諸行無常
幼い頃から自分の事が嫌いだった。
力も無く、自分の意志もなく、ただ言われるがままに生きてきた。
そんな自分を変えようともしない自分自身が大嫌いだった。
このまま平凡以下のつまらない大人になり、惨めな生活を送っていくのだろうと
常々考えていた。
しかし、「諸行無常」という言葉を知ってから、私の考え方は変わった。
万物は常に変わっていて、常に同じと言うことは無い。
それは私の惨めな生き方や、ひねくれた考え方にも当てはまる。
私は人よりも努力した。人が嫌がることを率先してやり
誰よりも徳をもって人と接してきた。
気が付けば幼少時代とは打って変わり、私は遥か高みにいた。
周りに合わせていただけの地獄のような日々。
自分の意見などあってないような日々。
それらとは正反対の位置にいた。
金もあり、人もあり、権力もあり。
私は自由になり、幼少期に考えていた惨めな生活を送るようなことはなかった。
しかし、それらも長くは続かなかった。
人より多くを手にした私は、自身に驕り周りへの配慮が出来なくなっていた。
「盛者必衰の理をあらはす」
その言葉がよぎったころには、私は風の前の塵に同じであった。