062 約束して
デュランは人材だけではなく、外交で他国を懐柔、属国とするよう動いていた。
キマイラに跨がり、マルワン国の隣国ワイズマ国、ヴィクステリア国、コゼット国、ハウトゥス国、ネグトン国を落としていった。従わねばマルワン国のように国ごと殲滅する、と。
抵抗する者もいたが、デュランの敵ではなかった。
また、裏切らないように各王の后、世継ぎ候補の王子王女を人質とした。
この乱暴な征服を可能にしたのが、タンタラ帝国を単身で制圧した不死身ぶり、マルワン国を皆殺しにした残虐性である。
単身で国を粉砕できる力。
これは強力な脅しになった。
ザロス王国の十兵衛。この男を倒せば属国を併合し、帝国が正式に支配することになる。
これらの国を元に戻すため、ザロス王国からマルス王子を筆頭にテレス王子、十兵衛、以蔵、ジュリー、雷狐、土蛇、ケイドルフ、ライカ。そして騎士団とは別の軍隊十万で帝国討伐に赴くことになった。
マルスが全軍の前に立つ!
「悪帝ブランデルの支配が拡充している!我々は各国を解放し、帝国に辿り着いた暁にはブランデルを倒す!まずは南下してネグトン国へ向かう!」
喚声があがる!
タンタラ帝国まて六か国、一度ネグトン国で南下した後はひたすら西へ向かう。
この前日、屋敷でこの話が行われた。
サエがどう反応するか心配だったが、「うん。わたしは大丈夫だよ。十兵衛たちが戦うことが多くて大変そうだもの。でもね、みんな一緒に帰ってきてね。約束して」と言った。
「承知したでござる。アステル、クレイア。サエをよろしく頼む」
「それとこれを」と、旅立つ七人に御守りを渡した。屋敷に住むことになった彼ら冒険者達はこういった事がなくても戦う人生だ。
出来るなら危険な人生だが、一生を全うして欲しい。せめて、転生してきた十兵衛と以蔵には前の世界より長生きして欲しい。
「サエちゃん、なんていい子なのぉん」ジュリーが抱きしめようとしたが、するりとクレイアの後ろへ避難した。
各々サエの思いを汲み取り、翌日の旅立ちに備えるのだった。




