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039 ブランデル暗殺

 武官文官達は残るか去るかで議論となった。

 目の前で皇帝と屈強な親衛隊を怪力で倒したブランデル。こんな無茶苦茶な男の下でやっていけるのだろうか。

 かといって、あの不死身ぶりを見せつけられ、大陸の誰が彼を倒せるのか。

 他国に逃げても、併呑までの時間稼ぎに過ぎないのでは、と意外と去る者は少なかった。

 

 元々、大陸で一番多くの戦力を持つ帝国である。このままブランデルとともに大陸統一を果たすのがいいという意見が大多数となった。

 

 だが、皇帝並びに親衛隊など、兵士達を弔うこともせず、近くの森に雑に棄てたという。

 ブランデルに対する反感が日に日に募る。

 

 ある日一人の男が立ち上がった。文官のその男は大人しいが悪を許せない性格だった。

 名はジルス。殺された前皇帝の就任前から城にいる重鎮である。

 

 ジルスは皇帝ブランデルに珍しい酒が手に入ったので献上したいと、ブランデルの前に出た。

 帝国に伝わる美麗な器に酒を注ぐ。

 ブランデルがその器を手に取り、酒を一息に飲み干した。

 ジルスは笑いだした。「悪帝ブランデルよ!今呑んだ酒には毒が入っていた!いくら不死身の身体でも毒を盛られては生きられまい!貴様の数々の暴虐の報いだ!貴様が手を掛けた者達に、あの世で謝罪せよ!」

 10秒経ち、一分経った。ブランデルが苦しむ様子はない。

 ジルスは額に冷や汗を感じた。

 「何故だ!何故平気でいられる!」

 ブランデルは二杯目を注ぎながら「余には毒も効かぬ。味覚もないがな。あらゆる攻撃も皮膚を通さぬ。フハハハハハ!ジルス、残念であったな。この者を捕えよ」

 ジルスは懐から小瓶を取り出した!

 「それには及ばぬ!計画を思いついた時から死ぬつもりだ!私は貴様を殺せなかったが、誰かが貴様を討つ!悪は蔓延ってはならぬのだ!」

 と、小瓶の毒を呷り、ジルスは死んでしまった。

 

 内心、ジルスの行いを讃える者が多くいたが、結果的に、より不死身ぶりを見せつけられた。

 

 誰も彼を倒すことはできないのだ。


 彼を倒すことはできないのだ。


 倒すことはできないのだ。


 その場にいたもの全ての脳裏に刻み込まれた。





 

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