ACT.02 高校デビューしてはいけないのですか? 02
「なぁ、お前ってなんか趣味とか持たねぇの?」
百紅祭の日の放課後。俺は、ついさっきまでステージに立っていた高草木と帰路についていた。
ついでに高草木は、ちゃんと愛用のギターを背中にしょっていた。
「楽しいことが無いんだよな......」
俺は、あかね色に染まる空を見上げた。
「それじゃあ、楽器なんてどうよ? 」
「難しくないか? 」
「いや、簡単だぞ『リコーダー』」
「って、リコーダーかよ!!」
俺は、思わず高草木の顔を覗き込んだ。
「それは半分冗談として......」
「どこが本当なんだよ......? 」
「リコーダーのところ」
「そっちかよ!? 」
少し沈黙の時間が流れた。俺は、高草木のあかね色の夕陽に黄昏ている姿を見ることしか出来なかった。
いや、言動を起こさなかったのだ。
「ギターとかどうだ!? 」
ふと、思い出したかのように高草木は提案してきた。
その顔は、密かに笑っているようにも見えてしまった。
「まぁ、見ててカッコよかったし。やってみてもいいんだけど......」
やってみたいとは、思っていた。
実際、高草木の演奏を見て感動もしたし。
だけど......なぁ?
「ギターって高いんじゃないんか? 」
「今のご時世だぞ? 安いのもあるよ」
そう言うと高草木は、自分のスマホを取り出して画面とのにらめっこを始めた。
「ほら、初心者用なら一万円もしないんだぜ? 」
高草木に、スマホを渡されて俺もにらめっこを始めた。
特に懐と。
「意外に安いんだな」
高草木の画面には、Am○zonが開かれていて、初心者用ギターセットが表示されていた。
このセットには、ギター本体(青色)とミニアンプ、シールド(ギターとアンプを繋げるコードのこと)、ピック×2&ピックケース、ギターケースの計7点が付いているらしい。
これまたついでに、ギターとミニアンプのメーカーは『Photo Genic』で、ピックが『Fender』だった。
「小学校からの仲として教えてやるからさ」
「......よし!試しに買ってみるか! 」
俺は、自分のスマホでAm○zonを開いて、高草木のスマホに載っているギターセットを注文した。