041 ザロス城会談再び
時はザロス城会談に戻る。
「そう言えば、先日貴国の預言書に、魔王を倒すことを仰っていましたかな」とザロス王が言った。
オンブラがそれに答える。「三匹の聖獣が魔王を倒す、と。一匹はシャンティ様の雪鳥でございます。十兵衛様も聖獣をお持ちとか」
「雷狐という狐がいるでござる。戦うところは見たことが無いので強さは正直わからぬが。残りの一匹はどこにいるでござる」
「わかりません。大陸中探したわけではありませんが、噂も文献も手掛かりがないのです」オンブラが話した。
「ならば、聖獣に聞いてみるでござるか。雷狐、表に出よ」
十兵衛に呼ばれ、雷狐が姿を現した。
シャンティも杖から雪鳥を出した。
「雷狐、そなたらの他に聖獣を知らぬか?」
「ん?知らぬぞ?というか、我とその鳥と会うのも初めてじゃぞ」と、雷狐が答えた。
「なんだと?」十兵衛は頭を掻いた。
「雪や、そなたはどうでありんす?」
「私も会ったことはないんですが、土蛇かもしれません。夢に出てきたことがあるのです」と雪鳥が言うと、それならそうかもしれないとシャンティは納得した。
シャンティによると、聖獣が夢を見ると実現すると言われているそうだ。
「しかし、不死身の敵をどうやって倒すのじゃろうか」とザロス王が懸念する。
オンブラは、「それでも倒さなければなりません。動かなければただ呑み込まれるだけです」と言うと、十兵衛は「……不死身。何故そのような化け物が現れたのでござろう」と尋ねる。
「確かに。じゃが、わらわの魔法で倒してくれようぞ」シャンティの魔法は初級魔法のみらしい。だが、魔力が桁違いにあるため初級でも上級超級の威力があるという。
果たして強い魔法で勝てるのか。
土蛇の存在は。
十兵衛には何か策があるのだろうか。
自信家のシャンティ、慎重なオンブラ、無口なファンゼルらと違い、十兵衛だけは右目を爛々とギラつかせていた。
勝てる見込みというわけではない。十兵衛の場合、自分の全力をぶつけられそうな相手にワクワクし、勝つか負けるかわからぬ勝負に心踊らせているのだった。
「皇帝の情報がもう少し欲しいところでござるが、試してみたいこともある。早う会ってみたいものでござる」
と、密かに十兵衛は思うのであった。




