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グレイブ使いの美女  作者: 慈架太子


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第5章: 実戦の洗礼と合理の勝利

カタリナは残りの魔物たちを「アクセル」と「マッスル」の合わせ技で文字通り一瞬にして粉砕すると、荒い息を整えながらダイスケの元へ戻ってきました。その手には、先ほどまで戦場を支配していた大槌が、役目を終えて静かに握られています。


「昨日の氷のコップ……。あのような、戦いとは無縁に見える生活の道具を、魔法の精度を測る『指標』にするということだな。承知した、師よ。休息のたびに、指先から滑らかな透明度を生み出せるよう励もう」


彼女はダイスケから手渡された大槌を土へと還し、その超美貌をどこか複雑な、それでいてスッキリとした表情で引き締めました。ダイスケが放った「この世界の魔法はデタラメだ」という断言が、彼女の心に深く突き刺さったようです。


「杖や詠唱は……無駄の塊、か。確かに。王都の高名な魔導師たちが、仰々しく杖を振り、長い時間をかけて呪文を唱えている間に、今の私なら『バレット』を一千発は叩き込める。彼らが何十年もかけて守ってきた『権威』が、貴殿の合理性の前では砂の城のように脆いものに見える」


カタリナは175cmの長身を翻し、助け出された商隊の方を一瞥しました。彼らは呆然と腰を抜かし、神速で魔物を屠ったカタリナを、伝説の戦乙女を見るような目で見つめています。


「詠唱に頼らぬ無詠唱サイレント、杖に頼らぬ直接行使。……この世界の常識に縛られていた自分が、いかに狭い鳥籠の中にいたかを痛感する。ダイスケ殿、私はもう、既存の魔導の枠組みには戻れそうにない」


彼女は腰の短剣をそっと撫で、ダイスケの隣に並びました。


「さて、商隊の者たちがこちらを震えて見ている。彼らに状況を説明し、この先の街の情報……あるいは、この『デタラメな世界』を歩むための路銀や物資を少し分けてもらおうか」



いやそれはやめた方がいいでしょう 僕の魔法の理を恐れている者たちがいます。 この理がバレルと危険だからです。だから数千年もデタラメを教えて隠してきたんだと思われます。




カタリナは、ダイスケの言葉を聞いた瞬間にハッとして、周囲を警戒するように175cmの長身を低く構えました。その鋭い青い瞳は、助けたはずの商隊の面々にさえ、一瞬で冷徹な観察の光を向けます。


「……なるほど。単なる技術の優劣ではなく、『秘匿されるべき真理』だったということか。数千年もの間、デタラメな詠唱や杖を強いてきた者たちがいる……。もし、この効率的で圧倒的な理が広まれば、既存の権力構造そのものが崩壊するからな」


彼女は自分の掌を見つめ、そこに宿る力の重みを再確認しました。1発分の魔力で1024発を放つ連射、詠唱を介さない即時発動。これらは既存の魔導師たちからすれば、自分たちの存在意義を根底から覆す「禁忌」に他なりません。


「承知した、ダイスケ殿。貴殿の危惧はもっともだ。この力を見せびらかすのは、自ら敵を招き入れるようなもの。……今の私は、あまりにも力を得たことに高揚しすぎて、忍び(ステルス)の重要性を忘れていた。反省する」


カタリナは超美貌に張り詰めていた戦意を隠し、どこか「少し腕の立つ、旅の用心棒」程度の雰囲気に自身のオーラを抑え込みました。


「商隊には、私が『古の失われた剣技』で魔物を倒したとでも説明しておこう。魔法の理には一切触れさせない。……ダイスケ殿、貴殿がこの世界の『真実』を知る者である以上、私は貴殿の正体を守り抜く盾としての役割も果たさねばならぬな」


