ACT.08 奇行少女
時は遡って......
4月14日(月)
アコースティックギター愛好会に本入部して少し経った日のこと。
俺たち3人は、バンドでベースをやってくれる人を探していた。
「どうか......! やってくれませんか!? 」
手当たり次第当たっても、答えはどれも一緒。
「しつこいわよ! 」
俺たちに嬉しい答えは帰ってこないままだった。
恐らく大体の人がすでにバンドに入っているのだろう。
クッソ、出遅れた!!
「バンド一緒にやってみない? 」
俺は、いつも通り声を掛け続けていた。
今俺が声を掛けた女の子は、今までとは『少し』違うような気がしたのだけれど......
「......わからない」
いや、『すっごく』違っていた。
「......は? 」
「何がやりたいのか、わからないの」
「え、え〜っと......」
な、なんだこの子は。
「……え、え〜っと、まず名前は? 」
「まだ無い」
「いや、『我輩は猫である』じゃなくて」
本当になんだこの子は。
考えていることが全くと言っていいほどわからん。
「1年デザイン科の『十文字 衣奈』」
確かデザイン科は、デザイナーなど衣服関係を主に勉強する学科だったな。
「音楽には興味あるんだよね? 」
「一応ある」
「楽器は? 」
「私の家、楽器屋さん」
「何かできる? 」
「バク転ができる」
「いや、楽器の話だよ!!」
この子、頭のネジをどこに落としてきたのやら……
「楽器は、ギター、ベース、ドラム、キーボード、クラリネット、フルート、ホルン……」
「お前天才だな!!」
この学校には、楽器の天才が集まる系統があるのかよ。
この学校、工業高校じゃなくて音楽学校に変えた方がいいんじゃないか?
「ベースで俺たちのバンドに入ってもらえる? 」
「いいよ」
よっしゃー!!!!
俺は、心の中でガッツポーズをした。
本当に嬉しいな、コンチキショウ!!
ドラムの三枝さんに、ベースの十文字さん。
俺たちのバンドは、天才のパレードとなった。
天才でない俺は、このバンドで浮いてしまうんだろうな。
そう思ってしまった。