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013

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「んんぅ」


寝心地の悪さに、目が覚めた。

夜は船も止まるらしく、騒音が原因ではない。ベッドも問題ない、十分ふかふかだ。

心当たりは別にある。というよりも、今も不快感を覚えている。

不快感に引き寄せられるように部屋を出て、、壁に手を突いて眠気でおぼつかない足取りで暗い廊下を歩いていく。

不快感の正体は、階段を下りた先にある。

寝室に使っていた三階とは違って、二階は広い広間。

時刻は明け方、人の声は聞こえない。時間に限らず、私を含めて三人しか乗っていない船だ。声が聞こえないのは当然なのかもしれない。

静寂故に誰もいないと思ったそこには、先客がいた。


「あれ?おはよう、ラプラス。随分、早起きだね」


ミカは、昨日見たラフな格好ではなく、無骨なオーバーオールを着込んで座り込んでいた。


「それ」


寝ぼけ眼で、ミカの傍にある奇妙なオブジェを指さした。たくさんの独楽(こま)を球状に組み合わせたような形をしたそれこそが、不快感の原因だ。


「ん?キロスキフィアがどうかしたの?」


「……うん。……壊すね」


「んんん?」


ミカの頭が理解を示すよりも、ラプラスの指先に魔力が収束し、魔法の才能がないミカでも視認できるほど密度となった。


「ちょっ、待って!」


ミカはラプラスとキロスキフィアの間に、その小さい体を割りこませた。その表情に余裕は微塵もない。額に冷や汗をにじませながらも、そこを退くつもりはなかった。


「邪魔、だよ」


「いやいや、訳が分かんないよ」


見た目どおりミカに戦う術はなく魔法を食らえば無事では済まないだろう。

それでも、止めなくてはいけない理由があった。


「理由も分からないなのに、かわいい我が子に手を出させないよ!」


この征界船は、ミカが心血を注いで作り上げたものだ。その征界船の心臓部にあたる動力部を壊すことは、我が子を殺されるに等しかった。


「んー。わかった」


言葉と裏腹に、ラプラスの指先に収束していた魔力は、さらに集まり始める。


「えっ、待って、今わかったって言ったよね!?もしかして、覚悟は分かったから撃つねってことなの?本当に?本当に撃とうとしてる?あばばばば」


魔法が打たれかねない状況を目前にして、決意は一瞬で瓦解した。

目に見えて動揺するミカを、落ち着かせたのはラプラスの背後に立つアルフレッドだ。


「……お前ら、朝から何してんだ?」


「ああああ、アル。助けて、ラプラスが寝ぼけてキロスキフィアを壊そうとしているんだよ」


ラプラスを一瞥すると、アルフレッドは眠気からか、簡潔に理由を尋ねた。


「なんで?」


「だって、魔力吸われてて、気分悪いから」


「確か、魔力の補充は乗組員から自動でされるんだっけ?」


「うん。そうだけど、生活に支障出ないように補充する魔力量は調整しているはずなんだよね」


確認するように、ミカと視線を合わせる。


「あっ、もしかしたらだけど、これまでは魔力量が少ないボクやアルからは、ほとんど補填できなかったから、その負債がラプラスに行っているのかも。セーフロックはかけているんだけど、ラプラスが調子悪いっていうなら、調整するよ」


「ラプラスもそれでいいな」


「んーーーー、うん」


「本当に分かってんのか」


来た道を帰ろうとする。


「待て待て、ラプラス。これから朝飯だ。今二度寝したら、朝飯抜きになるぞ」


「んーー」


「ほら、食堂はこっちだ」


睡眠欲と食欲の間で葛藤しているようだったが、アルフレッドに連れられてこの場を後にする。


「あれ?」


自分も厨房に向かおうと、脇に置いていた小道具を取ろうとして気付いた。


「キロスフィアの魔力が満タンになってる」


先程の見解、アルフレッドとミカから集められなかった魔力がラプラスに求められたことは、ラプラスの負担が増大していたことへの見解であり、魔力が満タンになっていることとは結び付かない。

なぜなら、満タンにするのに必要な魔力量は、王宮魔法使い10人分に匹敵するからだ。

アルフレッドとミカから魔力を集められない以上、その膨大な量の魔力を誰が補填したのかはおのずと絞られる。


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