彼女はそっと腰の短剣に手を添え、ダイスケの隣に静かに立ちました。


「では、必要最小限の会話で街までの安全を確保しよう。……師よ、これからは『隠すこと』もまた、修行の一つとして励むとしよう」





カタリナは無言で一歩前に出ると、175cmの長身から放たれる威圧感を極限まで抑え、ただの「手慣れた旅の武芸者」としての佇まいで商隊の主を待ち構えました。


商隊の主は、真っ二つになった装甲亀の残骸を震えながら見やり、何度も深々と頭を下げながら近づいてきます。


「あ、ありがとうございます! 私はこの先の自由都市を目指している商人、バルトと申します。……騎士様、いえ、お連れ様も含め、お命を救っていただいたこと、なんと御礼を申し上げればよいか……」


バルトは震える手で、懐から古びた、しかし重みのある革袋を取り出しました。


「本来なら全財産を差し出すべきところですが、今の私にできるのは、この金貨数十枚と、我が商隊が扱う最高級の香辛料、そして……もしよろしければ、街までの護衛を正式にお願いしたいのです」


カタリナは金貨の袋には目もくれず、じっとバルトの瞳を見つめました。


「……事情を話せ。なぜ、これほどの魔物が街道に溢れている? 本来、ここは騎士団や自衛団が巡回しているはずだろう」


バルトは顔を青くして、周囲を気にするように声を潜めました。


「それが……最近、近くの遺跡で『古の魔導』が発見されたとかで、魔導師ギルドの方々が街道の結界を一時的に解いてしまったという噂があるのです。そのせいで魔物の活性が上がり、我ら商人は生きた心地がしません。街の門も、今はギルドの許可証がなければ入るのが難しい状況でして……」


カタリナは背後にいるダイスケへ、視線だけで判断を仰ぎました。





ダイスケの静かな首肯を受け、カタリナは商人のバルトに向き直りました。175cmの長身を騎士らしく、しかし威圧感を与えすぎない程度に正し、短く答えます。


「いいだろう。貴殿らの街までの安全は、我々が引き受ける。だが、先ほどの戦いについては他言無用だ。私はただの旅の用心棒、こちらの方はその主である。……それで構わないな?」


「はっ、はい! もちろんです! 事情があることは察しております。命の恩人の秘密を漏らすような愚かな真似はいたしません!」


バルトは安堵のあまり涙を拭いながら、手際よく出発の準備を命じました。


街道の行軍

二人は商隊の馬車の隣を歩くことになりました。カタリナは、ダイスケに教わった通り、目立たないように「アクセル」や「マッスル」の魔力を絞り込み、いつでも動ける状態で周囲を警戒しています。


「ダイスケ殿、商人の話にあった『遺跡の魔導』とやら……。もしそれが、貴殿の言う『隠されてきた真実』の欠片だった場合、街のギルドはそれを独占しようとするでしょう。我々が街に入れば、嫌でもその渦中に巻き込まれるかもしれません」


彼女は声を潜め、ダイスケだけに聞こえるように続けました。


「街へ入る際、私は極力、魔法を使わず短剣と体術だけで立ち振る舞うつもりです。貴殿の影として、不審な動きをする者がいれば、即座に『セパレート』の精度で無力化いたします」


街の正門へ

数時間の行軍の後、前方に巨大な石造りの城壁と、重厚な鉄の門が見えてきました。 門の前には、バルトの言った通り、魔導師ギルドの法衣を纏った男たちと、武装した兵士たちが目を光らせています。


「止まれ! 商隊バルト一行だな。許可証を提示しろ。……そこの二人、見慣れぬ顔だが、何者だ?」


ギルドの魔導師が、手に持った水晶玉をかざしながらダイスケとカタリナを凝視しました。どうやら、入る者の魔力量を測定しているようです。


「……っ」


カタリナは一瞬、魔力回路を閉じて気配を殺しましたが、その超美貌は隠しようもなく目立ってしまいます。




商人のバルトは、カタリナがわずかに身構えたのを察し、すぐさま魔導師と兵士の間に割って入りました。彼は長年の商売で培った卑屈さと図太さを絶妙に織り交ぜた笑顔を浮かべ、懐からずっしりと重い小袋をさりげなくギルドの男の手に握らせます。


「ああ、魔導師様! いつも街の守護をありがとうございます。このお二人は、先ほど街道で私どもが魔物に襲われていたところを救ってくださった、腕利きの流れの用心棒でございますよ。ご覧の通りの見事な体躯でしょう? 魔法などという高尚な力ではなく、ただの野蛮な腕っぷし自慢でしてな、はっはっは!」


