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くたばれ、聖剣(ホーリーブレイド)  作者: トットライザー田中
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火のない所に煙はたたぬ

累計アクセスが多分、100を超えました。ユニーク(自分を多分に含む)でこれは、ありがたいことです。


周囲はすっかり暗くなり、月明かりと焚き火の炎がわずかな光源となった。

ルドは川で汲んだ水を口に含みながら、たき火で干し肉をあぶる。

普段は顎が痛くなるほど噛んでから食えばいいが、軽くあぶるとずっと食べやすくなる。

じんわり滲む、わずかな油が旨い。こういう時酒でもあれば最高だが、持ち合わせは無かった。


「焚き火か……最後に火を見たのはいつだったか」

『賊をよけてここに来たって言うのに、かなり大胆だよね』

「あの建物の中なら抵抗のしようもある。それにしても頭蓋骨には記憶があるのか」


理屈はわからないが頭蓋骨の受け答えははっきりしていた。

やりとりをしながら、ルドは頭蓋骨や魔剣を信じてはいなかった。

だが疑念は今や焚き火にくべられた小さな薪のように、小さくなっていく。

既に何度か嵌めようと思えば嵌められる状況を作っていた。

だが何もおこらない。かなり隙だらけのように振る舞ったが、二人?は何も変わった反応を示すことも無かった。


これ以上疑心暗鬼になるのは精神力の無駄だ。

そう結論づけたルドは、頭蓋骨の身の上を尋ねた。

魔剣の方は相変わらず記憶が曖昧なので、話が続かなかったという事もある。


「うん?そうだな。記憶が確かであれば、さる貴族に剣を捧げていた。いわゆる騎士だな。従者から取り立ててもらい、いくつかの戦にも出た」

「へえ、それがどうしてこんな姿に」

「そうだな。ある戦――戦の名前は思い出せないが――の味方に魔女がいた」


頭蓋骨は語る。その相手は汚れた魔術か何かで、人外の兵まで用いてきたと。

当初は善戦するも次第に追い詰められてゆき、いよいよ退っ引きならないところまで来た時に、味方側も魔術の力で対抗することになった。

それこそが魔女の狙いだったのかは判らない。だが主家を守るために剣だけではなく、魂までも捧げることにした。

そこからの記憶は途切れ途切れで、とにかく暴れ回りながら邪悪な人外どもを倒し続けた。

伝説の十三騎士に勝るとも劣らない戦いぶりであったことは身体が覚えているという。

だが力は代償を求める。あれだけ敵を葬り去った力は、相手の魔術師を倒すと同時に一切合切を奪われてしまったのだという。


「あの石造りの建物は砦だった。守り役を仰せつかったこの身は、骨の髄まで主に仕える事ができたと信じる」

「たいした忠誠だ。吟遊詩人が好きそうな話だが……あのままでなくて良かったのか」

今から戻せ、と言われても戻しようが無かったが、ここまで語られると聞かずにはいられなかった。

「うむ。ある夜、目が覚めた。理由はわからないが、意味があるのだろう。幾つかの昼と夜が過ぎてお主らが来た。運命だと言うつもりは無いが、あの時、生きている貴公を見て、朽ち果てるか狂うよりも、目覚めた意味を探したくなったのだ」

「まぁ……街まで行ければ、失せ物探しの魔法使いくらいはいるだろう」

いくらかの代価は支払うことになるが、宝石が売れれば釣りが来るのではないか。

ルドはそのような希望的観測を口にした。思ったより壮大な話に感動したという事もある。

「この頭蓋だけでできることには限りがあるからな。まずはこの状況から脱却することが望みよ」

「そりゃそうだな。なあアンタ、名前は何て言うんだ。何か名前が残ってるかもしれないぞ」

「仕えている時にはグラーベンと呼ばれていた。まぁ古い話だ」


パチと薪が爆ぜる。そこで会話が途切れたので、ルドはいくらかの励ましの言葉を口にしてから横になることにした・


『なんか、僕の時と扱いが違わない?』

「来歴がハッキリして、かつ筋が通ってるんだから当たり前だよなぁ?それに契約、魔剣というのが俺としちゃ気に入らん話でね」

『何でさ』

「売るときにでも話してやるよ。お休み」


遺跡で一晩過ごしたルドは、約束通りに頭蓋骨を袋に詰め、森を進むことにした。

目指すは人里。いくらか換金できそうな品があったところで、食料が無ければ生きていけない。

小銭や宝石で懐は暖まるかもしれないが、空腹を満たすことはできないのだ。


「昨日は魔剣おまえの言葉を信じてみた。すると喋る頭蓋骨と出会った」

『そうだね。よかったね』

「我が身としては深い感謝を申し上げるべきだろうな」

「あー、グラーベン氏には申し訳ないが結果はまだ出してない。先払いの悪くない取引だとは思うが、問題は目的地だ。元々俺は、この剣を売りさばくつもりで街を目指していたんだが、どうにも道中がよろしくない。そして手持ちの食料は心許ない」

『そこで僕と契約ですよ。こう、もしかしたら凄い加護とかでおなかも一杯に……』

「どんな加護だ。いらん。俺が欲しいのは目先の食料だ」


というわけで村や食料のありそうな場所に心当たりが無いか、とルドは尋ねた。

何も無ければ川を北上するつもりであった。水があればすぐには倒れないし、集落か道の一つでも見つかりそうな気がしていたからだ。


『僕を手に入れた場所から、さらに奥へ進むべきだと思うな』

「あいにく今の地理には疎い」

「では予定通りに川沿いを北上するか……橋や賊の問題さえ無ければ良かったのに」


そういうことで川沿いを意識しながら森を進みつつ、何か食えるものや村などが無いか見回している。

そうして一時間も歩いたろうか。ルドは、遠くに立ち上る煙を見た。

次回:ルド達がたどり着いた場所は村だったが……



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