プロローグ
最初に、〝オメテクトリ〟と〝オメシワトル〟と言う、一対の創造神が居た。
彼らは、宇宙、神々、そして地球を創造し、四人の息子を生んだ。
長男の赤い神、トラトラウキ・テスカトリポカ。
次男の黒い神、ヤヤウキ・テスカトリポカ。
三男の白い神、ケツァルコアトル。
四男の青い神、オミテクトリ。
彼らが生まれて六百年後―――。
三男のケツァルコアトルと、四男のオミテクトリにより、天地創造が行われた。
彼らは協力して、火や、天や、地、海、地下界などを創り、そして一組の男女を創った。
男は〝ウシュムコ〟、女は〝シパクトナル〟と名付けられ、二人の間から人間が生まれた――。
――時は経ち、神々の住まう大地に、人間達が〝テノチティトラン〟という都市を築いた。
彼らは大地を耕し、町を増やし、遂に〝アステカ帝国“という国を建国した。
その国の民達は、古くから神々の存在を感じ、それを信じ、代々祀り上げてきた。
その中に、四人の兄弟神が居た。その内の二人に、ケツァルコアトルと、人々に〝テスカトリポカ〟と呼ばれるヤヤウキが在った。
二人は正反対だった。生贄を求めるテスカトリポカと、平和を好むケツァルコアトル。それ故に、しばしば兄弟喧嘩の領域を超えた問題を起こしていた。
そして、ある時遂にケツァルコアトルが、テスカトリポカによってアステカの地から追い出された。
勝敗は、決まったように思えただろう。
だが、彼は言ったのだ。
『私はアステカから永久に消える訳ではない。〝一の葦の年〟に必ず帰還しよう』―――。
(『アステカ神話』より)




