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くたばれ、聖剣(ホーリーブレイド)  作者: トットライザー田中
14/16

ダイトにて 1


ダイトまでは、疲れこそしたがトラブル無く辿り着いた。

街道沿いに盗賊が出なければ、そう困るものでも無い。

丸一日歩き通すと、さすがに軽口を叩くような気力も尽きる。


ルドは街の入り口まで来ると、番兵が旅人や行商に話を聞いている。

街が大きいため、それだけの人間を監視に割く余裕があるのだ。

もっとも、この地域の中継拠点でもあるため、交通整理や揉め事をさばく者が求められるという事が大きいのだが。


「出入りしやすいと思ったが……」


ルドは面倒くさそうに物陰に隠れて、荷物を入れ直した。

頭蓋骨が見られると流石に印象が悪い。言い訳は浮かぶところだが、できれば穏便に済ませたかった。

しばらく様子を伺って、それほど熱心ではなさそうな番兵の方に並ぶ。


「お前、滞在目的は?」

「手元の品を売って路銀を調達する。しばらく滞在したら、また旅に出るよ」

「そうか。揉め事は起こすなよ。一応、検めさせてもらうぞ」


ダイトに限った話ではないが、高そうな酒や妙な薬の類いを持ち込むとうるさい。

とはいルドの持ち込んでいる荷物は、率直に言えば二束三文の品ばかりだ。

門番はルドの外見を一瞥してから興味なさそうに軽く調べるだけで、先に進ませた。



ルドは最初に宿を探すことにした。宿にも色々な種類があるが、ルドが求めるのは個室のある安宿だ。

本当に金が無いときは集団部屋で寝ることもあるが、今は荷物の事もある。人目は避けるに越したことは無い。

それに、ルドは以前の手ひどい失敗を思い出したのが、思いの外ダメージになっているようで

しばらくは見ず知らずの他人と、一緒に寝るような気持ちにならなかった。

いくつかの看板を見て金額を確かめる。表通りは、便利さもあって何となく高そうだ。


『選べるほど宿屋あるんだね』

「まぁこの街くらいになるとな」


人の往来を見ながら、何となく裏通りに入っていく。

安宿に、安い食堂兼居酒屋がある。閑古鳥が鳴いている訳でもなさそうな場所だ。

中に入ると、何人かの客が明るい時間から酒を飲み過ごしている。

今日は仕事が無かったような連中なのだろうが、こうして利用されている点は信用できる。


「しばらく泊まりたいのだが。とりあえず2、3日くらいは……」


店主らしき人物が出てきて、いくらか交渉と質問をする。

食事の提供回数や、部屋の開き具合。出入りの時間……周囲の店の話。

いずれもルドの希望を叶えるような結果に収まり、金を払った。


「もう入るか?部屋を片付けなきゃならないが」

「いや、そういうことなら後で戻る。色々回らないといけないからな」


日が暮れる頃までに戻れば食事の準備まで終わる、と言われたので、ルドは従った。

本当なら今すぐにでも横になってしまいたいが、ただ寝ているだけでは金にならない。

今晩の酒代くらいにはなってくれるであろう屑鉄を筆頭に、幾つか回らないとならない店があった。


『行き先は判ってるの?』

『ああ、以前と変わりなければな』


ルドは、この街に来ることが初めてでは無い。過去にも訪れていたことがある。

その時はまだ、まっとうな身なりだったような気もする。

親しくなるほどの知り合いは。いない。だからこの界隈を気に入ったのだが。


無一文で放浪していると、最後に辿り着くのは賊の類いである。

色々と嫌になって放浪してはいたが、自分が討伐される側に回るのはうまくない。

そうなると稼ぐために色々とする必要性が出てきた。

行き倒れの死体を漁れば色々なものが出てくる。

それらを売りさばく場所を知っていたお陰で、ルドは漂流者バガボンドしながら

時々はこうして宿に泊まり、飲み食いして寝るだけの生活に身を置くことができた。

自身が、名誉を求めて冒険していた頃の知恵に支えられている。

己の中途半端さを皮肉に思いながら、ルドはまず魔法関係の品を商う場所に足を伸ばした。


「え?ここは何だかんだ言って僕と旅を続ける流れなんじゃ無いの?」

「ふむ、魔法武器マジックウェポンね。しかもインテリジェントソード――」

「いくらになりそうだ?これほどの品だ。暫くは金の心配をせず暮らしていきたい」


静かな店によく響く罵声を聞き流しながら、店主の鑑定を待つ。

剣だけではなく、鞘と、封印していた鎖、巻いてた布などを一式手放すつもりだ。

護身用にするだけなら魔法武器マジックウェポンなど過剰もいいところである。

最悪、この剣を目当てにいざこざが起きたり、盗まれても不思議では無い。

その価値が判りそうな連中にしてみれば、という話ではあるが。


「権能不明とはいえ喋る剣か。そうさな、買えん」

「当面は食いっぱぐれる事も無い。じゃ、それで――は?」

「だから、買えん。値段が付いても金が払えん」

店主が告げる。

「さすがに大金を動かす羽目になるとなあ……」


確かに取り扱いが大変であることに間違いない。

運ぶ間に金を奪われ出もしたら、それこそ馬鹿を見る。逆も然りである。


「正直、さっさと手放したくてな。金は後でも良い。一筆したためて前金くれるのであればいい」

「いや、買えんよ。喋る点と魔法武器である点だけなら値段も付くが、どんな効果あるかも判らぬ品に手は出せん」

「おいおい、俺はこの街で暫く滞在する金になりゃあそれでいいんだ。二束三文で結構。あとはそっちが儲けたら良い」

「お主は何か勘違いしとるが、魔剣遣いは簡単になれるモンじゃ無い。効果のわからぬマジックアイテムの取り扱いがどうなるか、冒険者やっていたお主ならご理解いただけると思うが?」

「よく知ってるさ。だからって――」

「悪いが、店主として、その剣については扱えん。お主の持つ宝石の類いなら喜んで買い取るがね。ま、いつか『鑑定』の祝福がある商人や"象牙の塔"の連中と交渉すると良い」


結局のところ宝石を金銭に換えるだけになってしまう。店主は面白そうに眺めていたが、買うとは言わなかった。

『ざまぁみろ』と大笑いしていたので蹴飛ばした。

『こうなればお前を鍛冶屋に売り払ってやる』

『そうなったら素直に溶かせるかどうかも怪しいって言い訳してから、溶ける瞬間までルドの悪口を叫ぶからね』

『ぐう』


唸りながらも、鍛冶屋に向かうことにする。そろそろ折れた武器の類いは、売り払って荷物を軽くしておきたい。

途中の村で鍛冶屋に屑鉄を売りつける事も考えたが、買い取ってくれるとも限らないので、ここまで持ってきたのだ。

多少は温かくなった懐と、軽くならなかった剣の重みを感じながら、ルドは鍛冶屋へと向かうのだった。

わちゃわちゃした街の感じを出していきたい。ギルドとかどう表現するからこれから決める。

そんな感じのファンタジーであります。

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