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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

重鎖のスタッド

作者: park_1254

 バーテンダーのバイトを始めて数日経った頃、常連客らしき女性が行きずりの男性客に飲み比べ勝負を持ちかけるところに遭遇しました。いわく、「アタシが勝ったら2万頂戴。あんたが勝ったら、つぶれたアタシを好きにしていいよ」とのこと。


 あわててオーナー(女性)に知らせるも、女性とオーナーは知り合いらしくて構わなくていいよと言われました。心配しつつ見守ってたら、女性は見事に男性を飲みつぶし、別の男性にさらなる勝負を持ちかけてました。


 二人目の男性も飲みつぶしてけたけた笑う女性が、なおも勝負相手を探そうとしたところでオーナーが止め、男性たちをタクシーに詰め込みます。物足りなさげな女性が今度はオーナーを勝負に誘い始めました。


 遊ぼうよぅやなこと忘れたいんだよぅと首に腕を絡ませて話す女性に、

「『本当に』忘れられるなら付き合ってあげる」

 とオーナーが返すと、女性は視線を揺らがせて口をつぐんでしまいました。


 わずかな無言ののちに、新入りちゃんこいつバックヤードに突っ込んどいてとオーナーに投げられた女性は、もうさっきまでのへらへら笑いでした。


 とりあえず裏手の椅子に座らせて、水を持ってきたり具合を聞いたりしてたら、女性は新入りちゃん優しいなぁ好みだなとか言い出し始めました。

 んーでも背はもっと高くて髪をまとめてて歳が近くて、ピアスしてるほうがいいなんて勝手言ってます。それ私じゃない誰かでしょう、その人に言ってあげてくださいと言うと、女性は急に声を落として、もういないもんと返事しました。亡くされた方かとはっとすると、女性はすぐに手を振りました。


「ちがうちがう、結婚して子供もできたから関わんなくなっただけ!全然、元気…で、あれ…?」

 ぽろ、と涙が頬に伝っていました。

「あ、あれ…? なんで…?」

 ぽろぽろぽろと次々にこぼれる雫をぬぐいながら、ごめんねちょっとだけ一人にしてと言われた私は、オーナーのところへ戻ることにしました。


 それから聞いたのは、女性には酔いつぶれたあとに良く世話をしてくれる女の人がいたこと。

 結婚した後も、子供ができても、女の人は女性から贈られたピアスをずっと耳につけていること。

 一人で来る女性の飲み方が荒くなったこと。

 どんなに飲んでも全く酔えないとこぼしていたこと。


「会うか見かけるかしちゃったんだろうね」

 あたし達にどうかできるものじゃないから、気にしなくていいよと言うオーナーの言葉と、裏手のドアからかすかに聞こえるすすり泣きの声に、私はどうすればいいかわかりませんでした。


今回の着想を得た曲は劇団レコードfeat.浅葉リオ「金輪際のエレジー」ロングバージョンです。

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