ACT.06 天才な天災 02
「す……すげぇな、おい」
『太鼓をポンポン』する楽器、もとい他のメンバーが使っていないドラムの場所に移動するとともに前へ座らせた。
俺たち2人は、基本的なことしか教えていない。
なのに……
「何でそんなに上手いんだよ!」
もう俺たちが教えたことは完璧に自分のものにしていた。
三枝さんは、記憶力と行動力・リズムが信じられないほど高かった。
「意外にドラムって簡単だね」
ドラムを頑張っている人たちに謝れよ。
だけど、どうしても欲しい逸材だった。
「三枝さん」
俺は面と向かって話した。
「うん?」
「俺たちと一緒に頑張ってみないか??」
「それは私のセリフだよ。どうぞよろしく!」
三枝さんとハイタッチをした。
こんなに早く、しかも磨くほど輝く超合金を捕まえることが出来た。
「ドラムが見つかったことだし、ドラムの最低自分で持ってないといけない物を買いに行くか」
俺は、バックを持ちながら三枝さんと高草木に言った。
高草木は追いかけるようにバックに荷物を詰め込み始めた。
「え……? 買う物あるの!? 」
「当たり前だろ。ツインペダル(足元にあるバスドラムを右足だけでなく、左足でも叩くことができるようになるペダル)やスティック(ドラムを叩くバチ)とかあるぞ」
それを言うだけで三枝さんは真っ青になった。
「……何円? 」
「良い物を買うなら最低『¥50000』は必要だぞ?」
三枝さんの足は震えていた。
いやだな〜。それじゃあその2つが買えないみたいじゃないか。
「まさか……? 」
高草木が静かに三枝さんに聞いた。
「……ない」
「……え? 」
俺と高草木は、思わず聞き返した。
「お金、持ってない」
「……」
なにも言えなかった。
楽器を始めるのに金を持っていないって……
「貸して……? 」
「……なんで」
俺は、貸したいとは思えなかった。
実際言って俺も新しい『Fernandes』というメーカーのストラトギターを買ってしまったからだ。
よって金がない。
「バイトすれば? 」
高草木が三枝さんに提案した。
まぁ、高校生でもっと金が欲しいといえばバイトをするか、おじいちゃん・おばあちゃんに頼み込むしかないだろうな。
「ちぇ、まぁする予定だったしね」
三枝さんは、舌打ちをするけどそれほど嫌ではないようだった。
よって三枝さんは、来週にバイトの面接を受けてくることになった。