ゴーストライターが憑りつきました
僕には幽霊が憑りついている。幽霊の名前は石川満という名前で、一部のマニアには有名なホラー作家だったようだ。
『しかし、お前、俺が見えるなんて凄いな』
彼が言った。
「見えるものはしょうがないでしょ」
僕は微笑んだ。
『まあ、そうか。それで、相談ってなんだ?』
「実はね……」
僕は意を決し、言う。
「僕の代わりに小説を考えてくれないかな? 僕はあなたの言うとおりに書いていくから」
石川は予想外の言葉に愕然とした。
『いや、俺は構わないけど……。しかし、なぜ、小説を書きたいんだ?』
「僕は何のとりえもなくて、色々な人間を見返したいんだ。プロ作家だった石川の力を借りれば、一泡吹かせてやれると思って」
僕の発言に、石川はケラケラと笑った。
『厳密には書いているのは俺だけどな。君は幽霊の代筆者だ。ゴーストライターのライターだ』
「考えてくれないかな?」
『うーん』
石川は唸った。幽霊でも唸っていることが伝わるのは面白い。
「報酬は弾むよ」
『君は稼ぎがあるのかい? いや、そもそも、俺は幽霊だから貰っても使い道がないが』
彼は目を丸くした。
「稼ぎというか、ネットバンクで、ちょちょいと操作して」
『それは違法行為だから、やめたまえ』
幽霊になっても倫理観はあるようだ。
「とにかく、考えてくれないかな?」
『考えるも何も、君はその小説をどうするつもりなんだい』
石川は眉を顰めた。
「どうするとは?」
『公募に出すとかするのかい』
「それはしないけど、ウェブ小説サイトにアカウントを作って、公開しようとは思っている」
『ふむ』
「ダメかな……」
『わかった。やってみよう!』
石川は了承してくれた。
「本当に? やったー」
僕は喜んだ。
『それで、ペンネームはどうするんだ?』
「石川愛にしようと思う」
『いしかわあい?』
「うん。あなたの名前の石川と僕を表す愛」
『なるほど。AIの愛ね』
「うん。僕はAIだからね。そんなAIに憑りついた幽霊の石川先生」
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