093 ブランデル 対 オンブラ、ダンゾウ、以蔵 3
「ブランデルの豪拳の力をワタクシの左手が戴きます。その力を胴を通過して右手に運ぶ。右手に集まった相手の力を相手に返す。この動作をコントロールするのが腰なのでございます」
オンブラは腰を左右にクイクイしている。
ブランデルは初めて受ける痛みだった。
内臓を直で攻撃される!
皮膚を斬られる痛みとは全く別物!
内臓を掴まれる感触、何より気力を大幅に奪われる!
涎が出て止まらない!
身体に重い岩がのしかかったようにどこにも力が入らない!
息も吸えない!吐けない!
だが、背中を向けるわけにはいかない!
ほとんど奪われた気力を練り上げる!
「ぬぬぬおおおおお!」
ブランデルが豪脚をローで放つ!
オンブラは長い腕で迎えにいく!
寸前!ローからハイキックに切り換えた!
ナイマン蹴り!
オンブラは左側頭部にうけ、身体を横に一回転させた!
乱暴に扱われた人形のように、オンブラは頭から床に叩きつけられた!
ダメージは全員深い!
ダンゾウが叫ぶ!
「いったん、ブランデルから離れて回復だ!奴も回復するが仕方ねえ!生き抜くんだ!」
「そうするしかないぜよ!わしもまだ動けん」
「承知いたしました。」
ひとまず、休戦状態になったこの階層。
先に立ち上がるのは!?
一方、十兵衛一行はさらに上の階に到達していた。
上に続く階段付近に人間の男がいる!
怪我をしているらしい。
ジュリーが、いい男なので近づく。
「あらやだ!怪我してるじゃなあい。アタシに任せて!ライカ!」
と、ライカに回復魔法をするように言った。
「何が、アタシに任せて!よ!」ライカが魔法をかけようとした時、
「待てライカ!こやつ何者じゃ」と雷狐が訝る。
普通のダンジョンではない、カオスダンジョンの中だ。
帝国兵でも王国兵でもない冒険者風の男、このような者がいるはずがない!
「ジュリー、ライカ!離れよ!雷電!」
雷狐が雷を放つ!
男は直撃を受けるがダメージがない!
また効かぬ敵か、と大狐に変化する!
男は胸を反らすと衣服が破れ、獣のような毛で覆われた胸板を見せる!
顔も狼のようになり、太い腕を現した!
狼男。
満月に変身すると思われ勝ちだが、民間伝承によると、月に関係なく変身して人を襲うという。
また銀の銃弾でしか死なないというのも、月と同じく映画の設定である。