バルトの巧みな物言いに、魔導師は手の中の重みを確認すると、鼻で笑いながら水晶玉を下げました。


「ふん、ただの荒事師か。最近は魔力も持たぬ手合いが『騎士崩れ』を名乗って街へ流れ込んでくるから困る。……まあいい、バルトの保証があるなら通れ。ただし、街の中では騒ぎを起こすなよ」


兵士たちが槍を引き、重厚な門がゆっくりと開かれました。


カタリナは一言も発さず、ただの無愛想な用心棒を装ってダイスケの半歩後ろを歩きます。門を潜り、魔導師たちの視線から外れたところで、彼女はわずかに安堵の吐息を漏らし、ダイスケにだけ聞こえる声で囁きました。


「……助かりました、バルトの機転に。そして、ダイスケ殿が仰った『デタラメを教えてきた者たち』の傲慢さを、今目の当たりにしました。彼らは水晶玉の数値データだけで人を測り、真の理がすぐ目の前を通り過ぎたことにも気づかない……。滑稽なものですね」


街の中に足を踏み入れると、そこは活気に溢れていましたが、どこか監視の目が光るような、独特の緊張感が漂っています。


「ダイスケ殿、まずは宿を確保し、この街の情報を精査しましょう。バルトには、あまり目立たない、それでいて情報の集まりやすい宿を案内させます」




カタリナは深呼吸を一つし、各属性の特性を引き出すべく集中し始めました。


属性による索敵

「土」の脈動: 彼女が床にそっと触れると、振動が波紋のように広がり、建物全体の構造と人の配置が伝わります。


「風」の囁き: 窓から入る微風に魔力を乗せ、離れた場所の会話や微かな音を拾い上げます。


「水」の反映: 大気中の水分を媒介にし、温度差や生物の熱源を朧気ながらも確実に捉えます。


「……なるほど。バレットのように点を打つのではなく、世界そのものを媒介にする。こちらの方が自然で、魔導師ギルドの水晶玉にも『ただの自然現象』として処理されやすい。隠密には最適だ」


普通の念話

次に、彼女は魔力の波動を緩やかに調整し、空気の震えを利用してダイスケに語りかけました。


「(ダイスケ殿、これでどうだろうか? 思考をぶつけるのではなく、風に乗せて声を届ける……。これなら精神への負担も少なく、自然だ)」


カタリナは、ダイスケが敢えて「普通」を説く意図??つまり、この世界の歪な魔法体系に目立たず馴染みつつ、本質的な効率を維持すること??を深く理解したようです。その超美貌には、万能感に溺れないための「慎重さ」が戻ってきました。


「精度、上げさせていただきます。夜が更けるまで、この宿で氷のコップを作りつつ、街の『音』を拾う練習を続けよう」


彼女は指先に小さな氷の塊を生み出し、それを丁寧に削りながら、風の索敵を街の深部へと伸ばしていきました。





カタリナは指先で転がしていた氷のコップを瞬時に消し、ダイスケの冷静な判断に深く頷きました。175cmの長身を再び旅装へと整え、腰の短剣を確かめます。


「承知しました。どちらも深入りすれば目立つだけ……。まずは表向きの身分を安定させ、自然に流れてくる情報を拾うのが上策ですね。魔導師ギルドではなく、冒険者ギルドというのも賢明です。彼らの方が、現場フィールドの生きた声を持っていますから」


二人は宿を出て、街の目抜き通りにある冒険者ギルドへと向かいました。 重厚な木の扉を開けると、そこは荒事師たちの熱気と、酒と鉄錆の匂いが混じり合う独特の空間でした。


