ACT.05 天才な天災 01
アコースティックギター愛好会に入部して最初の集まりの日。
俺の隣には憲剛が立っている。
俺たち新入部員は、みんなに挨拶をするためにみんなの前に立っていたのだが......
「お前がこの部活に入るとはな......! 」
小さく笑いながら憲剛が話しかけてきた。
完全にバカにしている笑い方だ。
「色気付いたのか? それとも、モテたいのか......!? 」
俺は返事を返さなければ、目も合わせない。
「は〜い! 私は、『三枝 木葉』と言いま〜す!! 」
俺の後に自己紹介をする小さいオレンジ色の短髪の三枝さんという女の子は、元気良く右手を挙げながら話し続けた。
「私は、楽器をやったことがないから迷惑をかけるかもしれないけど、よろしく!! 」
随分馴れ馴れしかった......
「あ!それと、やっぱり楽器をやるならバンドを組んで文化祭に出たいと思ってるので、気軽に声をかけてください。待ってま〜す! 」
追加してきた言葉は、楽器をやる人の憧れの1つのことだった。
俺だって憧れているよ。
「ねぇ、君って何か楽器をやってるの? 」
全員の自己紹介が終わった後、俺は三枝さんに話しかけられた。
「まぁ、ギターをちょっと......」
「私ね私ね、あの太鼓をボンボンするヤツやってみたいの!! 」
「......やりたいなら御自由に、じゃあ」
俺は振り返りその場を後にしようとした......が。
「待ってよ待ってよ! 不知火くんもやろうよ! 」
「いやだから、俺はギターを......」
「バンドやろうよ!! 」
......いや、駄々をこねられても。
「他のヤツとやればいいだろ」
「やだやだ、私は不知火くんとがいいの! 」
その言葉にドキンッとしたものがいた。
いや、事実上俺だが。
「なんで俺と? 」
「なんかね、ビビッときたの! 」
......なんかこいつ小学生みたいだな。
「............だけ? 」
「だけ」
......なんだよこいつ!
マジで変なヤツに捕まったな。
どうしようか......?
「どうした? 」
俺が困っているところに、タイミング良く高草木が来た。
「実は、『かくかくしかじか』って感じでな」
高草木には全て話した。
「別にいいんじゃねぇか? 」
高草木は即答だった。
「俺たちもどうせバンド組むんだろうし、人手は足りねぇんだし」
確かに。
「それじゃあ、使えるかどうか診断をするからこっちへ来い」
一応楽器に向いているかどうかを確認するために三枝さんが言っていた『太鼓をボンボン』する楽器のところへ向かうことにしたのだった。