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意気抜きの街  作者: 霧々
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貂居



僕こと、不眠匠は親がいない。俗に言う、天涯孤独、というやつだ。


別にそれで困ったことはないし、悲劇の主人公を気取るつもりもない。実際、まだ幼かった僕を引き取ってくれた親戚の人達は優しかったし、ちゃんと面倒も見てくれた。朝昼晩とご飯はあったし、寝床もくれた。離れの小屋での生活だったけど、不便は大してなかった。


高校に入ってからはバイトも始めた。親戚の人達は優しかったけど、小遣いはくれなかったから、将来のために考えたのだ。お金は順調に貯まっていった。元々浪費する癖も対象もなかった僕は、稼いだお金を全く使わなかった。


そんなある日、僕は急に一人暮らしをすることになった。将来の勉強だと、親戚の人達は言った。今暮らしている場所とはかなり離れた所になるようだ。新しく通う高校にも、連絡はしたようで、住処となるアパートも確保済み。追い出されるようなかたちで、僕は約十八年暮らしていた街を出た。


電車で六時間、バスで一時間。徒歩で三十分の所に、そのアパートはあった。ボロボロだ。でも小屋よりは全然丈夫そう。雨漏りもしなさそうだし、台風で吹っ飛びそうもない。雪の重みで崩れたりもしないだろう。旅行鞄二つを引きずって、僕は一階の部屋に入った。


殺風景だ。畳張りの部屋が二つ。窓も二つ。一人で暮らすには十分。ここでなら、親戚が飼っていた犬をもし連れてきたとしても喧嘩しなくてすみそうだ。あっちではよく喧嘩をした。大型犬だったから、たまに死にかけたけど。


荷物を置いて、畳に寝転んでみる。気持ちいい。天井に梵字が書かれたお札が見えるけど、何だろあれ。所々黒い。幽霊でもいるのかな?


まぁ気にしない。幽霊よりも、犬が怖い。ここはペット禁止だろうか。飼う予定はないから、別にいいか。


大家さんにも挨拶にいかなきゃね。……でも、今日はもう暗いし、明日にしようかな。


僕は大きく欠伸をして、スッと目を閉じる。疲れもあったのか、意識はすぐに落ちていった。

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