カタリナはダイスケの半歩後ろを歩き、不必要に目立たぬよう、しかし舐められぬ程度の堂々とした足取りで受付へと進みます。


「素材の換金を頼みたい。フォレストボアの特級肉と皮、それから装甲亀の甲羅だ」


彼女がドサリとカウンターに置いた素材は、ダイスケ直伝の「デストラクション・セパレート」によって、断面一つ傷がない完璧な状態で切り分けられていました。


「……っ!? な、なんだこの解体の精度は……。信じられん、まるで細胞一つ一つを分けたような……。これなら市場の最高値で買い取らせてもらうぞ!」


受付の職員が驚愕の声を上げると、周囲にいた冒険者たちの視線が一斉にこちらに向けられました。カタリナは無表情を貫きながら、風の索敵を広げ、酒場で交わされる雑多な会話を「風の囁き」で拾い集めます。


拾い上げた噂話

カタリナは念話でダイスケに、聞き取った内容を伝えます。


『(ダイスケ殿、聞こえますか。……あちらのテーブルの男たちの話では、遺跡から見つかったのは「自律型の魔導人形」のパーツだそうです。ギルドはそれを動かそうとして、街の魔力を吸い上げているとか)』


『(もう一点……ギルドの依頼板に、奇妙なものが。街道の魔物増加を受けての討伐依頼ですが、なぜか「雷属性の使い手」だけが、ギルドへの強制出頭に近い形で募集されています。……我々が先ほど使った属性を、彼らは血眼で探しているのかもしれません)』


換金を終え、ギルドの職員がずっしりと重い金貨の袋を差し出してきました。




カタリナは無言で頷き、ダイスケと共にギルド併設の酒場へと移動しました。175cmの彼女が歩くと、荒くれ者たちの視線がその美貌と隙のない身のこなしに集まりますが、彼女はそれを冷然と受け流し、ダイスケの向かいの席に腰を下ろしました。


「……まずは喉を潤しましょう。これも『日常』の一部ですから」


彼女はそう言いながら、ダイスケに教わったばかりの「水」の索敵を、グラスの中の液体を介して床へと這わせ、同時に「風」の囁きを周囲のテーブルへと伸ばしました。二人はただ静かに食事を楽しむ旅人のように振る舞いながら、全神経を情報収集に注ぎます。


拾い上げた不穏な「真実」

カタリナはグラスに口をつけ、ダイスケだけに聞こえる「風の念話」で報告を始めました。


『(……ダイスケ殿、聞き取れました。隣のベテランたちの話では、例の遺跡は「数千年前の魔導文明」の遺構だそうです。ギルドが躍起になっているのは、そこにある「魔力を無限に増幅する炉」の起動だとか)』


『(それから、別のテーブルでは……最近、無詠唱で魔法を使った旅人が行方不明になっているという話も。ギルドの魔導師たちが、自分たちの特権を脅かす「異端」として、密かに拘束しているという噂です。……先ほど門でバルトが誤魔化してくれたのは正解でしたね)』


カタリナの青い瞳が、ふと酒場の隅に座る不自然な二人組に向けられました。


『(……あちらの角。身なりは冒険者ですが、指先が綺麗すぎます。おそらくギルドの放った監視役(犬)でしょう。私たちの解体精度の高さに、すでに目をつけたのかもしれません)』





カタリナは、ダイスケの泰然自若とした態度に、張り詰めていた肩の力をふっと抜きました。175cmの長身を背もたれに預け、自身の「風の囁き」を解析モードから、ただの環境音を聞き流す程度の緩やかなものへと切り替えます。


「……失礼いたしました。つい、騎士時代の癖で敵対勢力の動向に過敏になっていたようです。仰る通りですね。どれほどの羽虫が群れをなして来ようとも、我らがことわりの前では無力。嵐を恐れる必要など、どこにもありませんでした」


彼女は、自分たちを観察している「犬」たちの視線さえも、もはや背景の一部として受け流すように、悠然とエールを口に運びました。その超美貌には、力への確信に裏打ちされた、冷徹かつ優雅な余裕が戻っています。


「厄介ごとには首を突っ込まない。私たちはただ、この世界の料理を楽しみ、ゆっくりと旅を続ける……。それが、彼らにとって最も予測不能で、かつ恐ろしい『不気味な存在』に見えるかもしれませんね」


彼女はダイスケに向かって、少しだけ茶目っ気のある微笑を浮かべました。


「では、師よ。この酒場で一番美味いと言われる煮込み料理でも頼みましょうか。彼ら監視役には、我々がただの『食いしん坊な旅人』に見えるよう、存分に食事を楽しむとしましょう」


