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005 十兵衛流 蒲焼き商売

 あれから十日が経ち、十兵衛は屋台を作り、蒲焼きの下ごしらえをし、さらにもう一品を用意して朝から町へ出発した。

 

 ザロス王国。北にはその城があり王族、貴族が住んでいる。国の五分の一ほどになる。その種族がヒュームのため、半数近くがヒュームだ。

 周りは城壁で囲まれ、それ以外の地域に多数の種族が共存しながら暮らしている。ほとんどが平民だが、中には下級貴族も住んでいる。

 この国の周りには初心者向けからベテラン向けのダンジョンもあるので冒険者が多い。

 今日も多くの人々が城門を通る。ザロスは比較的治安が良く、住民は平和に暮らしている。地域の巡回を常時行い、城門も内部の人間は簡単に出入りできるが、外部からの出入りはかなり慎重に行われているためだ。それでも有事に備えて別動隊がいるという徹底ぶり。但し、当然だがリヤカーなど荷物検査は内部外部関係なく入念に行われる。

 「やあ、あんた確か十兵衛さん。久しぶりだねぇ」

 城門の衛兵にそう言われた。十兵衛は嬉しそうに、「さすが衛兵殿じゃ。拙者のことを覚えてくれたか」

 「そりゃあ、あんたは特徴的だからね。そんなボサッとした髷をした者はいないし、眼帯だってなかなかいないよ。そもそもお侍はあんたぐらいさ」

 衛兵は笑いながら十兵衛が曳いているリヤカーを親指で差し、「ちょいと中を見させてもらうよ。お役目なんでね」

 「ああ、どうぞ。ちなみに並べた木材は組み立てて屋台になる。下に入れているものは商品のウナギだ」

 「うえぇ、ウナギかあ。こんなの食わすのかい?この黄色い物も食べ物ってかい?」

 十兵衛はニタリとして、一つ渡して食べてもらった。

 衛兵はまず匂いを嗅いだ。毒ではなさそうだ。しかし、この黄色い小さい食べ物は見たことがない。衛兵は恐る恐る口に入れた。

 「う、うまい……うまいぞこれ!」

 「拙者の師匠考案のたくあんだ」

 コリコリした食感、食べるほどに溢れてくる旨味!塩が上質なのだろう、甘じょっぱい塩梅に仕上がっている。「酒が欲しくなるなあ。もう一枚くれないか?」

 「これ以上食べるとホントに酒が欲しくなるぞ?まだ勤務中であろう。まあまたあげるでござるよ」

 と、城門を通過させてもらった。

 


 町の中に入ると、誰も通らない脇道で特徴的な髷をほどいた。眼帯を包帯に変え、陣羽織をマントに変えた。人相も少しいじり変装した。少なくともパッと見、十兵衛には見えなくなった。

 そのあと屋台を組み立て、街中を散策。

 ピンときたところで、幟を立てる。

 【限定10食!】

 【土用は丑の日】

 【天下の蒲焼き 金貨1枚!】

 屋台からは蒲焼きのとてつもなく美味しそうな匂いが辺りにたちこめる。

 野次馬が屋台を囲い始めた。だが、食事に金貨1枚は高すぎる。食べてみたいが、値段のせいで皆踏み込めないでいた。

 十兵衛は、「どうだい、旨そうな匂いでござろう?今まで誰も食べたことがないという幻の食べ物でござる!今日は10人前しか出さない!人の出会いは一期一会!さあさあ、この機会を逃すでござるか!」と煽る。

 観衆の口の中はヨダレで満たされている。と、一人のベテランらしい冒険者が「一つくれ」と言ってきた。





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