004 最強のGランク
十兵衛は意に介さず答える。
「拙者はランクなぞなんでもいい。初心者らしくGランクということで。その代わり、他の冒険者が任務失敗、またはギルドでお手上げな問題があれば首を突っ込むというのはいかがでござろう」
マスターは、なるほどと何度か頷いて、「Gランクの依頼では報酬も少ないが、上の誰かが失敗した任務なら報酬も増えるというわけですな」
続けて、「但し、その時は内密にこなしていただかなければなりませんね。誰もが自分より上の依頼を受けられると思われても困りますし」
十兵衛は無精髭を撫でながら、「じゃあそういうことで」ニタリと微笑んだ。
クライアンは部屋を出ようとする十兵衛に、「では、受付には話を通しておきますので受付に寄ってください」と、言ってまたため息をついた。
最強のGランク冒険者……。こんなこと聞いたことがない。
どうなることやら。いや、考えない。そうだ。考えないようにしちゃお。だって、あんなの普通いないし、私はな~んにも悪くないしぃ。
と、ギルドマスターは開き直ってしまった。
下の受付で十兵衛はGランクの冒険者証を受けとると、また別の部屋へ通された。
一面クリスタルで覆われた部屋の真ん中に魔鉱石で造られた鮮やかなテーブルがある。テーブルの窪みに冒険者証をはめ込む。
受付孃は、「ジョブを決めていただきます。十兵衛さんがなれるのは、え~と、剣士、戦士、侍、えっ!け、剣豪?!えっ!えっ!け、剣聖ですって~~~~?!」
十兵衛はニタリとして、「ギルドマスターからこのことは内密にとのことでござる。また、他の冒険者が任務失敗、ギルドでお手上げの案件があったら拙者に教えてくだされ」
「わ、わ、わ、わかりました」
「それまで拙者は蒲焼き屋をやっているので、よろしくでござる」
「蒲焼き?屋?はあ?」
十兵衛はニヤニヤしながら部屋を出てアステルと合流。商業ギルドへと向かった。
商業ギルドで登録を済ますと、今度はアステルが知り合いの店に行こう、と、ある防具専門店に入った。
「ここはオレが卸している防具屋だ。オレは騎士が着るような鎧は作れるが、侍装備はここがいいと思う」
十兵衛は、着物、陣羽織風の羽織、鎖帷子、袴をアステルに買ってもらった。合わせてみると以前着ていた衣装に限りなく近くなった。
「これは感謝いたす。やっと拙者らしくなれた」
「ああ、よく似合っている」と、アステルもご満悦であった。