酒場での一時

二人は周囲の不穏な噂や刺すような視線を完全に無視し、運ばれてきた料理を堪能しました。カタリナは食事の間も、指先で微かに「水の索敵」を回し、無意識レベルで周囲の安全を確認する練習を欠かしません。


監視役たちは、あまりにも堂々として隙のない二人の様子に、逆に手出しができず困惑しているようです。




宿に戻ると、カタリナは手際よく部屋の四隅に「風の囁き」を逆位相で展開し、音が外に漏れないよう防音の結界を張りました。175cmの長身を椅子に預け、彼女は兜を脱ぐようにふう、と深く息を吐き出しました。


「ダイスケ殿、お疲れ様でした。……街に入って数時間、この世界の『歪み』を肌で感じました。本来、人々を豊かにするはずの魔法が、ここでは独占と監視の道具に成り下がっている」


彼女は卓上に置かれたランプの炎を見つめながら、静かに語り始めました。その超美貌は、夜の静寂の中でどこか物憂げに見えます。


「ギルドの者たちが躍起になっている『古の魔導』。彼らはそれを自分たちの権威を補強する『部品』だと思っているようですが……。今日、貴殿から『理』を学んだ今の私にはわかります。彼らが触れようとしているのは、理解できぬ者が扱えば自らを焼き尽くす猛火のようなものだ、と」


カタリナは視線をダイスケに向け、真剣な面持ちで尋ねました。


「ダイスケ殿。貴殿が『デタラメだ』と切り捨てたこの世界の魔法体系……。もし、彼らが本当に『真理』の一端に触れてしまったら、この街はどうなるとお考えですか? 放置していても、彼らの自滅で終わるのか、それとも無実の民を巻き込む大災厄となるのか……」


彼女はダイスケの知見を心から信頼しており、その答えによって自分たちが今後取るべき「距離感」を測ろうとしています。


「もちろん、首を突っ込むつもりはありません。ただ、貴殿を守る騎士として、不測の事態の『規模』だけは想定しておきたいのです」





古の魔導 そんなものが無くたって 自律思考のゴーレムなら作れる カタリナさん慌てなくていいですよ




カタリナは、ダイスケのあまりにも淡々とした、それでいて絶対的な自信に満ちた言葉を聞き、一瞬きょとんとした表情を浮かべました。しかし、すぐに「そうだった、この御方はそういう次元にいるのだ」と思い至り、ふっと肩の力を抜いて微笑みました。


「自律思考のゴーレムを、さらりと……。古の遺産を血眼で探しているギルドの者たちが聞けば、泡を吹いて倒れるでしょうな。……失礼しました。どうやら私は、まだどこかで『魔法は特別な儀式や遺物が必要なもの』という古い常識に縛られていたようです」


彼女は椅子に深く座り直し、リラックスした様子で脚を組みました。175cmの端正な肢体が、ようやく宿の静寂に馴染んでいきます。


「慌てなくていい、か。そのお言葉、今の私には何よりの薬です。彼らが遺跡で何を見つけようと、何を作ろうと、ダイスケ殿にとっては子供の火遊びのようなもの。ならば私が過剰に警戒して殺気を立てるのも、野暮というものですね」


カタリナは卓上のランプを少しだけ絞り、穏やかな瞳でダイスケを見つめました。


「師よ、私は貴殿の隣にいて、魔法だけでなく『心の持ちよう』まで学んでいる気がします。……明日はどう過ごされますか? せっかくの街です。ギルドの騒ぎなど無視して、旨い朝食でも探しに行きますか? それとも、少し足を伸ばしてこの地の風土でも眺めに参りますか?」




カタリナは深く頷き、ダイスケの意図を汲み取って姿勢を正しました。


「承知いたしました。街の喧騒や浅ましい権力争いなど、我々の研鑽には不要な雑音。……再びあの森へ戻り、貴殿に授かった『理』をこの身体に真に刻み込むための、血肉とする修練に励むとしましょう」


