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A SONG FOR YOU

作者: 頼羅

私は将来ミュージシャンになりたい。

そう思って週に二日ボイトレに通い、土曜と日曜の夜はストリートミュージシャンをやっている。

待ちゆく人は私の歌なんかに興味はなく、たまにからかい気味で酔ったおじさんが歌を聴いている。

それでも私は歌うことが好きなので構わなかった。

自分で詞を書き曲をつけ歌うことが一番楽しかった。

欲を言えば、いつかはみんなが買ってくれるようなCDを作りヒットしてもっともっとたくさんの人に歌を聴いてほしいとは思っている。

ある晩、いつものように歌っていたら熱心に私の歌を聴いている人がいた。

歌い終わった後、まんべんな笑みと拍手を私に送ってくれた。

「うん、感動した。なんていうか…心がきれいになる感じしたよ。」


「あっありがとございます…。」

今まで歌を聴いて誉めてくれた人はいなかったので、とてもうれしかった。

「いつもやってるの?また聴きにきていいかな?」

「えっと…だいたい土日はここでやってます。よかったらまた聴きにきてください。」

「ありがと。俺、拓磨って言うんだ。また聴きにくるね。がんばってね。それじゃ。」

これが拓磨と私の短い出会いであった。

それからほぼ毎回拓磨は私の歌を聴きにきた。

一番前で笑顔で私の歌を聴いていてくれた。

ギターをしまって一緒に帰ってるとき、拓磨は言った。

「自分で歌作ってるんだよねー。すごいな〜。ねぇ、いつか俺の歌作ってよ。」

「えっ!拓磨の歌?うーん…。」

「まぁ、ギャグっぽくでいいからさ。できたら一番に聴かせて。」

「じゃあ、気が向いたら作るよ。」

内心どきどきしながら隠すかのよーに私は答えた。

「じゃー、俺ん家ここだから。明日も歌がんばれよ!おやすみ。」

右手を大きく振って拓磨は笑っていた。

家に帰ってから私は拓磨のことばかり考えていた。

まだ知り合って3週間くらいしかたってないけど、知らず知らず私は拓磨を好きになっていた。

拓磨の曲はバラードにしよう。

で完成したら告白しようって決めていた。

拓磨のことを思い浮かべると、どんどんフレーズが思い浮かんでくる。

今までにないほど曲作りが楽しかった。

拓磨の歌が完成しMDに録音をし拓磨にあとは渡すだけだ。

思い切って拓磨に連絡をとり会う約束をした。

約束の日まで私は毎日不安と期待でいっぱいであった。

約束の日、駅の前で待ち合わせをした。

しかし拓磨は来なかった。

何時間も待ったが拓磨は来なかった。

私は泣きながらMDを捨てようかと思ったが、拓磨への思いを捨てることができず家にそのまま持ち帰った。

裏切られた気持ちでいっぱいで私は泣き続けた。

次の日、路上で歌うことはさすがにできなかった。

泣いてたってしょうがない。

気持ちだけは伝えよう。

思い切って拓磨の家に言ってみることにした。

家の前にきて不安が私を覆った。

喪服を着た人達が出入りしている。

張り詰めた空気がそこには流れていた。

勇気を振り絞って家に近づいてみた。

入り口には拓磨の名前が書いてあった…。

頭がまっしろになった。

これは夢ではないか、これは現実でないと何度も何度も言い聞かした。

しかしそれはまぎれもない事実であった。

家の前で茫然と立ちすくんでいた私に拓磨に似ている男性が話し掛けてきた。

「あの…拓磨の友達ですか?もしかして由貴さん?」

「…はい。」

「私は拓磨の兄なんですが、生前拓磨が由貴さんのことを私に話してくれてね。」

「なんで…拓磨はどうして…。」

泣かずにはいられなかった。

拓磨がこの世にいないと考えることはできなかった。

拓磨のお兄さんは私を家に入れてくれて、話をしてくれた。

「…信じがたいとは思うんだけど、拓磨は一昨日車にはねられて即死だった。運ばれた時は手遅れだった。私もまだ受け入れられなくて…。」

お兄さんの身体が震えていた。

「…すいません。亡くなる前に拓磨と話をしていた時、由貴さんあなたの名前がでてきましてね。綺麗な声で歌を歌うって癒されるって言ってました。それから事故の時に持ってた手紙です。」

お兄さんから手渡された汚れた手紙にはこう書かれていた。

―俺の曲楽しみにしてる。

由貴がすきだよ。

これからも歌を歌ってくれ。

―たったこれだけの短い手紙を私は何回も読み返し、心の中で繰り返しつぶやいた。

涙がとまらなかった。

それから、私は無気力になりボイトレにも行かず路上でも歌わず、家に引き込もり、拓磨を思い浮べは泣きを繰り返していた。

あの路上、拓磨との思い出の場所に経つ勇気がなかった。

泣いて時が過ぎていったある日、拓磨が言った言葉を忘れてた言葉を思い出した。

『おまえの歌声はよく通るから遠くまで聞こえるよな。

だからいつまでも遠くにいても聞こえるよう歌ってほしいな。

』あの時はちゃかしてるのかと思って流していた言葉に重さを感じた。

泣いてるだけじゃダメなんだ…。

その晩、久しぶりにストリートミュージシャンをすることにした。

久しぶりに歌を歌った。

楽しいということさえ忘れていたが歌ってると気持ちが解放される気がした。

相変わらず聴いてる人は少なかったが私は続けた。


「最後の曲は、最愛の人に送る曲です。A SONG FOR YOUです。聴いてください。」


観客はほとんどいなかったが、それでも私は拓磨の曲A SONG FOR YOUを力一杯大きな声で歌い始めた。


『私の通る声は天国まで届いてる?一生懸命作ったんだよ。


拓磨のための曲だよ。

拓磨が大好きだよ。

』自然と涙が溢れたが、歌をやめなかった。

歌い切った時はじめよりたくさんの観客が足を止めて私の歌を聴いていた。

何人かが拍手をした。

いつもの一番前の場所に拓磨が笑顔で拍手している気がした。『…ありがとう。。』

最後まで読んでいただきありがとうございます。最後暗くなってしまったのですが、純粋さを出したかったので大目に見てください。初めて書いたので…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 拓磨との出会いのシーンで、年頃がわかるともっと良かったと思いました。
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