い始めたし。


 この夏休みの間に何があったんだ?行きたい高校でも見つけたのか?好きな人でも出来たか?そんなことを夏休み最初に聞いたら、


「好きな人?そんなんできるかボケ!私に釣り合うのはゆう、コホン。一人もいない!行きたい高校?それは裕也が帰る前に教えてあげる」


 って言ってたな。忘れてた、忘れてた。


 丁度終わったし、聞いてみるか。


「夕夏、準備終わったぞ。ゲームやるか?」


「やったー!じゃ、やろっ」


「何する?」


「だいかく!」


「分かった」


 通称「だいかく」。本当の名は『大格闘』。この会社が作っているゲームのキャラクターで戦う、格闘ゲームだ。俺も夕夏もこの周辺では強い方だと思う。


 俺はソフトをハードに入れながらさりげなく聞く。


「夕夏、第一志望決まったのか?いきなり勉強始めて」


「そう言えば教えるって言ってたっけ。私の第一志望校は風稜高校だよ。裕也と同じ」


 は?マジで?


 俺はその言葉に驚きを隠せない。


 風稜高校。今俺が通っている高校。偏差値はそこそこ高く、実家からは遠いので一人暮らしをしている。夕夏なら楽勝で合格するだろう。でも、もう少し偏差値が高いところに行くと思ってたぞ。


 ちょい待て、ちょい待て。お前が風稜来るのか?それは聞いてないぞ!お前に俺の実際の立ち位置知られたら、思いっきり煽られるぞ。


 夕夏のお母さんから、


「ゆう君からも勉強するように言ってあげて」


 って電話で言われたから、


「俺は良い高校に入ったぞ。お前も勉強しないと俺より成績悪くなるかもしれないぞ。しかも、俺は風稜でも成績上位。そして、夕夏も知ってるだろうけどバドミントン部で俺は活躍していて、学校ではかなりの人気者だぞ。下手したら夕夏を超えるかもな?」


 と、煽るように言ってしまった。結局やる気は出さなかった様だが。何度も夕夏のお母さんから電話がかかって来たからそのたびに俺はすごいってことを自慢していた。


 そんなことを夕夏が信じるのかって?信じる。これは断言できる。俺が言うのはなんだが、中学の時はそれなりに俺も人気があったからな。


 成績は常にトップ。頑張って勉強してたんだよ。


 平均より高めの顔面偏差値。本当のイケメンにはかないません。


 高めの運動神経。全国大会出場経験のある、夕夏のお母さんに鍛えられたバドミントンだけでない。


 最上位カーストに所属しており、学校一の人気者と肩を並べるくらいに発言力を持っていた。


 しかし、今や高校ではどこのグループにも所属しておらず、最下位カーストのモブ野郎。成績は常に平均で、体育は適当にして、部活はバドミントン部に所属はしているが一、二回参加して今や幽霊部員状態。少し高めの顔面偏差値を誇る顔は長い前髪で隠されており、寝ぐせはぼうぼう状態。中学の時の俺は夢ではなかったのか?みたいな状態。


 なんでそんなことになったかって?理由はいろいろあるが一番大きな理由は春休み早々に交通事故にあって入院一か月くらってスタートを切り損ねたことだな。中学でも高校でも1週間ほどたつと、集まりグループが出来上がる。2週間ほどしてグループの上下関係が出来上がる。


 そして、一か月遅れた俺はどうなると思う?最初は珍しく話かけてくれる。でも、こちとら人と話すのは1か月ぶり。何を話題に出せばいいのか分からない状態。よって話題についていけなくなり、次第に話しかけてくれる人がいなくなっていく。そして、最後には誰にも話しかけられずに一日を過ごすモブと化す。


 これが今の俺の状態だ。分かりやすかっただろ。だから、こんな状態で夕夏に来られたらまずいんだよ。分ったか!威張ることじゃねえな。


 さて、どうするか?


 一つ、夕夏が風稜に落ちる。これはまずありえない。


 二つ、夕夏が風稜を受けないようにする。


「夕夏、なんで風稜なんだ?やめておいた方がいいぞ」


「いや。行く。そして裕也の高校の様子を見る」


 失敗。こうなったら最後の一つ。俺が変わるしかない!以外にモブ生活も気に行ってたんけど、こうなったら仕方がない!最下位カーストから最上位カーストまで成り上がってやる!


 ちなみに、だいかくは4勝16敗でした。ボロ負けだな。

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