第6話 異世界で知る税金の現実
二人は、市場をぶらぶらと歩いていた。
すると、一軒のパン屋の屋台が目に入った。
「わぁ、美味しそうなパンがたくさん…」
無道は、目を輝かせた。
「あら、お腹がすいたの?」
セレネは、尋ねた。
「はい、なんかちょっとエネルギー切れかも。この世界のパン、食べて元気出したいなー。」
無道は、へへっと笑い、期待を隠さなかった。
「ダメよ。さっきリンゴを買ったばかりでしょ?」
セレネは、釘を刺した。
「えー、セレネ様、ケチー!ちょっとくらい…」
無道は、駄々をこねた。
「ダメなものはダメ。それに、今は勉強の時間でしょ?」
セレネは、無道の頭を軽く叩いた。
「はい…」
無道は、しょんぼりとした。
二人は、パン屋の屋台を後にした。
「それにしても、セレネ様は本当にケチですね。」
無道は、ぶつぶつと文句を言った。
「あら、そうかしら?私は無道のためを思って言ってるのよ。」
セレネは、むっとした表情で言った。
「俺のため?どういうことですか?」
無道は、尋ねた。
「だって、無道はすぐにお金を使ってしまうじゃない。この世界の物価は日本よりも高いんだから、無駄遣いは控えないと。」
セレネは、説明した。
「うっ…それは…」
無道は、言葉に詰まった。
「それに、無道はまだこの世界のことをよく知らないでしょ?お金の使い方を間違えると、大変なことになるわよ。」
セレネは、そう言って無道を諭した。
「…すみません。セレネ様の言う通りです。」
無道は、素直に謝った。
「分かればよろしい。ほら、そろそろ宿に戻りましょう。」
セレネは、そう言って歩き出した。
「はい…」
無道は、セレネの後ろをしょんぼりとついて行った。
宿に戻る途中、無道はふと疑問に思ったことをセレネに尋ねた。
「そういえば、セレネ様。さっきのパン屋のパン、結構いい値段しましたよね?あれって、税金とかも含まれてるんですか?」
無道は、確認するように訪ねた。
「あら、良いところに気が付いたわね。もちろん、含まれているわ。」
セレネは、少し感心したように言った。
「やっぱり。でも、なんか高いなぁって思ったんですよね。この国の消費税って、何パーセントなんですか?」
無道は、尋ねた。
「この国の消費税は、40%よ。」
セレネは、答えた。
「40%!?マジですか!?高すぎじゃないですか!?」
無道は、驚愕した。
「ええ、高いわね。でも、この国は色々な事情があって、消費税を高くせざるを得ないの。」
セレネは、少し困ったように言った。
「色々な事情…ですか?」
無道は、尋ねた。
「…それは、また別の機会に話すわ。とにかく、この国の税金は、国民にとって大きな負担になっているの。」
セレネは、静かに言った。
無道は生前、今まで自分が漠然と払っていた税金は何だったのか…何も知らずに滞納をしていた自分は何だったのかを、少しずつ考えるようになっていた。
「そういえば、セレネ様。俺がいた国では消費税は20%だったんですけど、それでも高いと思ってたんです。40%なんて想像もできませんよ。」
無道は、自分のいた世界との違いに驚きを隠せなかった。
「そうなのね。この国は、本当に税金が高いの。だから、国民はみんな苦労しているわ。」
セレネは、少し悲しそうな表情で言った。
無道は、ふと疑問に思ったことを尋ねた
「セレネ様。この国には政治家はいるんですよね?みんな必死に税金を納めているのに、どうしてこの国は良くならないんですかね?」
無道は、疑問を投げかけた。
「そうね…それは、色々な理由があるの。税金が正しく使われていないのかもしれないし、他の問題も絡んでいるのかもしれないわ。」
セレネは、少し困ったように言った。
「税金が正しく使われていない…?どういうことですか?」
無道は、尋ねた。
「例えば、政治家たちが税金を無駄遣いしているの。必要のない豪華な建物を作ったり、自分たちの私腹を肥やすために使ったり…」
セレネは、少し怒りを滲ませながら言った。
「えっ、そんなことが…!?」
無道は、驚愕した。
「ええ。残念ながら、この国ではよくあることなの。だから、国民は必死に税金を納めても、生活は良くならないのよ。」
セレネは、悲しそうな表情で言った。
「そんな…ひどすぎる…。」
無道は、憤りを隠せなかった。
「でも、税金の問題は、この国を良くするために、私たちが解決しなければならない重要な問題の一つよ。」
セレネは、そう言って話を締めくくった。
「…はい。わかりました。」
無道は、少し考え込むように頷いた。
政治家…官僚。無道は以前聞いたことがある言葉を思い出していた。生前は政治に興味を持たなかった無道だが、異世界に来てからは確かに興味を持ち始めていた。
「セレネ様。政治家と官僚って、どう違うんですか?」
無道は、ふと疑問に思ったことを尋ねた。
「あら、良いところに気が付いたわね。」
セレネは、少し感心したように言った。
「政治家は、国民の代表として、国の政策を決めたり、法律を作ったりする人たちのことよ。選挙で選ばれてなることがほとんどね。一方、官僚は、専門的な知識や経験を持つ公務員で、政治家が作った政策や法律を実行する役割を担っているの。試験に合格したり、長年の経験を積んだりすることで、官僚になることが多いわ。」
セレネは、一つずつ丁寧に説明した。
「なるほど…なんとなくわかりました。でも、官僚も税金を無駄遣いしたりするんですか?」
無道は、尋ねた。
「ええ、残念ながら、そういう官僚もいるわ。政治家と癒着して、税金を不正に流用したり、必要のない事業を強引に進めたり…」
セレネは、少し困ったように言った。
「そんな…!税金って、本当に色々な問題があるんですね…。」
無道は、うんざりしたように言った。
「そうね。でも、税金は国民の生活を支える大切なものだから、私たちはその問題をきちんと理解し、解決していく必要があるわ。」
セレネは、真剣な表情で言った。
「…はい。勉強になりました。」
無道は、セレネに感謝した。
二人は、そのまま宿へと戻った。