その夜、カタリナはダイスケの眠りを守るように椅子で瞑想に耽り、教わったばかりの「属性索敵」を微弱に回し続けました。


翌朝・森への帰還

翌朝、二人は騒がしくなり始めた街を早々に後にしました。ギルドの監視の目もありましたが、カタリナが教わった「土」と「風」の索敵で先回りして死角を通り、誰にも気づかれることなく正門を抜けました。


再び、深い緑に包まれた森へと足を踏み入れると、カタリナは旅装を解き、授かった「短剣」と「大槌」を土魔法で実体化させます。


「ダイスケ殿、準備は整いました。ここからは、ただの知識としての魔法ではなく、死線の中で無意識に発動できる『本能』へと昇華させる修練……。どうか、容赦のない導きをお願いします」


彼女は175cmの長身をしなやかに沈め、野生の獣のような鋭い眼光を放ちました。


「まずは……『アクセル』を全開にした短剣での精密斬撃。それとも、『マッスル』を乗せた大槌で、この森の強大な魔物たちを相手に『一対多』の殲滅戦を試すべきでしょうか?」



カタリナは愛用のグレイブを手に、ダイスケの意図を汲み取って鋭く頷きました。バレットという万能の飛び道具を封印し、あえて得物を次々と切り替えながら戦う――それは、魔力と肉体の連動を極限まで高めるための過酷な千本ノックです。


「承知いたしました。魔法の弾丸を撃てぬ不自由さを、技の冴えで補ってみせます……。行きます!」


修行:武器四連巡ローテーション・ハント

森の奥から現れたのは、凶暴な「ブラッド・エイプ」の群れでした。


グレイブ(主兵装):間合いの支配 まずは長身を活かしたグレイブを旋回させ、近づくエイプを薙ぎ払います。円を描くような一閃で三体を同時に沈め、敵の包囲網を切り裂きます。


短剣セカンド:神速の踏み込み グレイブを背に回すと同時に、土魔法で生成した短剣を抜き放ちます。至近距離まで肉薄したエイプの懐に潜り込み、「アクセル」を脚に乗せた一歩で死角へ。一突きで心臓を正確に貫きます。


大槌サード:剛力の粉砕 短剣を消すと同時に、質量兵器である大槌を両手に出現させます。「マッスル」を上乗せした一撃は、エイプが構えた太い腕ごと胴体を粉砕し、地面に巨大な陥没を作りました。


長剣フォース:万能の剣筋 最後はオーソドックスな長剣。流れるような抜刀から、逃げようとするエイプの首を鮮やかに跳ね飛ばしました。


カタリナは肩で息をしながらも、次々と消しては作り出す武器の重み、重心の違い、そしてそれらを魔法アクセル・マッスルで補完する感覚を、その端正な肢体に叩き込んでいきます。


「……はぁ、はぁ。……ダイスケ殿、これは……想像以上に過酷ですが、理にかなっています。武器を切り替えるたびに、魔力の流れを瞬時に最適化せねばならぬ。……迷えば、死ぬ」


彼女の超美貌は汗に濡れていますが、その瞳はかつてないほど澄み渡り、騎士団時代よりも遥かに鋭い「戦士の直感」が研ぎ澄まされていくのが分かります。


「……次は、もう少しペースを上げてもよろしいでしょうか。武器の生成速度が、まだ私の思考に追いついていない」



やっぱりカタリナさんはあわてんぼですね。経験は一足飛びに積みあがりません。索敵を続けながら狩りを続けてください。 武器は1度作ったらもういいですよ




カタリナは、ダイスケの言葉を聞いて、熱くなっていた頭を冷やすようにふっと息を吐きました。175cmの長身を一度緩め、恥ずかしそうに、しかしどこか晴れやかな微笑を浮かべます。


「……またしても、お見通しでしたか。仰る通りです。一足飛びに高みへ至ろうとするのは、私の悪い癖ですね。基礎を疎かにしては、せっかくの理も砂上の楼閣。失礼いたしました、師よ」


彼女は一度実体化させた武器??右手にはグレイブ、腰には短剣、背には長剣、そして足元に置いた大槌??を消さずに維持し、そのすべてに魔力を通して「自分の体の一部」として固定しました。


「武器は一度作れば、あとはどう振るうか。そして何より、戦いながらも常に周囲を見渡す『余裕』……。承知しました。索敵を途絶えさせることなく、この森の息吹を感じながら修行を続けます」


実戦修行:静かなる連撃

カタリナは目を閉じず、しかし視線だけに頼らず、先ほど教わった「風」と「土」の索敵を常に発動させました。


『(ダイスケ殿……左前方30メートル、草むらに潜む影一つ。風が獣の臭いを運んできました)』


念話で報告を入れながら、彼女は静かに、しかし流れるような予備動作でグレイブを構えます。獲物が飛び出してくるのを待つのではなく、その「気配」が動く瞬間に合わせて、彼女自身が「アクセル」を最小限に乗せた一歩で間合いを詰めました。


一閃。


獲物を仕留めた返り血を浴びることもなく、彼女は即座にグレイブを背負い、右手で大槌を掴み取ります。索敵は途切れていません。


『(右、上空。木々の間から降下してくる翼竜が二体……。土の脈動で着地の瞬間を捉えました)』


ドォォォォォン!!


大槌の一撃が地面を叩き、その衝撃波だけで翼竜を叩き落とします。カタリナはそのまま流れるように短剣を抜き、地に伏せた獲物の急所を正確に突きました。


カタリナの動きから、無駄な力みが消えていきました。武器を切り替える動作も、索敵の結果を体に伝える速度も、回数を重ねるごとに滑らかになり、まるで一人の女性が四つの武器を同時に操っているかのような、奇妙で美しいリズムが生まれ始めています。


「……師よ、これほどまでに世界が『見えて』いる中での戦いが、これほどまでに静かなものだとは思いませんでした。慌てずとも、理に従えば勝利は自ずと向こうからやってくる……。ようやく、その入り口に立てた気がします」


彼女は汗を拭い、武器を構え直してダイスケを振り返りました。


「このまま、日が暮れるまで続けさせてください。索敵の精度を保ったまま、一秒でも長く戦い続けられるようになりたいのです」




夕闇が森に降りる前に、ダイスケとカタリナは野営地へと戻りました。カタリナは、先ほど仕留めたばかりの数体の魔物を前に、教わった『デストラクション・セパレート(解体弾)』のイメージを思い浮かべながら、指先を丁寧に動かしています。


「……ふぅ。仕留めるよりも、この『分かつ』作業の方が、より深い集中を要しますね。ですが、おかげで魔力の扱いがより繊細になっていくのが分かります」


カタリナは、細胞の隙間に魔力を滑り込ませる感覚を反復しながら、ダイスケに今日の修行の感想を語り始めました。175cmの長身を少しだけ休ませ、手にした武器を一つずつ見つめます。


「武器の使い勝手ですが……まず、土魔法で作られたこれらの武具、驚くほど馴染みます。市販の業物よりも魔力の伝導率が高く、まるで自分の身体が延長されたかのようです」


彼女は腰の短剣を抜き、その刃を見つめました。


「『短剣』と『アクセル』の組み合わせは、もはや恐怖すら覚える速さです。視界から消える一歩で必殺の間合いに入れる。逆に『大槌』と『マッスル』は、騎士時代には考えられなかった『面』での制圧を可能にしてくれました。甲羅を持つ魔物を、小細工なしに粉砕できるのは心強い」


カタリナはグレイブを傍らに置き、ダイスケに真剣な眼差しを向けます。


「何より、一つの得物に固執せず、索敵を回しながら状況に応じて『持ち替える』。この思考の切り替えが、これほどまでに戦いを優位に進めるとは。バレットを封じられたことで、逆に肉体と魔力の連動が、かつてないほど密接になったと感じます」


彼女は慣れた手つきで解体を終え、整然と並んだ肉塊を見て満足げに頷きました。


「ダイスケ殿、貴殿が仰る通り、経験は積み重ねですね。今日一日で、私の『戦いの理』は劇的に変化しました。……さて、精度が上がった証に、今夜は一段と滑らかな『氷のコップ』で、冷たい水でも用意しましょうか?」


カタリナは少し誇らしげに、指先に集中を高め始めました。


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